2014年1月3日金曜日

きれいな男13話あらすじ&日本語訳vol.2

綺麗な男13話、後半です。


#稲川○二さんも真っ青な、ホン・ユラ女史の怪談話…。

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「オッパ、家にいたんですか?」慣れた足取りでマテのマンションに入ってきたボトンは、ソファにマテがいるのに驚いた。

マテ「何だ?どうやって入ったんだよ?」
ボトン「ふふっ、いやまぁ、置いていくものがあって」

誤魔化すボトンに「パスワード変えなきゃな」とマテはぼやいた。

「ジャン!」ボトンは持ってきたものを出してみせる。
箱を開けると、そこにはネクタイが入っていた。
深い緑色の地味なものだ。

ボトン「第一印象がめちゃくちゃ大事なんですよ。オッパみたいなスタイル、女の子たちは超好きなんだけど、おじさんたちには嫉妬されるかも。誠心誠意選んだんです。信頼と誠実のカラー^^」
マテ「どこのブランドなんだ?」
ボトン「…。ブランドなんて重要じゃないでしょ~。大事なのはカラー♪」
マテ「(ジロリ)どこで買ったのか訊いてんだ」
ボトン「…商店街で」
マテ「(呆)SSホームショッピング理事会で初めて挨拶するのに、こんな商店街のネクタイ締めて行ってる場合か?!」
ボトン「…。」
マテ「お前、給料全部どこやったんだ?」

「私が使いますから」ボトンがしょんぼりしてネクタイを回収しようとすると、マテはそれを遮った。

マテ「また変な格好で出社するんだろ。いいから」
ボトン「どうせオッパは使いもしないんでしょ?」
マテ「商店街に行くときにでも付けりゃいいだろ」
ボトン「(ムスッ)」

ボトンが「あっ!」と顔を輝かせる。

ボトン「明日、うちのお母さんの誕生日なんです。夕食、一緒に食べましょ♪」
マテ「おばさんにプレゼント買ったか?」
ボトン「はっ!そうだった!お母さんの誕生日プレゼント!」
マテ「なぁ、こんなネクタイ買う時間はあって、おばさんの誕生日プレゼント買う時間はないのか?」

「帰りますね!」ボトンは慌ててマテのマンションを飛び出した。

+-+-+-+

翌日。

マテはボトン推薦「年寄り対策ネクタイ」を締め、ホン秘書を伴ってSSホームショッピング理事会の席に現れた。
マテは中央に立つと、参加者を見渡す。

マテ「はじめまして。SSホームショッピング代表理事に就任したトッコ・マテです」

参加者全体から馬鹿にしたような空気があからさまに漏れる。

A「大学はどちらを?」
B「M&Aはどちらで学んだんです?お若い代表」
C「留学経験は?」
C「専攻は?」
D「企業運営の経験は?」
E「MGホームショッピングとの差別化は?」

立て続けに質問を浴びせると、参加者たちは一様に眉をひそめ、ざわついた。

+-+-+-+

マテはぐったりして会社に戻った。

「あっ!」ボトンがマテの姿を見て嬉しそうに声を上げる。

ボトン「商店街のネクタイだ♪」
マテ「クリーニングに出して、これしかなかったんだ。仕方なく使ったんだからな」
ボトン「(ふーん)」
マテ「チェチーム長は?」
ボトン「百貨店に行きましたよ。空きを探してくるって」
マテ「(頷く)」
ボトン「他の百貨店にもプレゼンしてみるつもりなんです。今回の売り場がダメなら、すぐ他の売り場を探さなきゃいけないから」

「理事会は?上手くやりました?」ボトンがマテの顔をのぞき込んだ。

マテ「当たり前だろ。俺が誰だと思ってんだ?」
ボトン「そりゃそうよ。トッコ・マテだもん♪」

「あっ!」ボトンはふと思い出すと、社長室の棚の上にあった本の山をマテのデスクの上にドンと置いた。

”MGホームショッピングの成功ストーリー””ホームショッピングの歴史””経営のイロハ””売上を5倍にする魔法の注文”…。テレビ通販や経営に関する本ばかりだ。

マテ「何だ?」
ボトン「オッパはもう名ばかりの社長じゃなくて本物のCEOなんです。(本をバンッ)勉強しなきゃ」
マテ「私、表にいるから必要な物があったら呼んでくださいね^^勉強ファイト!」

