2014年1月12日日曜日

きれいな男15話あらすじ&日本語訳vol.1

チャン・グンソク、IU、イ・ジャンウ、ハン・チェヨン出演「綺麗な男」15話です。




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ユラのカフェを出たダビデは茫然自失で街を彷徨っていた。
どうにも足が進まなくなり、立ち止まって天を仰ぐ。



「トッコ・マテばかり見つめているキム・ボトンが…トッコ・マテの暗号だから」

ボトンは暗号そのものだった…?!
ユラの言葉にダビデは打ちのめされていた。

ボトンはいつだってひたすら無心にマテを見つめていたのだ。

~~

ボトン「靴下全部売らなきゃ。そうしないとオッパは笑えないんです」
ダビデ「実のお兄さん?」
ボトン「ううん、私が好きなオッパ♥」

ダビデ「トッコ社長のどこがそんなに好きなんです?」
ボトン「カルビが大好きなベジタリアンのオッパがうちの街に引っ越してきたあの日から…私はただ、お母さんとか弟みたいに、マテオッパのことがただ…好きなんです^^」

~~

+-+-+-+

「だいぶ剥けたな」裸足の足首に手を添えると、マテは靴ずれで赤くなったボトンの足を覗きこんだ。

スケート場を出た二人がやって来たのは、マテのマンションだ。

マテ「ヒリヒリするだろ」
ボトン「大丈夫です。(薬に手を伸ばし)ください。自分でやりますから」

マテはボトンが取ろうとした薬をつまみ上げた。

マテ「いいから。じっとしてろ」

消毒液の蓋をとると、彼女の傷口に塗ってやる。

マテ「あれ、持ってるか?」
ボトン「何?」
マテ「お前がこの間、俺の足の小指に塗ったやつ」
ボトン「…?」

不思議そうに見つめていると、マテが顔を上げた。

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ボトンの足の爪は、小指だけでなく全て赤く染まっていた。
マテが黙々と塗るのを眺めていたボトンが尋ねる。



ボトン「オッパ、仕返ししてるんですか?オッパの小指の爪にイタズラしたから?」

「これは俺のだぞ」マテは彼女の足から顔を上げずにそう言った。

ボトン「え?」
マテ「…。」

マテは彼女の反応に知らん顔をして塗り続ける。
彼の横顔と足を見比べると、ボトンは幸せそうに笑い、顔を手で覆った。

マテ「…嬉しそうだな」
ボトン「私、これから足の指キレイに洗わなきゃな♪」

すっかり”オッパ色”に染まった足の爪を満足気になぞるボトンの横顔に、マテも笑った。

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部屋に戻ってくると、ダビデは涙で真っ赤になった目で壁に飾ったボトンの写真を見つめた。

ダビデ「聞かなかったことにするよ、ボトンさん。僕だって…人生で一度くらい欲を出したっていいじゃないか」



彼はボトンの写真にくるりと背を向けると、携帯電話を取り出した。
電話がつながると、彼は努めて明るく声をだす。

ダビデ「お、お母さん。ご飯食べさせてください」

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「わぁ、ホントに美味しそうだな」

食事を椀によそうダビデの向かいにボトンの母弟が並んでいた。

ボトン母「こんな時間までご飯食べないでどうするの。この寒い日に」
ダビデ「晩ご飯は食べたんですけどね、お母さんの料理食べないと眠れませんから」
母「いやだ、全く♥」

「俺は母さんの料理たいしたことないと思うけどな」淡々とフルーツを剥きながら弟テシクが呟いた。

ダビデ「ところで、ボトンさん遅いですね」
母「ん?さぁ、友だちにでも会ってるのかね」
弟「姉ちゃんの友だちなんかどこにいるんだよ。マテ兄が現れてから友だちも家族も…○&※▼」

