お金とはどういうものなのか。
それをジェッキから学びとったマテ。
ユラは次の指令を出しました。
それは、『人の心を操る術(すべ)を学べ』
マテと一緒に学びたいっす!
ではさっそく~
+-+-+-+
ユラはマテに語った。
ユラ(電話)「あなたがこれから大きく稼ぐ人になると信じてるわ。でも、そのときはジェッキみたいにお金に捕って食われたりしないはず。お金がどういうものか知っているからよ」
マテ(電話)「次はどうすればいいんです?」
ユラ「次の女の元へ行くのよ。そして、人の心を操る術を学ぶの」
マテ「人の心を操る術?」
ユラ「えぇ。ワクワクしない?」
ユラは電話の向こうのマテにそう話すと、目の前にいるエレキ仙女を見つめた。
マテ「なんだって?占い師?適当に言ってるんじゃないでしょうね」
ユラ「エレキ仙女は占い師じゃないわ。神の降りた巫女なんかじゃないの。人の心を見透かし、意のままに操るマニピュレーターよ」
マテ「マニピュレーター?」
ユラ「えぇ。今度はエレキ仙女の元で人の心を操る術を学んでごらんなさい」
ユラは電話を切った。
ユラ「お聞きになりましたね?仙女様」
エレキ仙女「…。」
ユラ「マテがもうじき仙女様の元を訪ねてくるでしょう。これからいろいろとマテをよろしくお願いします」
エレキ仙女「やはりホン女史の度胸は並大抵じゃありませんね」
ユラ「…。」
エレキ仙女「あの子を使って何か大きなことを企んでいらっしゃるようだけど、私がこうやって電話の内容を全部聞いてしまってもよろしかったのかしら?」
余裕たっぷりにユラは笑ってみせる。
ユラ「人の心を見透かす能力をお持ちだから、マテに仙女様から学びなさいと言ったんです。仙女様を前に隠し事が出来ると思っていたら、矛盾しているわ」
エレキ仙女「(笑)やはり凡人ではありませんね。だから、私はホン女史にだけはきちんと敬語でお話しするんです」
ユラ「私をそれほど高く買ってくださって感謝しますわ」
「さて…」と、ユラは一呼吸おくと、声を落とした。
ユラ「これくらい言っておけば、お互い礼を尽くしたでしょうから、そろそろ訪ねてきた用件をお話しくださいな」
エレキ仙女「…。」
二人はお互いの腹を探るようにじっと見つめ合った。
ユラ(心の声)「神壇の外には出てこないあなたが、なぜ私を訪ねてきたのかしら?」
エレキ仙女(心の声)「恐れ多くも誰の心を読もうとしているの?」
エレキ仙女がようやく口を開く。
エレキ仙女「実は…成り行きでトッコ・マテとホン女史を占ったところ、お二人の行く末が見えたため、こうやってお話しに来たのです」
ユラ「私とマテの行く末を?」
エレキ仙女「(小さく頷く)マテは自身の女を女王にする卓越した気運の持ち主です。ホン女史が今後マテをそばに置いておきさえすれば、MGグループを超える大きな財閥になられることでしょう。どうか夢を成就なさいますよう」
エレキ仙女は丁寧に頭を下げる。
彼女の真意が掴めず、ユラは黙ってエレキ仙女を見つめた。
ユラ(心の声)「予め私に渡りをつけておくつもり?本当に神通力があるとでも…?」
エレキ仙女「それでは私はこれで」
立ち上がり背を向けると、エレキ仙女はすぐに立ち止まった。
「あ、そうだわ」まるで本題を隠し持っていたかのように、彼女は振り返る。
エレキ仙女「もう一つ、重要な将来が見えたんですが」
ユラ「?」
エレキ仙女「マテという男が女史に大きな成功をもたらす代わりに…」
ユラ「代わりに?」
エレキ仙女「お嬢様にとても大きな災いをもたらすでしょう」
ユラ「…。何ですって?」