ボトンが出て行くと、マテは彼女が持ってきた本を手にとってみる。

マテ「…。」

+-+-+-+

ある女性が花屋で花を注文していた。

女性「一番豪華で高いものを作ってください。それから…」

「これを一緒に送ってください」女性は持ってきた封筒を差し出した。
唇の中から目が覗き、その下に「女meme」と書いてあるロゴマークが中央にプリントされている。

+-+-+-+

「もうお祝いの花が届き始めてますよ、検事」秘書がイ・ギムの元に花を持ってきた。

イ・ギム「誰からです?」
秘書「名前はありません。(封筒を取り出し)これも一緒に届きました」

秘書が差し出したのは、さっき花屋で女性が持っていたあの封筒だ。

イ・ギム「!」



~~少し前

イ・ギムは資料を受け取っていた。

男性「またやられました。今度は大統領官邸がハッキングに」
イ・ギム「またですか?!」
男性「そのロゴ一つ残してね。またあいつです」

資料をめくると、そこには「女meme」と書かれたロゴが一枚、証拠品としてファイルされていた。

男性「絶対に捕まえなければ」

~~

そのロゴが、今度はイ・ギム本人のもとに届いたのだ。
イ・ギムは息を呑み、ロゴ付きの封筒を開けた。

そこには、大きく撮影されたカッターナイフの写真が一枚。



イ・ギム「!!!」

写真を持つイ・ギムの手がガタガタと震える。
彼女はそのまま写真を封筒に戻し、立ち上がった。

+-+-+-+

男性トイレで男性が二人、並んで用を足していた。

A「イ・ギム検事、本当に辞表出したって?検察庁長の座まで固守したのに、辞職なんて突然どうしたんだ?」
B「誰かが邪魔したんじゃないか?」
A「やり手だから敵が多いんだ。誰かに突かれりゃオシマイさ」
B「嫁に行くのかな?」

「はははっ」二人は笑いながら出て行く。
奥で背を向けて黙々と床を掃除していた女性が振り返った。
男性が事を終えたばかりの便器を見て悪態をつく。「あぁー全く!こんなこと一つ集中できないわけ?」

それは、「女meme」のカードをイ・ギムに送った、まさにその女性だった。

女性「嫁に行くならどんなにいいだろうね。”ゴールドミス”、イ・ギム」

女性は独り言を言いながら、掃除の手を止める。

女性「もう検事じゃないんだし、ゴールドミスとは言わないか」

頭の三角巾を外すと、女性は携帯を取り出す。

女性(電話)「お気に召したでしょう?ご入金を」

【第7の女 ”知ることは力だ” ヨミム】



+-+-+-+

マテは車の中でイ・ギム辞職のニュースを耳にしていた。

ラジオ「(前略)健康上の理由だとし、検事まで辞職したイ・ギム検事に、彼女を惜しむ声があがっています。また、突然の辞職に市民たちは疑念を隠すことが出来ません」

マテはすぐさま電話を掛ける。
呼び出し音が鳴り響くばかりで、応答はない。
マテはハンドルを切った。

+-+-+-+

イ・ギムがアパートのドアを開けると、そこにはマテが立っていた。

イ・ギム「どうして何度もうちに来るの?」
マテ「電話に出てくださらないので」
イ・ギム「…。」

中へ通されると、マテは一杯のお茶と共に彼女の前に座った。

マテ「健康上の理由じゃないんでしょう?」
イ・ギム「…。」
マテ「なぜそんな決心をなさることに?」
イ・ギム「正義とは何か、その質問に君は”私の人生そのものが正義だ”って、そう言ったわね」
マテ「…。」
イ・ギム「正義を守りたくて全部手放したのよ」

「10年前だったかしら」イ・ギムは話し始めた。

イ・ギム「窃盗罪に問われた中学生の子がいたわ。スーパーでラーメンを盗んだの。両親もなく、病床の祖母と弟と一緒に暮らしてるそうよ。弟たちに食べさせようと過ちを犯したの」