ボトンの母が息子の口にフルーツを押し込む。
ダビデが俯いたのをボトンの母がチラリと横目でうかがった。

+-+-+-+

ボトンの家を出たダビデが駐車場にやってくると、そこへちょうどマテの車が滑りこんで来て止まった。

ダビデ「!」

助手席からボトンが降りてくると、車の前でマテが彼女に優しく声を掛ける。

マテ「疲れてないか?」
ボトン「ちっとも♪」

ダビデが見守る目の前で、二人が笑い合う。
マテが彼女の背中に手を添えると、二人はマンションへと消えて行った。

ダビデ「…。」

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ダビデと入れ替わりにやってきたマテを、ボトンの母と弟は歓迎した。
娘を押しのけ、マテのそばに座る母と弟を、マテは愉しげに眺める。

母「あんた、ちゃんと食べてんのかい?そんな蒼白い顔して」
マテ「ちゃんと食べてるんだけど。寝不足だからかな」
母「ふーん。水炊きしたのが残ってるから食べて行きなさい」
ボトン「水炊きしたの?」
母「うん。チェチーム長が夕飯食べに来てたんだよ」
ボトン「…。」

ボトンが思わずマテを見る。
彼は穏やかな表情のまま、ボトンを見つめていた。

母「たくさん作っといて良かったよ」
ボトン「あぁ、チェチーム長が夕飯食べに来てたんだ…」
弟「なぁ、ダビド兄は腹減ったから来たと思うか?お前に会いに来たんだろ」
母「(バシッ!)」

マテが叩かれたテシクに微笑む。
不安になったボトンがマテを見ると、彼はボトンにニッコリと笑いかけた。

マテ「(テシクに)彼女は出来たのか?」
弟「ずっと店にいるのに出会う機会なんか。俺だって辛いよ」
マテ「お客さんに声掛けろよ」
弟「おばちゃんばかりなんだって」

何ということもない平和な会話。
その中で、ボトンは一人顔を曇らせ、唇を噛んだ。



+-+-+-+

車を走らせているとダビデの携帯が鳴った。

ダビデ(電話)「ボトンさん!」
ボトン(電話)「家に来ていらっしゃったって…」
ダビデ「あはは。厚かましいけどご飯ご馳走になったんです」

電話の向こうから溜息が漏れる。

ボトン「厚かましいだなんて」
ダビデ「明日、SSに行くから迎えに寄りますよ」
ボトン「いえいえ、直接行きますから」
ダビデ「もぅ、どうせ通り道なんです。明日は寒いから」

ボトンからの電話に、帰り道のダビデの表情は和らいだ。

+-+-+-+

「キム・ボトン!起きなさい!」母の声に、ボトンはそろりそろりと部屋から出てきた。

母「どうしたの?その歩き方」
ボトン「ちょっとスケートしたら筋肉痛になっちゃった」
母「あらまぁ。あんた、忙しいってのは全部嘘?スケートする時間なんかどこにあるんだい?!」

ボトンは唸りながらダイニングチェアに腰を下ろした。

ボトン「遊びに行ったんじゃなくてですねぇ、まぁ一種のヒーリング?ヒーリングしに行ったんだ♪」
母「全く、ヒーリングだか何だか…」

母の目が、赤く塗られたボトンの足の爪にとまった。

母「ちょっと、あんた10本とも真っ赤に塗っちゃってダサいったら!何なのさ、それ!」

「てへへっ」ボトンは10本の足の爪を眺めてニヤける。

ボトン「お母さん、これが足の指に見える?」
母「?」
ボトン「これはね、一種の愛の証し。違う、耐え忍んだ時間へのご褒美かな。あははははっ」
母「朝から何ワケわかんないこと言ってんだい!さっさとシャワーして来なさい」

母がキッチンへ戻る。

ボトン「ふふっ♪んじゃ、足の指から洗ってあげなきゃね~♥」

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スタジオでは本当にSSの顔、トッコ・マテをモデルに撮影が始まっていた。
カメラの前に立つマテを、ボトンは思う存分堪能する。