エレキ仙女「今6歳だとおっしゃっていたかしら?」
ユラ「…。」
エレキ仙女「お嬢様は12歳を迎えることなく、死ぬことになります」
ユラ「!」
ユラが思わず立ち上がった。
ユラ「エレキ仙女!」
エレキ仙女「…。」
ユラ「あんたのような神も降りていない偽巫女が軽口を叩くんじゃないわよ!」
エレキ仙女「…。」
ユラ「どうせ私は迷信など信じてもいない。あんたが人の心を利用して巫女行為をしているのを知らないとでも思ってるの?」
エレキ仙女「…。」
ユラ「…。」
エレキ仙女「本当に!…そう確信なさっているんですか?」
一歩、二歩。エレキ仙女がユラにゆっくりと詰め寄る。
エレキ仙女「ホン・ユラ、よくお聞きなさい。私は間違いなく神の降りた巫女よ。けれど、今重要なのはそれじゃない。重要なのは、マテから手を引かない限り、あんたの娘は死ぬというこの言葉を、あんたが聞いたってこと」
ユラ「…。」
エレキ仙女「そう聞いた以上、あんたは娘が心配になってる」
ユラ「…。」
エレキ仙女「それはなぜか?私が偽物だと、100%確信は出来ないから」
ユラ「…。」
エレキ仙女「もし本物ならどうする?もしエレキ仙女が神の降りた巫女なら?もし本当に未来を見たのなら?!」
ユラ「!」
エレキ仙女「もしも…。もしも…。その”もしも”が心底身を焦がすのよ」
ユラ「…。」
エレキ仙女「今後マテの顔を見る度に、あなたは娘の死に顔を思い浮かべることになるわ」
ユラ「わざわざ…そんな話をしに来た魂胆は何?」
エレキ仙女「…。」
ユラ「…。」
怒りと恐怖に震え、目に涙をにじませるユラを見据えると、エレキ仙女は静かに微笑んだ。
エレキ仙女「魂胆などありましょうか。私はただ見えたことをお伝えしているのです」
エレキ仙女は仕上げの一撃を加えると、冷たく踵を返し、ひそかにほくそ笑んだ。
『第二の女 心を操る女 エレキ仙女』
+-+-+-+
ボトンは電話片手に白靴下で床をスイスイ滑っているところだ。
ボトン(電話)「結婚するから、もう靴下のことは気にするなってオッパは言ったけど、私は”幽霊の美”を飾ろうと思って」
マテ(電話)「”有終の美”だ」
口をぎゅっと尖らせるボトン。
ボトン「とにかく!あの靴下、掃除用品としてテレビ通販で売りましょうよ」
マテ「(コーヒーを注ぎつつ)…。」
ボトン「この前”男キム・ボトン”に会ったって言ったでしょ?あの人、テレビ通販のMDでね、一度やってみようって」
マテ「靴下を掃除用品だって売るような頭のおかしいMDがどこにいるんだよ?!お前、また変な奴に騙されてんじゃないのか?」
ボトン「ははっ(嘲笑)この間、靴下を在庫処理屋で売るとか言ってチャッカリ騙された人がいましたよね」
マテ「何だと?!とにかくだ、一体何度言ったら分かるんだよ?男はみんな悪いやつだって。お前のどこが気に入ってそんなこと言ってんのか分からないけど、下心があるに決まってる」
ボトン「…。」
マテ「そんなプロジェクトにうつつを抜かしてる場合か?!」
ボトン「どうして信じないんですかぁ~!」
マテ「連れて来い。俺が一目見れば分かる」
ボトン「…。連れて来いって?」
#ボトンの足が増えてる^^
+-+-+-+
ダビデは訪ねてきたボトンにコーヒーを差し出した。
ボトン「あっ、ありがとうございます^^」
彼女の向かいに腰を下ろしたダビデに、ボトンは靴下の束を見せる。
ボトン「あの…、これね、ホントにテレビ通販で売れるんですよね?」
ダビデ「デザインをしてみなきゃ。資料も作ってね」