当時、その少年を担当したイ・ギム検事は、証拠品を受け取った。
ヨミムから送られてきた写真。それが当時の証拠品の写真だ。

イ・ギム「ポケットからカッターナイフが出てきたわ。それを凶器として提出すれば、その子は刑がかなり重くなるはず。そのとき、私がそのカッターナイフを…」

当時、そのカッターナイフを証拠品の袋から出すと、イ・ギムは震える手でゴミ箱に捨てた。

イ・ギム「捜査を担当した刑事は済州島に異動になり、カッターナイフの存在は私しか知らない秘密になった。そのときは助かったと思ったけど…。その子が今、小学校の先生になったの。全部私のお陰だって挨拶される度に私は…」
マテ「…。」
イ・ギム「恥ずかしい思いをしたわ。正義を通せなかった記憶のせいで」

「もし…」マテが口を開いた。

マテ「もしその時に戻れるとしたら、今度はどうなさいますか?」
イ・ギム「またその時に戻ったら、同じようにするわね」
マテ「それなのにどうして恥ずかしいなんて思われるんです?検事さんはその彼と家族を守ったんじゃないですか」
イ・ギム「たった一つの出来事が全てを狂わせたのよ」
マテ「?」
イ・ギム「私が検察庁長になれば、はばかるもののない真っ当な検察にする自信があるわ。それでも私は固辞したの。いえ、出来ないのよ」
マテ「…。」
イ・ギム「検察庁長になればもっと大きい悪を捕まえることが出来ただろうけど、あのカッターナイフが…ちっぽけなカッターナイフ一つが、私の全てを狂わせたの」
マテ「それでも彼の人生は検事さんのお陰で…」
イ・ギム「違うわ。彼のお陰で私が助かったのよ」
マテ「?」
イ・ギム「万が一、その子が釈放されて勉強に戻らず、もっと悪いことに手を染めたら?もし凶悪犯にでもなったとしたら…」
マテ「…。」
イ・ギム「正義とは、その過程も正義でなきゃいけないのよ
マテ「…。」



マテは納得したように小さく微笑んだ。

マテ「ある提案を受けたんですが、検事さんのお陰で答えが見つかった気がします」
イ・ギム「…。」
マテ「それにしても、これからどうやって暮らすんです?イ・ギム検…」
イ・ギム「…。」
マテ「いや、イ・ギム…姉さん?」

イ・ギムはふっと笑った。

イ・ギム「検事よりはマシね」
マテ「…。」
イ・ギム「来てくれというオファーも多いし、暮らしていけそうよ」

二人は微笑みあった。

+-+-+-+

ボトン、ボトンの母と弟、ダビデが集まっていた。
テーブルの上にはご馳走が並び、中央に置かれたバースデイケーキのロウソクに火が灯される。
「どうして来ないのかな?」ボトンは落ち着かない様子で入口を眺めた。

+-+-+-+

食事が進む中、ボトンは席を外し、電話を掛ける。

ボトン(電話)「来られないの?」
マテ(電話)「ホントにごめんな。行かなきゃならないところがあったんだ。今からじゃ遅くなるし、改めて挨拶するから」
ボトン「ふーん。分かりました。お母さんには私からよく言っておくから」
マテ「あぁ」
ボトン「ご飯は?食べました?」
マテ「うん…」
マテ「分かった。じゃまた明日^^」

ボトンは席に戻った。

マテ「オッパは急に用事ができてね。今から来ても遅くなるから、私が来るなって言ったの」
母「よく言ったね。忙しいんだから、いいんだよ」

ボトンが店員を呼び精算を頼むと、ダビデが慌ててカードを出す。
「いいのよ、いいの!」それをさらにボトンの母が止めた。

ダビデ「?」
母「ボトンが払うから。今まで家賃をまけてくれた分だけでも10回はご馳走しなきゃ。いいんですよ。ボトン、あんたが払いなさい」

「私が出すから^^」ボトンが笑顔でダビデの手をそっと押しのけた。

母「ボトン、鳥山の家、売れたよ」
ボトン「ホント?良かった!冬だから長く掛かりそうだって言ってたのに」
母「うん、まぁ良かったよ。店の隣に貸家を一つ、今日契約したよ」
弟「ついに!窮屈な店とはバイバイだ」
ボトン「おぉ~、デシクも苦労したねぇ^^お姉ちゃんが引越し祝いにノートPC買ったげるよ」
弟「おぉ~、キム・ボトン!一人前のOLだな!」
ボトン「姉ちゃんと呼びなっ」
ダビデ「僕は何をプレゼントしましょうか。ベッド?テーブル?」
母「そんな、他人の引っ越しにプレゼントなんて!…ボトン、あんたもうちに来なさい」
ボトン「えっ?私も?!」