カメラマン「いやぁ、社長がモデルしに来るっていうから心配したけど、プロ顔負けだな。いいですね!もっと撮りましょう」

カメラマンの言葉にボトンも深く頷く。

マテはオレンジのウェアに着替え、登山中という設定だ。

カメラマン「頂上が見えるぞー!」
マテ「(上を見上げる)」

ポーズを取りながらふいにボトンの姿に気づくと、彼女だけにウィンクを送る。
ボトンは熱狂した。

+-+-+-+

撮影された写真はすぐさま広告となり、韓国中を駆け巡った。
同時にSSホームショッピングでもFERRINOのウェアの販売が始まる。

マテとボトンは二人仲良く放送を見守った。

MC1「あら、完売ですか?もう完売となりました。放送時間が10分も残っていますが、もう完売ですね」



テレビの前でマテがガッツポーズをとる。

MC2「この時点までに予約受付を完了したお客様が販売対象となりますことをご了承ください」

「完売!さすがトッコ・マテ♥」ボトンはマテの腕に寄り添って笑った。

続く商品もあっという間に完売を迎え、SSホームショッピングはMGを抜き、1位に躍り上がった。

+-+-+-+

記者が録音ボタンを押し、インタビュー取材が始まった。

記者「差別化への転換で顧客の心を掴んだという評価をよく聞きます。不景気の中、”ブランドが来る”という読みが成功したようですね」
マテ「少しずつ厳しくなる物価上昇にストレスを感じている消費者の心をうまく読んだんだと思います」
記者「(頷く)」
マテ「百貨店でブランド品を買うとき、”12回分割にしてください”とは言い難いでしょう?地方に住みながら電話のボタン一つで簡単に済むシステムで、消費者たちも気が楽になったんだと思います」
記者「それから、お祝い申し上げます。SSの株価が連日高騰していますね。他に準備している戦略は?」
マテ「まだ国内で知られていない海外ブランドの参加に期待してください。それから、国内の有名デザイナーについても進めているところです」

インタビュー内容はすぐ”BUSINESS KOREA”誌の記事になり、マテが表紙を飾った。

+-+-+-+

カフェのカウンターで接客をしているユラの前に、一人の男性が立った。
キソクだ。

伝票から顔を上げ、彼の姿に驚いたユラに、キソクは温かく微笑みかける。

ユラ「お義父様!」

テーブル席でコーヒーを一口飲むと、キソクは店内を見渡した。

キソク「いい雰囲気だね」
ユラ「ありがとうございます、お義父様」
キソク「私は何も。どうだ、商売は上手く行っているのかい?」
ユラ「(笑)売上で一位になったんです」
キソク「君は何でもうまくやると思っていたよ。賢い子だからね」



ユラがはにかんだように目を伏せた。

キソク「ムンスが初めて君を連れて来た時、天使が歩いてやってきたかと思ったよ」
ユラ「身に余ります…」

「ユラ」キソクが心配そうに呼びかける。

キソク「変わるんじゃない。君は善良で美しい女性なんだ」
ユラ「…。」
キソク「ムンスを信じて、もう休みなさい」
ユラ「…。あの、お義父様」
キソク「?」
ユラ「お訊きしてみたかったんです。チェ・ジュナさんもそうだし、マテのことも、どうして今になって引っ張りだされたのか…。ずっと心におさめていらっしゃったのに」
キソク「生きてみるとね、時間は多くはない。引き止めたいと思っても、時間は待ってくれないんだ」
ユラ「…。」
キソク「ユラ、人を愛して生きよう。それでも時間は足りないくらいなんだ」
ユラ「…。」