ボトン「あぁ…。オッパにもう一度聞いてみなきゃいけないんですけど、うちのオッパ、元々忙しい人で」
ダビデ「へぇ~、忙しい男か」
ボトン「(うんうん)」
ダビデ「忙しい男って9割がた悪い男なんだけど」
ボトン「ううん、うちのオッパは悪い男じゃなくて”きれいな男”」
ダビデ「忙しい上にきれいなんですか?それなら100%だな」
ボトン「…帰ります」
ダビデ「(慌てて止める)あぁ!冗談なのに」
ボトン「…。(コーヒーをすする)」
ダビデ「美味しいでしょ」
ボトン「えぇ^^美味しいですよ。…あの、チェ代理、うちのオッパに一回だけ会って説得してくださいませんか?」
ダビデ「つまりその悪いオッ…!」
ボトン「!」
ダビデ「…きれいで忙しいオッパが信じてくれないんだね」
ボトン「(うんうん)」
ダビデ「じゃ、会いましょう」
ボトン「ホントですか?はぁ、ありがとうございます!」
嬉しそうなボトンの表情に、ダビデの顔も緩んだ。
+-+-+-+
鏡を勢い良く拭くと、クリアになった表面に美しいマテの顔が現れる。
彼は鏡の中自分の顔を睨むと、深い溜息をついた。
マテ「今度は占いのお嬢ちゃんとは…。ジェッキのことで顔も割れてるし、(鏡を見つめる)新たな何かが必要だな」
+-+-+-+
エレキ仙女の元は今日も客で活気に満ちていた。
受付に突然まばゆい光がさすと、女性たちは驚いて目を見張る。
入口から世にも眩しい美男が入ってきたではないか。
その男…マテはゆっくりとその場を見渡すと、スタッフの一人に近づいた。
マテ「仙女様にお会いしたいんですが」
スタッフ「順番が来れば(番号ベルをゆっくり差し出す)ベルでお知らせします」
マテ「(じーっと見つめる)」
スタッフ「…お客様」
マテは番号ベルにチラリと視線を落とすと、ふっと笑った。
マテ「順番を待って入るような面会ではないんです」
後ろにいた先輩スタッフがうっとりして後輩を押しのける。
スタッフ「お名前は…」
マテ「トッコ・マテ」
スタッフは釘付けになった視線を外せないまま、受話器を取り上げた。
スタッフ「(受話器に)トッコ・マテとおっしゃる方がおいでなんですが…」
マテ「…。」
スタッフ「(受話器に)はい…。はい、分かりました」
マテが奥へ進もうとすると、「あぁ、ちょっと♥」とスタッフが手で制する。
スタッフ「待ち時間が2時間半ありまして」
マテ「!」
スタッフ「お忙しければお帰りになって構わないとのことです」
マテ「…。」
スタッフはマテの手のひらに丁寧に番号ベルを握らせる。
+-+-+-+
いい加減待ちくたびれ、待合室のソファで眠ってしまったマテは、隣の女性客に体を撫でられているのに気づき、飛び起きた。
マテ「お母さん!(※驚いた時に叫ぶ言葉)」
女性客「お母さんが聞いたら寂しがるわ~。叔母さんと呼んで頂戴。ひゃははははっ!」
マテ「…。」
+-+-+-+
ようやくマテはエレキ仙女の前へやって来た。
エレキ仙女「チェク社長は大丈夫なんでしょう?お守りのご加護でこの程度で済んだのよ。結婚はご破算なったと聞いたわ」
マテ「お陰さまで。無念でたまらないですね。神が降りているわけでもないのに、ああだこうだと馬鹿げたことを言ってくれたもんだから」
エレキ仙女「…。」
マテ「結局こうなりましたよ。(嘲笑)愉快ですか?」
エレキ仙女「(笑)ホン・ユラが言ったのかしら?私が神の降りていない偽巫女だと」
マテ「…。」
エレキ仙女「その言葉を信じて、そうやって無礼な振る舞いを?」
マテ「…。」