母が真顔で頷く。

ダビデ「お母さん、僕もう庭に暮らしてないんですよ。トクセンさんが出て行ったから、僕はその部屋に…」
母「そうですか。良かったわ!あんな寒いところで暮らしてるのがすごく気に掛かってたのよ」
ダビデ「ボトンさんだってあの部屋が気に入って…い、居心地いいって…」

ダビデに同意を求めると、ボトンも大きく頷いた。

ボトン「うん、居心地いい。気楽だよ」
母「それでもうちに来なきゃ」
ダビデ「…。」
ボトン「…。」
母「あのときは鳥山で遠かったし、ソウルには部屋もないから仕方なかったけど、もうみんな越してきたんだから、自分の家で暮らさなきゃダメだよ」

「それに」母は畳み掛ける。

母「トクセンもいなくなったんだから、余計に変だわ」
ボトン「いやね、私は2階にいるし、チーム長は1階にいるんだから」
母「この子ったら!チーム長は信用できる人だけど、人の目だってあるんだから、それも気になるんだよ」
ダビデ「…。」
母「チーム長、なにはともあれ、これまでうちのボトンを世話してくださって本当にありがとうございます」
弟「それでもさ、母さんがダビデ兄のキムチやらおかずやら作って届けなきゃ。それが義理ってもんだ」

困った顔で俯くボトンの顔を、ダビデが振り返った。
そして、前へ向き直ったダビデの横顔を、今度はボトンが見つめる。

+-+-+-+

ダビデ邸に戻った二人は、ソファで深刻な顔をしていた。
黙っているダビデの表情を、ボトンが覗き込む。

ダビデ「僕がお母さんの気持ちを察しなきゃいけなかったのに」
ボトン「どうしましょう、チーム長」
ダビデ「どうするだなんて。親に心配かけちゃダメでしょう」
ボトン「…。」
ダビデ「ボトンさんは親孝行娘なんだから、お母さんの言うことをちゃんと聞かなきゃ」



#数秒前、なんとなくいい雰囲気なので、「この際、思い切って押し倒しちゃえ、ダビデくん」なんてチラッと思っちゃって、ごめんなさい、ごめんなさい。

ボトン「私が引っ越したら、また外に出るんですか?」
ダビデ「えっ?あぁ…えーと」

答えに困って俯くダビデにボトンは溜息をついた。

ボトン「チーム長の辛い事情、私は全部知ってるのに、出て行ったり出来ないよ…」
ダビデ「…。」
ボトン「キム・ボトンの笑える記憶と入れ替えてあげるなんて大口叩いておいて」
ダビデ「ボトンさん」
ボトン「?」
ダビデ「ボトンさんが心配するのに、外に出たりしませんよ」
ボトン「…。」
ダビデ「この部屋はね、もうキム・ボトンのハッピーなエネルギーで一杯なんです。1階は薄暗かったからちょうどいい。僕がこの部屋に移ります」
ボトン「本当に?」
ダビデ「人ってずるいんです。こんな暖かいところで暮らしてみたら、外にテント張って出て行けって言われても、出られません。考えただけで手足が凍りそうだ」

ダビデは息もつかずにそう言うと、明るく笑ってみせた。

ボトン「本当にここで、この部屋で、あのベッドで寝て、ここで暮らすんですよ」
ダビデ「…。そんなにしつこく言うと、僕が外に出ようとしてるみたいじゃないですか」
ボトン「そんなんじゃないですよ~」
ダビデ「^^」
ボトン「私、本当にときどき確かめに来ますからね」
ダビデ「分かりました^^」