微かに微笑んだユラに、キソクもまた微笑みかけた。

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社長室をボトンがノックした。

ボトン「社長、お客様ですよ」
マテ「?」

やってきたのはヨミムだ。
意外な客に、マテが顔を上げた。

ヨミム「あの日、運転してたら事故起こしてましたよ。私のお陰でご無事だったんです。ありがたいでしょ?」
マテ「えぇ。あの日は余裕がなくて、まともにお礼もできなかったし、連絡先も聞かずじまいでしたね」
ヨミム「全部知ってるわ。トッコ・マテ、キム・ミスクの息子」
マテ「?」
ヨミム「パク・キソク会長の息子だと思っていたのに、恐ろしい女、ナ・ホンランの息子だった…」
マテ「…。」
ヨミム「まだ続けます?」
マテ「あなた、誰なんですか?」
ヨミム「情報を売って食べてる人間よ」
マテ「…。」
ヨミム「あなたがナ・ホンランの息子だって情報も高く売るつもりだったのに、残虐なナ・ホンランが自分から言っちゃうとはね」
マテ「…。」

マテは懐から財布を取り出した。

マテ「封筒に入れてお渡しするべきなんだけど、ちょっと暇がなくて…。代理運転料はこれくらいでいいでしょう?」

マテは財布から出した何枚かの札を取り出した。
ヨミムはそれには手を伸ばさず、マテの顔を見ると、ふんと笑った。

ヨミム「私、お金はあなたより持ってるわよ」
マテ「?」
ヨミム「教えに来たんです。ナ・ホンランに対してトッコ・マテがどうすればいいのか」
マテ「…。」
ヨミム「避けなさい」
マテ「?」
ヨミム「あの人が言ったように、遠く離れて生きるの。そうしなきゃ、そばにいる大事な人たちまで傷つくわ」
マテ「あんた、ナ・ホンランが寄越した人間だろ?」
ヨミム「ナ・ホンランはあなたが思っているより遥かに邪悪で、遥かに執拗な人よ。会長の座に上がるために実の兄たちをことごとく踏みつけて、彼らの家族も全員島流しにしたの。つまり、その気になれば人間を消し去ることも厭わない女よ」
マテ「…。」
ヨミム「だからナ・ホンランを刺激しちゃダメ」
マテ「あんたが何様で…何の資格があって、ああしろこうしろと?」



ヨミムはじっとマテを見つめた。

ヨミム「私、強姦に遭って生まれた子なんですって」
マテ「?」
ヨミム「つまり、母親が酷い目に遭って生まれた娘」
マテ「…。」
ヨミム「私を見るのがどんなに辛かったのか、一週間も経たずに養子に出した。それが私の入手した情報よ」
マテ「…。」
ヨミム「私の母親もナ・ホンランも同じ気持ちだったんじゃないかしら。あなたや私を見てると、奥底にひた隠しにしてる地獄のような記憶が蘇りそうな気がしたのかもしれない」
マテ「地獄のような?」
ヨミム「トッコ・マテさん、時には事実が人を傷つけることもあるわ。知れば傷つき、知らなければ薬、そんな時の方が多い」
マテ「…。」
ヨミム「それでも知りたければ、そのときは教えてあげますね。タダでね」
マテ「…。」
ヨミム「ボーナスで一つアドバイスしてあげる。”今夜、企業人の後援パーティーには行かないこと” これに全票投じるわ」

マテは呆れたように視線をそらすが、それでもやはり気に掛かり、じっと考え込んだ。

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ホンランは苛立った様子で雑誌を放り出した。
マテが表紙を飾っているビジネス誌だ。

ホンラン「大したものね」

ノックの音が響き、秘書が入ってくる。

秘書「企業人のイベントに出発される時間です」
ホンラン「えぇ。あぁ、それからボトン会社が交渉しているブランドのリストが必要なんです」
秘書「はい。調べます」
ホンラン「密かに調べてください。それからトッコ・マテの一挙手一投足、全てチェックを」

秘書が退席した。

ホンラン「…。」

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マテがパーティーに同伴したのはボトンだ。

マテ「食いすぎんなよ」
ボトン「ビュッフェもあるんですか?」
マテ「トーゼンだろ」
ボトン「やった!」

向こう側からホンランがエレベータを上がってくる。
彼女は受付に並んでいるマテをすぐに見つけた。
マテも何気なく辺りを見渡し、自分を見ているホンランに気づく。
彼が自分に気づくと、ホンランはまっすぐ彼に近づいた。