エレキ仙女「あんたが偽物だろうと本物だろうと、たいして興味もない。俺がここまで来た理由は教えを請うためです。人の心を操る技術を」
エレキ仙女は鼻で笑った。
マテ「あんたのせいで破談になったんです。責任をとって協力してくれと言ってるんです」
そう話すマテの表情を、エレキ仙女はじっと観察する。
マテ「分けてください。人の心を操りたいんです。他所で占いの真似事をしたりはしないから、ご心配なく」
エレキ仙女「…。」
マテ「教えてください」
話し終えたマテが視線を上げると、エレキ仙女はドキリとしたように彼を見返した。
一瞬狼狽すると、彼女は気を取り直す。
エレキ仙女「3分経ったわね。ここまでの相談料は50万ウォン。大丈夫かしら?」
マテ「…。」
エレキ仙女「払えそうには見えないわ。もう帰りなさい」
マテ「…。」
エレキ仙女「チェク社長もいないし、これといって…稼ぎもないようだから」
マテ「…。」
エレキ仙女は手元の通話ボタンを押した。
エレキ仙女「次のお客様」
身じろぎもせずに見つめているマテに、エレキ仙女は目だけで「帰れ」と合図をした。
仕方なく立ち上がると、マテは硬い表情で彼女に背を向ける。
エレキ仙女「…。」
マテが退室し、扉が閉まると、エレキ仙女はやっと呼吸ができたかのようにハッと息を吐き出した。
ほてった顔を仰ぎ、頬を両手で包む。
「10分だけ休むわ。次のお客様に待ってもらって」エレキ仙女は通話ボタンを押し、早口で伝えた。
鏡を覗いて自分の顔を写すと、彼女は顔を赤らめた。
+-+-+-+
途方に暮れたマテがやって来たのはユラの元だ。
ユラ「会ってみてどう?」
マテ「本当に偽物なんですか?」
ユラ「…。」
マテ「とんでもないパワーだった。何かあるからチェク社長だって人生を賭けてるんじゃないのか?」
ユラ「…。」
偽物か本物か…。どうしてもあの時のエレキ仙女の言葉が浮かび、ユラは思わず口をつぐんだ。
「お嬢様は12歳を迎えることもできずに死ぬことになる」と…。
ユラ「私の言ったことがわかってないのね。あの女は神が降りた巫女なんかじゃないと何度言えば分かるの?!」
マテ「…。」
ユラ「ただ人の心理を利用して偽りの巫女行為をしているだけよ!」
マテ「怒らなくてもいいじゃないですか!」
ユラ「!…集中しようと言いたかったのよ」
マテ「とにかく、たやすい相手じゃありません。問題なのは、僕が何を準備しようと、僕の心を見透かしているってことでしょう。何をしようとしても先に分かってしまうはずだ」
ユラ「最初からおとなしく教えてくれると思ったの?」
マテ「…。」
ユラ「そうすれば自ら偽物だと認めることになるわ」
マテ「結局、どうにかしてエレキ仙女の心を掴まなけりゃ、決して教えてはくれないってことですね」
ユラ「ポイントがずれてるわ」
マテ「?」
ユラ「仙女が本物かそうでないか、ポイントはそこじゃないでしょう?仙女も女だってこと。それがポイントじゃないかしら?」
マテは嫌気が差したように首を振って俯いた。
ユラ「あなたは(微笑む)トッコ・マテなのよ」
#ユラの台詞を聞いて、成スのク・ヨンハを思い出した人 (≧ω≦)ノ
マテ「…。」
ユラ「倉庫の靴下の件は順調に進んでいるの?」
マテ「あぁ、それが…」
そのときちょうどボトンからの電話が鳴った。
マテ(電話)「何だ?…。どこに?」
+-+-+-+
ボトンと共にマテはMGホームショッピングの社屋に足を踏み入れた。
マテ「何でよりによってMGホームショッピングなんだ?」
ボトン「トップだから。めっちゃくちゃ売れるはずですよ」
マテ「…。」