もう一度笑い、ダビデは寂しそうに俯いた。

+-+-+-+

マテは会社で夜を明かしていた。
ボトンが用意してくれた本をめくり、一時も惜しまずに文字を追う。
絶対に、SSホームショッピングの理事たちに認められなければならないのだ。



+-+-+-+

朝早く、夜通し勉強している内に眠ってしまったマテを、ダビデが見つめていた。

ダビデ「…。」

ダビデが出て行った扉の音に、マテはハッと顔を起こした。

+-+-+-+

ユラの前にビニール袋が差し出される。

ユラ「…。」

彼女の前に座っていたのはイ・ギムだ。

イ・ギム「ホン・ユラさん。あなたの欲望を充たすために奔走するのは勝手だけれど、罪もない青年の人生を巻き込んでもいいんでしょうか」
ユラ「…。」

ユラは何も答えず、コーヒーカップを手にとった。

イ・ギム「ホン・ユラさんに関心があって見張っていたわけじゃありません。ひょっとしてMGの裏金が離婚した元妻に流れてはいないか、多角的に調べていただけです。誤解なさらないように」

ユラがゆっくりとカップをテーブルに戻す。

ユラ「それで?」
イ・ギム「ご存知ですよね。”MG唯一の庶子チェ・ジュナ”」
ユラ「…。」
イ・ギム「それはトッコ・マテが庶子ではないという意味よ」
ユラ「…。」

イ・ギムは差し出したビニール袋に視線を落とす。

イ・ギム「これはトッコ・マテの髪です。トッコ・マテがパク・キソク会長の息子なのかそうでないのか、ホン・ユラさんの前夫パク・ムンス代表の髪を手に入れて、DNA検査を受けてみてください。必要であれば」
ユラ「…。」
イ・ギム「私がわざわざあなたを訪ねて、こんな一級の情報を渡したのは、これ以上トッコ・マテを利用するなという意味です。無駄なことでしょう?庶子でもないのに」



イ・ギムの言葉に、ユラは謎の笑みを浮かべた。

+-+-+-+

マテがホンランの執務室を訪ねていた。

マテ「こんな日も来るんですね。ここで副会長にお目に掛かるとは」
ホンラン「先のことは分からないわ」
マテ「考えがまとまりました。答えを申し上げましょう」
ホンラン「…。」
マテ「副会長が差し伸べてくださった手は…握りません」
ホンラン「!」
マテ「副会長の手を取ってDNA検査をすれば、僕の座を手に入れるのに2日も掛からないでしょう。でも、それは面白くなさそうだ」
ホンラン「…。」
マテ「ゴミから出発してここまで走ってきたのに、そんな風に終わったら虚しいじゃないですか」
ホンラン「そうやって格好をつけているうちに、あなたの座は消えてしまうかもしれないわ」
マテ「…。」
ホンラン「ホン・ユラ、パク・ムンス、チェ・ジュナが手を組めば、あなたは蚊帳の外で地団駄を踏むことになるかもしれないわ。後の祭りとでも言えばいいかしら」
マテ「僕が求めているのは持ち株や権力、そんなものじゃありません」
ホンラン「…。」
マテ「医学的に認められた親子ではなく、ただ平凡な父と息子、それを求めているんです」
ホンラン「…。」
マテ「返事は十分お話ししました。あぁ、それから今後はSSホームショッピングの顔、トッコ・マテとして注目されることになるはずです」
ホンラン「青春は怖いものなしね」
マテ「僕に失うものはありません。最初から何も持っていませんでしたから」



マテは立ち上がり、悠然と部屋を出た。
ホンランはカッとしてサイドテーブルの花瓶をひっくり返す。
花瓶は音を立てて割れた。

#マテが来る度に割れるハメになる、かわいそうな花瓶^^;