マテ「…。」
ホンラン「…。」

ホンランの視線がマテの隣にいるボトンに移った。
不安気にホンランを見つめ返すボトン。

マテ「先に入ってろ。すぐ行くから」
ボトン「はい」

一人になると、マテはホンランに向き直った。

ホンラン「雑誌の表紙写真、なかなか素敵だったわ」
マテ「僕と顔を合わせるのは不愉快でしょうに、こんな場所でお目にかかるとは」
ホンラン「だからこの地でうろつくなと言ったのよ」
マテ「…。」
ホンラン「送ってくれた答え、気に入らないわね」
マテ「僕が生まれたのは僕の過ちじゃないでしょう。一人の子の誕生を祝福するどころか、ただ呪うばかりだったお二人の過ちでは?」
ホンラン「…。」
マテ「この世の誰も他人の人生を侵犯し滅ぼすことは出来ません。少なくとも人間なら」

ホンランを冷たく睨みつけると、マテは会場へと姿を消した。

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ユラは客が帰った後のテーブルを片付けていた。
そこへ、一人の女の子が外から近づいてくると、ガラス窓をコツンと叩く。

ユラ「?」

ユラが顔を上げると、女の子はニッコリ微笑んだ。
スルリだ。

ユラ「!」

スルリの後ろにやって来たムンスが、感激するユラの表情を見守る。
スルリが窓ガラスに小さな掌を広げると、ユラはガラス越しに自分の手を合わせた。
そんな母を見て、スルリは嬉しそうに笑う。

【第8の女 愛を守る女 ホン・ユラ】



3人は久しぶりに食事に来ていた。
メニューを見つめるスルリにムンスが声を掛ける。

ムンス「スルリは何を食べる?」
スルリ「これ。お母さんは?」
ユラ「スルリが選んでくれる?」
スルリ「えーと、それじゃお母さんはこれ!」
ユラ「いいわ^^」

「僕はボンゴレを一つください」ムンスは店員に告げ、「エード?」とユラに飲み物を尋ねた。

ユラ「そうね」
ムンス「(店員に)エードを2杯」

店員が下がると、スルリは何かを指差した。

スルリ「お父さん、私、あれを見て来てもいい?」
ムンス「もちろんだ。遠くへ行っちゃダメだよ」
スルリ「お母さんはここにいて。私、行ってくるね」
ユラ「うん」

スルリが席を立ち、テーブルにはムンスとユラが残された。

ムンス「スルリはどこにも行かないよ。会いたければいつだっておいで」
ユラ「ありがとう。スルリを守ってくれて」
ムンス「ユラ、僕は…」

そう言ってムンスは照れたように下を向いた。

ムンス「もう一度プロポーズするよ」
ユラ「…。」
ムンス「どこまでもカッコ良くね」
ユラ「(微笑)あのときも…、初めてプロポーズしてくれたときも素敵だったわ」
ムンス「受け入れてくれるよね?」
ユラ「あなた」
ムンス「?」
ユラ「私、あの場所に戻るつもりはないんです」
ムンス「なぜだい?」
ユラ「また財閥の嫁になるためにやって来たんじゃありません」
ムンス「…。」
ユラ「スルリさえ安全で幸せならそれでいい。そのためにはあなたが健在でなきゃいけないんです」
ムンス「僕はもう恐れるものなんかない。今まで一度も突っ走ってみたことがないだけなんだ。僕は走り始めた。だから見守ってくれ」
ユラ「…。」
ムンス「君を泣かせるようなこと、これからは絶対にないから」

「お母さん!」笑って手を振る娘に、ユラの顔に笑みが溢れた。



+-+-+-+

「指輪をお探しですか?」ショーケースを見つめるマテに店員が声を掛けた。

マテ「はい」
店員「こちらはカップルリングです」
マテ「プロポーズしたいんです」
店員「そうですねぇ。それならこちらのラインをどうぞ」
マテ「あぁ、このモデルを見せてください」