ボトン「他のところも調べてはみたんだけど、オッパの言うとおり靴下がイマイチみたい。みんなあーだこーだって…」
マテ「おい、どこがイマイチなんだよ」
ボトン「オッパが言ったでしょう?生まれ持っての卑しい靴下だって。だから在庫処理で売ろうって」
マテ「お前分かってないな。金だって品物だって何でも尊く思えば尊く育つんだ。わかったか?」
ボトン「わぁっ、何てこった!自分の口で言ったくせに…」
マテ「どこ行けばいいんだ?」
マテは先に歩き出す。
ボトンは腹が立ってマテの背中に拳を振り上げる真似をした。
と、急にマテが振り返る。
ボトン「!」
マテ「お前の手、暴力的だな」
ボトン「いやぁ~(振りかざした腕をぐるぐる)オッパにあげるものがあってね、おおげさにアクションしてみたんすよ^^;」
そう誤魔化して、ボトンは紐でデコレーションしたノートのようなものを差し出した。
マテ「何だよ?」
ボトン「オッパは忙しいからちゃんと準備できないだろうと思って、オッパに似合いそうなタキシードのデザインを全部まとめて来たんですよ」
マテ「…捨てろ」
ボトン「もぅ、誠意を見せて一度は見て下さいよ~。自分の結婚相手だと思って一生懸命作ってきたのに」
マテ「(イライラ)結婚は破談になった!これでいいか?」
ボトン「!」
マテ「捨てろ!」
ボトン「…!」
歩き出したマテを、ボトンはスキップで追いかけた。
ボトン「昔の言い伝えはち~~~っとも間違ってないですよ。よく言うでしょ、”結婚がどうなるか式場に入るまで誰にも分からない”って。ははっ、何でむ破談になっちゃったんですかぁ~!」
マテ「…。」
ボトン「一緒に行きましょうってば!」
マテ「…。」
ボトン「恥ずかしいんですか?ん?」
マテ「…。」
ボトン「何が恥ずかしいんですか~、私たちの間柄で!」
+-+-+-+
「ボトンさん!」
二人が待っていると、ダビデがやって来て声を掛けた。
ボトン「あ、チェ代理!」
ダビデ「お昼、食べました?」
ボトン「はい。ラーメン食べたんです」
ダビデ「ラーメンなんか食べてちゃダメですよ。ご飯を食べなきゃ。ご飯食べに行きますか?」
#あたしゃその人差し指になりたい(byキム・ボトン)
親しそうに話す二人を、マテは黙って見上げ、「つまらん」とばかりにそっぽを向いた。
ボトン「こちら…」
ボトンが指すと、「あぁ」とダビデがマテを振り返る。
「チェ・ダビデです」とダビデが握手の手を差し出すと、マテはクールな表情で立ち上がった。
マテ「トッコ・マテです」
二人は握手を交わした。
ダビデ(心の声)「お前か。キレイで悪くて忙しいオッパは」
マテ(心の声)「お前か。男キム・ボトンは」
握り合う手に力が入る。
ようやく手を離すと、マテが切り出した。
マテ「靴下で掃除をなさるって?」
ダビデ「えぇ。普通は業者からPRしてくるんですが、今回は役割が逆になりましたね。まぁとにかく…(ボトンに)準備は出来てますよね?」
ボトン「えぇ!」
ダビデ「ファイト!」
白靴下をミトン代わりにはめた手でぎゅっと拳を作り、ニッコリと微笑んだ。
+-+-+-+
マテが座るテーブルの前に並んで立ったボトンとダビデ。
腕を後ろに回して構えると「再生ボタンを押してください」とマテに頼んだ。
ダビデ「プレゼン用のミュージックスタート!」
BGMが流れ始めると、二人は腰をフリフリ踊りだす。
ダビデ「靴下♪雑巾♪2つとも!2回も要りません!一度拭けばきれいさっぱり!」
ボトン「10年たまった汚れも♪1度拭けばあら不思議!」
二人「ババン♪」