+-+-+-+

「えっ?」ダビデが驚いて聞き返す。

ダビデ「アウトドアウェアを他の百貨店に出店しないと…」
マテ「百貨店には出店しません」

マテは前を見据え、そう言い切った。

ダビデ「…。」
マテ「今後我々のメインは百貨店ではなくテレビ通販にシフトします」
ダビデ「(頷く)SSホームショッピングですか」
マテ「えぇ」
ダビデ「コンセプトはどのように?」
マテ「…。」
ダビデ「今、テレビ通販で放送しているアウトドアブランドはたくさんあります。何かアピール点がないと」
マテ「ブランド(銘品)。ブランド品がコンセプトです」
ダビデ「ブランド品?」
マテ「SSホームショッピングをブランド専門のテレビ通販に変更するつもりです。女性たちはブランドにめがないでしょう。まさにその心を利用するんです」
ダビデ「…。」
マテ「百貨店に行って”何回払いにしてください”そんな手続きを、電話一本で済むようにするように」
ダビデ「既存のブランド業者がテレビ通販に商品を出すでしょうか」
マテ「我々のアウトドアブランドを皮切りに、国内ではまだ知られていないブランドを手がけましょう。既存のブランドにも提案しながらです。ブランドの商品をそのまま持ってくるのではなく、ブランドのロゴがついたSSホームショッピング独自の商品を提案するつもりです」

ダビデは小さく微笑んだ。

ダビデ「随分勉強されたようですが、なかなかいいアイディアですね」



ダビデの言葉にマテも微笑む。

マテ「名ばかりの社長じゃありませんから」
ダビデ「提案書を作ってみます。SS側の同意も必要ですから、そちらに出す分も用意しましょう」
マテ「急いでお願いします」

ダビデが頷き、立ち上がる。

マテ「チーム長」
ダビデ「?」
マテ「…。」

振り返ってマテの言葉を待つダビデを、マテはじっと見つめた。

マテ「…。あぁ、何でもありません。お疲れ様です」

+-+-+-+

ホンランは美容室に来ていた。
セットを終えたころ、待合室で携帯を眺めている客のところへ、店員がやって来て声を掛けた。

店員「お待ちになったでしょう?」
客「どうしてそう忙しいの?早くしてよ」
店員「何をご覧になってるんです?」
客「あぁ、今流行ってる企業小説。すごく面白いのよ」
店員「奥様もご覧になってるのね、私も読んでるんです。面白いですよね、朝ドラみたいで」
客「これって実話らしいけど、本当かしら?」
店員「?」
客「この女性本当に酷いのよ。会長の座を手にするために、兄弟たちを皆蹴落とすんだから」

何も言わないまま、ホンランの耳は二人の会話に集中する。

店員「再婚した男が政界の有名人だったでしょう?自分の兄たちをまるごと排除してくれって頼んだのよ」
客「ふーん」
店員「裏金容疑で一番上のお兄さんを排除して、二人目のお兄さんは麻薬事件で逮捕させたって。はぁー、酷いわ」

+-+-+-+

ホンランはすぐにその小説を見つけた。

【企業実話】欲望

-第1話-

朝から降り積もった雪よりも、さらに冷たい風の刃が吹き荒れる、冬のソウルのある日。
気候よりもさらに冷たい風が明進グループに渦巻いていた。
その真っ只中に大胆にも足を踏み入れたのは、グループ第三子で、グループの一人娘であるパク・ジュランであった。かすかな温かみも見つけることができない表情のチュランは、堂々と明進グループのロビーを横切り、自分のいるべき場所へと向かっていた。
そこはまさにグループの最も高い場所であり、ただひたすらパク・ジュランという3文字のネームプレートを置くべき場所である。それを遮るものがあれば、何であろうと容赦なく掃き捨てる覚悟だった。
彼女がNYから戻ったたった一つの理由、彼女に残ったたった一つの目標。
明進グループ。
彼女は自分の食糧を死守するためであれば、誰であろうと殺す猛獣となり、NYから戻ってきた。

”おっしゃるとおり進んでおります。すでにあらゆるマスコミでパク・シファン会長が裏金に関与した…



著者の欄には”ナ・ファンギュ”とある。

#これまで別名を使っていたファンギュが初めて本名で書いているということですね。
この小説、ぜひどこかで実際に発表して欲しい!