#うーん、君の自由だけどさ、いきなりプロポーズは視聴者置いて行きすぎだと思うよ。

指輪を選ぶマテの姿に、遠くで何者かがシャッターを切った。

その様子はすぐさまホンランに伝えられる。
宝石店でのマテの写真をめくると、そこにあらわれたのはボトンの写真だった。



ホンランが微かに笑みを浮かべる。

ホンラン「失うものはない…そう言ったかしら?」

+-+-+-+

マテはボトンの母と並んでテレビを眺めていた。
ボトンの母がまだ帰らない娘に溜息を漏らす。

ボトン母「はぁ、あの子、栗を拾いに出かけて、どこかで焼いてんのかね?」
マテ「(時計を覗く)栗食べたいなんて言うんじゃなかったかな。この前旨そうに食べてたから、買ってきてくれって言ったんだけど」
母「あの子が好きじゃないものなんてあるわけないよ」

母はブツブツとぼやく。

母「考えてみたら全く納得いかないね。私が帰りに何か買ってくてくれって頼んだら、もう近くまで帰ってきてるだとか、店が皆閉まってるとか何とか言うくせに、マテ、あんたが買ってこいって言ったらいそいそと…。けしからん娘だよ全く!」
マテ「おばさん。そのけしからん娘、ちゃちゃっと嫁に出しちゃったら?」
母「本人が行く気にならないとね。私の思うようにはいかないよ」
マテ「おばさんはどんな婿がいいんですか?」
母「私?あははっ^^ 私はシンプルだよ。金持ちで男前で浮気しないでしっかり働く男ならいいよ。あたしゃ、欲なんてないだから」

ボトンの母はそう言ってまた笑う。
マテも一緒になって声を上げて笑った。

マテ「シンプルだな^^;」
母「(マテをバシッ!)冗談だってば、この子ったら」
マテ「^^」
母「うちの娘を幸せにしてくれればいいんだ。金持ちとか男前だとかそんなもの」
マテ「…。」
母「ボトンのそばでただ守ってくれて、生涯笑っていられるようにしてくれる人なら大満足だよ」

マテは娘を思う母の横顔を見つめた。

母「あんたのお母さんだってきっと同じ気持ちだよ」
マテ「…。」

ボトンの母はいたわるようにマテの背中をトントンと叩く。

母「我が子を幸せにしてくれる人は、本当に尊いね」
マテ「…。」

「ニュースの時間だけど」ボトンの母がリモコンを探し始めると、マテはキソクの言葉を思い出した。

~~先日。誰もいない定食屋にて

キソク「なぜ暗号が必要なのか、彼女に訊いたことがある。そうしたら、マテ、お前の幸せのために必要なんだと、そう言ったんだ」

~~

#回想シーンと、回想シーン明けのマテが別人みたい

~~別の日。社長室でキソクの写真を見るボトン

マテ「お前、何でこの人のこと知ってるんだ?」
ボトン「この前、おばさんのお供でソウルに来たときに一度会ったんです」
マテ「!」
ボトン「おばさんと二人で延々話してたけど。有名な人なんですか?」

~~

マテ「…。」

マテは立ち上がった。

+-+-+-+

マンションの外へ出てくると、ちょうどそこへボトンが帰ってきた。

ボトン「オッパ!どこ行くんですか?焼き栗買ってきたのに」
マテ「…。」

ボトンは焼き栗の袋を大切にコートの胸のところに入れ、温めている。

ボトン「近くに焼き栗売ってるところがなくてね、バスに乗って市場まで行ってて遅くなったんです」

無邪気に話すボトンをマテは何も言わずにじっと見つめた。

ボトン「しっかり抱いてきたからまだ温かいよ^^ 食べてから帰って。ねっ?」
マテ「…。」



マテはこれまでのボトンとの日々を思い巡らせた。

靴下を売るために借りた店舗を追い出され、「ごめんなさい、オッパ」と道端の靴下を拾い集めたボトン。
やめろと言っても、彼女は一度では聞かなかった。自分が額に怪我をしているのも気づかないで。

MGホームショッピングでお掃除靴下に注文が入らず、ボトンは自ら靴下を手にはめてパフォーマンスするとスタッフに泣きながら直訴した。

ジェッキと結婚すると話したときは、「オッパが幸せならいいんだから」と無理に笑ってみせた。マテに車を買ってあげようとアルバイトをしてお金を貯めている間、自分も幸せだったと。



何も言わず、ただただ自分を見つめるマテに、ボトンは「入りましょ」と微笑みかけた。
先に入ろうとした彼女の腕を黙って掴むと、マテは引き戻したその勢いで強く抱きしめる。

ボトン「!」
マテ「…。」

マテは大切なボトンを胸に抱き、心の中で呟いた。

マテ(心の声)「母さん、暗号は…ボトンだったんだな」


マテが幸せになるために絶対に必要なもの…。
マテは自らの力で母の暗号を解いた。

+-+-+-+

帰りの車の中でマテの携帯にメールが入った。
ユラからだ。

ユラ(メール)「明日カフェに来てくれませんか?ぜひ…来てください」

+-+-+-+

翌日。マテがカフェの入り口へやってくると、引き返す他の客が目に入る。
入り口には”事情により本日は休業します”と案内が掲示されていた。

マテ「?」

不思議に思い扉に手を掛けると、鍵は掛かっていなかった。
中に入ると、スタッフの一人が待っていたように「いらっしゃいませ」と声を掛ける。

マテ「あの…社長さんは?」
店員「いらっしゃったら2階へご案内するようにお聞きしております」

マテは店員に会釈し、2階へ上がる。
階段の途中で、マテはふと壁に貼ってあるカードに気づき、足を止めた。

『マテさん、あなたと私は本当に長い旅路を歩んできました。
初めて会ったあなたの姿が思い浮かぶわ。
あのときは正直、あなたがあまり頼もしいとは思えなかった。
だけど、遺言が入ったファイルを消してしまったトッコ・マテの姿を見て、
もう私が手出しできるような人じゃないと、そう感じました。
あなたは本当に素敵な男性になったわ』



カードを手に取り、数段上がるとまた他のカードが目に入る。

『あなたを利用したこと、私の武器にしようと近づいたこと…
こんなに済まない気持ちになるとは想像もしなかった。
今になってあなたを見ていると、
自分の欲があなたを苦しめたんじゃないかと、
とても申し訳ないし、不憫に思います』

2階に上がると、マテはカウンターの向こうに3枚目のカードを見つけた。

『この競争のゴールはお互い違う場所にあるみたい。
私はただ、娘を守りたかったんです。
それが私の目的であり、私の場所を手に入れることだった。
父親と手をつないで明るく笑っている娘を見て、
私の競争は終わったと感じました。
けれど、まだ走らなきゃならないあなたを思うと、切なくて申し訳ないわ』