ホンラン「!!!」

+-+-+-+

ホンランがやって来たのはユラの元だった。

ホンラン「小説、面白いわ。カン・ミン。本名はナ・ファンギュですって?その名前、覚えがあるような気もするし」
ユラ「私は機会を差し上げました」
ホンラン「ふふっ。私の歳でこの程度のハプニングを恐れたりしないわ」
ユラ「今から恐れたりしてはいけませんわ、お義母様。まだクライマックスでもないのに」
ホンラン「…。」

「クライマックスはこうです」ユラは話し始めた。

ユラ「経営権を巡る流血の戦いは終幕を迎えたけれど、もっと確実な保険が必要。そこで政略結婚を選択するんです。だけど、どうしましょう。息子は連れていけないわ。それで捨てるんです」
ホンラン「…。」

ホンランは沈黙の後、気を取り直すように笑う。

ホンラン「どこにでもある設定じゃない?目新しいこともないわ」
ユラ「新しいのはここからです。ずっと年月が過ぎてから、ヒロインは夫の庶子に出会うんです」
ホンラン「…。」
ユラ「当然、心を踏みにじられるわ。凄惨にね」

「だけど…」ホンランをじっと見据えたまま、ユラは続けた。

ユラ「その庶子は…」
ホンラン「…。」

息を呑むホンランの表情を、ユラはたっぷりと楽しんだ。
長い間の後で、ユラはトドメを刺す。

ユラ「ヒロインが捨てた息子だと言うんです」
ホンラン「!!!」
ユラ「お義母様の時計、トッコ・マテも持っていましたわ」
ホンラン「!!!」
ユラ「全く同じ…時計を」

愕然と頭を垂れ、ホンランは虚ろな目でコーヒーを口にした。
その様子を、ユラは悠然と眺める。

ユラ「このクライマックスをは伏せて差し上げますわ。その代わり、その座からお降りになって」

カップを持つホンランの手がガタガタと震える。

ユラ「MGの女王の座をお降りになるなら、私もここで止めます」
ホンラン「あなた!あなたは!」
ユラ「マテのこともお考えにならなければ」
ホンラン「!」
ユラ「いくら捨てた息子でも、自分をゴミ扱いした人間が実の母だと知ったら、その惨めさに極端な選択をしないか…」
ホンラン「…。」
ユラ「…それが心配だわ」




ただただ打ちひしがれ、ホンランは茫然とユラを見つめた。
何も言えないホンランを、ユラは愉しげに見つめ返す。

+-+-+-+

ホンランは夫の部屋へやって来る。
夫の前で、彼女はやっとのことで口を開いた。

ホンラン「一つだけ…訊きます」
キソク「…。」
ホンラン「トッコ・マテ、あの子は…」

キソクには妻の質問がわかっていた。

キソク「君の息子だ」
ホンラン「!!!」

ホンランはそれっきり夫に背を向けると、ふらふらと部屋を出て行った。
キソクは鎮痛に目を閉じる。

+-+-+-+

ホンランはじっと懐中時計を見つめていた。

かつて、母を求めて泣く我が子に懐中時計を握らせ、彼女は息子の元を去ったのだ。

大粒の涙を流し、ホンランは声を上げて嗚咽した。



+-+-+-+

「社長♪」遅くまで会社に残っていたマテに、ボトンが声を掛けた。

マテ「?」

マテが顔を上げると、ボトンが夜食のトレイを手に微笑んでいる。

マテ「帰ってなかったのか?」
ボトン「社長が残ってるのに帰れるもんですか!」

ボトンはマテに箸を渡し、持ってきた夜食の蓋を開けながら報告を始めた。

ボトン「百貨店にまだ出店してないブランドのリストアップが済んだんですけど、明日からチェチーム長と一緒に回ることになったんです」
マテ「あぁ。俺もいくつか探したから、一緒に行こう」

「さぁ、これも」ボトンは飲み物を渡し、「あっ」と話を変えた。

ボトン「オッパ、MGグループの息子になったらね」
マテ「?」
ボトン「あぁ、今でも息子には違いないか。つまり、オッパが自分の場所を手に入れたら、何からやりたいですか?」
マテ「うーん」