『挫折の中にあっても成長していくマテさんを見ていると、
なぜあなたのお母さんが暗号を遺したのか分かりました。
あなたの暗号…見つかりましたか?』

マテはその一文にニッコリと微笑み、次のカードに手を伸ばした。

『マテさん、
私は…悪魔になってもいい。
私は…道化になってもいい。
私は…後ろ指をさされても構わない。

私は…愛する人を守りたかったんです』


最後のカードの隣には、ボトンの写真が貼ってあった。


+-+-+-+

ユラは空港のロビーで飛行機の出発時間を待っていた。
立ち上がると、スーツケースを引き、ゲートへと歩き出す。

そこへ…

「お母さん!」女の子の呼ぶ声が彼女の背中に飛んだ。

ユラ「?」

振り返ったユラは満面の笑みを浮かべた。



彼女の視線の先には、ムンスに付き添われたスルリがいたのだ。
ムンスに背中を押され、駈け出したスルリは大好きな母にしがみついた。

ムンス「マンハッタンに行くんだって?」
ユラ「姉のところに行こうと思って」
ムンス「いつ戻ってくるんだい?」

ユラは静かに首を横に振った。

ユラ「分からないわ。ゆっくり休みたいんです」
ムンス「戻ってくるよね?」
ユラ「…。」

「お母さん、気をつけて行ってきてね」スルリが母を見上げ、無邪気に手を振る。

ムンス「スルリに会いたければいつでも言ってくれ。連れて行くよ」
ユラ「ありがとう」
ムンス「僕に会いたいときも連絡するんだよ。すぐに飛んで行くから」
ユラ「ふふっ^^」


笑い合う二人の表情は晴れ晴れとしていた。

+-+-+-+

誰もいないカフェのテーブル席で、何枚ものカードを前に、マテは一人考えていた。



マテ(心の声)「ホン・ユラ、あなたが手に入れたかった場所は、MGの嫁の座ではなく、娘の笑顔、そして、夫の尊厳…。だから、心残りもなしに潔く去ることができたんだ。あなたの愛を守ったんだから」



カードの一番上にあるボトンの写真を手に取ってみる。
彼は写真を見つめ、自分がめざすべきゴールを胸の中で確かめた。

携帯電話を取り出すと、パク・キソク会長に電話を掛ける。

マテ「暗号、見つけました。もうすぐ連れて行きます」

+-+-+-+

ここで一旦区切ります。

ユラのゴールは、それ自体はとても素敵な話なんだけど、ゴール地点に辿り着いたのが唐突な気がして、ちょっと気持ちが付いて行けませんでした。
ホンランから本当に娘を守ったのか、夫は本当に大丈夫なのか…。
何をもって「あぁ、私はゴールにたどり着いた」と確信したのか、少し説得力に欠ける気がします。
キソクの話に心が動いたのは十分分かりますが…。

でも、【第8の女 愛を守る女 ホン・ユラ】のおなじみの画面が出る流れがちょっと静かで特別な感じがして、ハッとしましたね。これは良かった。

まぁ、ユラのゴール前のゴタゴタに時間を使うより、この終盤に来てマテの心の内にたっぷり時間を割いたのは、逆に評価するべきかもしれません^^

そして、少し原作話を。
原作でマテが暗号を入手した場面は、ドラマに比べれば本当にフツーです。
ダビデがユラの前夫を救う代わりに、暗号を自分に渡すようユラに交渉し、ボトンには、暗号をマテに渡す代わりに、今後マテとは一切会わずに自分の元へ来るようにと条件を出します。

この一連の交渉が成立し、ボトンは愛するオッパのために自分の思いを諦め、マテは暗号を手に入れるんです。

いざキソクの元へ行き、携帯電話の録音を反省すると「暗号はボトン」の声。
「ボトンってなんだ?」と訊く会長に「人の名前です」と答え、「それならその人を連れて来なきゃダメだろ」と言われ、マテは困ってしまうわけです^^;;;

この流れについてはドラマがとても良かっただけに、後から聞くとホントにフツーでしょ(笑





2 件のコメント:

  1. ありがとうございます(*´∀`)

    ユラが 行きなり外国に行くのは
    なにか大きな理由があったのかと思いました、
    ちょっと休みたかっただけなんですね♪
    母の顔になった ユラの優しい笑顔がとても
    印象的で、今翻訳を読んで
    ユラがゴールしたからこその笑顔だったのだなぁと、、、(*^^*)
    できれば最後までマテに絡んで欲しかったんですけど。。。(*^.^*)

    返信削除
  2. 原作の暗号のくだりがとても興味深いです!やはりドラマはドラマの流れで成り立つよう工夫されてるんですね♬原作を合わせて紹介してくださるのでいつも楽しみが倍増します♪( ´▽`)ありがとうございました!

    返信削除

記事を読んでくださってありがとうごございます。
コメントの際はお名前を入れてくださると嬉しいです。