考えるマテを、ボトンは期待に満ちた目でじっと見つめる。

マテ「(お前に威張り散らす?)」
ボトン「チッ…。そんなことだと思った」

ふくれるボトンに、マテは笑った。

マテ「食べろよ、先に」

マテは再び書類をめくる。

+-+-+-+

待ちくたびれてソファで眠ってしまったボトンに、マテは自分の上着を掛けた。
無垢なその寝顔を、マテは見つめる。

マテ「何がしたいかって?お前のやりたいことをやろう」



そこへマテの携帯にメールが入った。

ナ・ホンラン(メール)「時計について話があります」
マテ「?」

+-+-+-+

次の日。マテはホンランと静かな茶屋で会っていた。

マテ「母の遺品について話があるそうですが」

ホンランは硬い表情のまましばらく俯くと、決心がついたようにバッグを開ける。
思いつめたようにテーブルに置いたのは、あの時計だった。



マテ「?…それをなぜあなたが?」
ホンラン「あなたはMGの庶子だと言ったかしら」
マテ「…。」
ホンラン「トッコ・マテ、あなたはMGの庶子じゃない」
マテ「?」
ホンラン「あなたは…」
マテ「…。」
ホンラン「私の息子だそうよ」

最後まで視線を上げず、”母”は静かにそう言った。

マテ「今、何をおっしゃったんですか?僕が誰の息子だって?」
ホンラン「…。」

何も言えず、ようやく”母”は顔を上げる。

ホンラン「あなたは、私が捨てた息子よ」



+-+-+-+

ここでエンディングです。

後半、ほとんどノンストップで最後まで訳し終えました。
そうこなくっちゃ^^

恒例の原作話ですが…
今回はナ・ホンランの息子問題について。

原作のホンランはマテが自分の息子であると知っています。
長いスタンスで描かれることなので、流れは詳しく確認できないんですが、マテが息子だと最初から知っており、マテに関する情報を暴露するとヨミムにゆすられ、先手を打って「自分の息子だ」と自らマテに告げるんです。

ドラマのマテは原作と違い、最初に「庶子だ」と名乗ってホンランに会いに行っていますし、ホンランもそれを疑っている様子がなかったので、どう描かれるのか楽しみにしていました。

ヨミムがユラに変わったものの、暴露される前に自分からマテに明かした点は同じですね。

ホンランが捨てた子をなぜキソクが知っているのか、キソクと親しい育ての親、ミスクの手にどういう経緯で渡ったのか、暗号の件も含めて、終盤の目玉になりそうですね。

楽しみだわ~。

前回も書きましたが、コメントを入れようとして弾かれている皆様、どれくらいいらっしゃるのか分かりませんが、ご迷惑をお掛けしています。
Twitterを利用されている方は直接私に感想をくださっていますが、そうでない方には本当に申し訳ないです。ごめんなさい。







4 件のコメント:

  1. おはようございます(*^_^*)
    後2話ですべてがあきらかになるんですね
    o(^-^)oワクワク
    終わるのは悲しいけど、、、(。・・。)
    最後までよろしくお願いします<(_ _)>

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  2. 吹き出し 最高です♪ヽ(´木`)/ヽ(  ´)/ヽ( ´木`)/♪쑺쑺쑺
    マテと ボトン 後 二話 無事に過ごせるのか (゚ロ゚;))((;゚ロ゚)ドキドキです
    素敵な物語を ありがとうございます(^-^)

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  3. yujinaさん、お正月早々から有り難うございます。
    でも2014年は1月1日からグンちゃんに会え、最高のお正月です。
    yujinaさんに素早く訳して頂いたお蔭でもやもやせず、楽しまさせて
    頂いています。
    ホンランの?、キソクの?本当に元、夫や子供の為だけ?
    ?だらけが残り2話でどうなるのか。
    私は6話のエレキ仙女が「マテが辛いことが起き、自分を
    コントロール出来ず苦しむ時、開けて」とマテに渡した物が
    ドラマの中でどの様に使われるのかを楽しみにしているの
    ですが・・・・。
    残り2話も宜しくお願い致します。

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  4. 続きが見たくてみたくて、たまりません! あと二話で、どうやって3人入れるのか
    視聴率不振のせいで、短くなったのか、ユジナーさんの訳をとても楽しみにまっています。
    こんなに面白いのになー!韓国の人は,損してるぞ!

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