マテ「…。」
ボトン「チェ代理、今日もコーヒー飲んで頑張りましょうか?」
ダビデ「ボトンさんに勧められれば毒入りでも飲みましょう」
ボトン「そんなぁ~(ダビデをペン!)」
ダビデ「ありゃりゃ~~!」
テーブルの上にコーヒーがこぼれる。
ダビデ「そんな馬鹿な!コーヒーこぼしちゃったよ!何で拭こうか?」
ボトン「お掃除靴下?」
ダビデ「そうだ!お掃除靴下があった!」
靴下をはめた両手をあげ、構える二人。
ダビデ「さぁ!」
ダビデが足を上げ、履いた白靴下でテーブルのコーヒーをごしごし。
ダビデ「さっさっさっ♪あ、熱っ熱っ!」
ボトン「きゃっ。どうしよう!大丈夫ですか?!」
床に倒れ込んだダビデの靴下をボトンが慌てて脱がせる。
マテ「………………。」
+-+-+-+
「二人でギャグコンテストにでも出るといいですよ」
マテが冷たく言い放つと、洗面器の氷水に足を浸したダビデが顔を上げた。
ダビデ「酷いなぁ、商品にここまで愛情がなくて売れるのか疑問ですよ」
マテ「…。接待でもしてさしあげましょうか?何がお好きです?酒?ゴルフ?」
ダビデ「勿体ないですね」
マテ「何がです?」
ダビデ「純情が」
マテ「…。」
そこへボトンが交換用の水を持って入ってくる。
ボトン「マシになりました?」
ダビデ「えぇ。ボトンさんのお陰で何ともないですよ」
ダビデは洗面器を受け取った。
ダビデ「さぁ、それじゃ手続きに入りましょう」
ボトン「手続きですか?」
ダビデ「あぁ、事業者登録証のコピーを持って来るようにって言い忘れてたな。明日FAXで送ってください」
ボトン「事…事業者登録証?」
マテ「…。」
マテの目がキョロキョロ。
ダビデ「えぇ。それがないと提携業者として登録できませんから。それから…あぁ、そうだ、信用評価も貰ってきていただかないと」
マテ「!」
ダビデ「あぁ、お伝えするのをすっかり忘れてたな。それが基本なんです。」
ボトン「あぁ…。私たちってそういうの…」
ボトンがマテをチラリとみると、マテがゆーーっくり姿勢を正した。
マテ「…。」
ボトン「…ないですけど?」
ダビデ「?!…あぁ」
ボトン「…。」
ダビデ「つまり、その業者が信頼できるのかどうか、今後最後まで商品に責任を持てるかどうか、まぁそういう審査を通って初めて番組に編成してもらえるんです」
ボトン「…。」
ダビデ「そういう手続きなしには放送してもらえません」
マテは立ち上がった。
マテ「帰るぞ」
ボトン「(止める)このまま帰ってどうするんですか!」
マテ「絶対ダメだって言ってるじゃないか!(ダビデをチラリ)下っ端の代理さんがダメだって言うのに、どうやって進めるんだよ?(ボトンの手を振り払い)こんなこと調べもせずに!全く」
マテは部屋を出て行った。
ボトン「(ダビデに)チェ代理、本当に絶対ダメなんですか?」
ダビデ「ボトンさん…。これはね、きれいなオッパの言うとおり、下っ端代理の力じゃどうしようもないんです」
ボトン「はぁ、そうなんだ…」
ダビデ「…。」
ボトン「私帰りますね。でもホントにありがとうございます、チェ代理」
ペコリと頭を下げると、言葉のないダビデの前でボトンは荷物を持ち、背を向けた。
ダビデ「はぁ…。泣きそうだったな、ボトンさん…」
+-+-+-+
MGホームショッピングの外へ出てくると、ちょうどボトンの目の前をマテの黒い車が走り去った。
「オッパ!」溜め息をつくボトン。
「一人で帰っちゃうんだな」いつの間にか隣にやって来たダビデが、並んでマテの車を見送る。
ボトン「チェ代理?」
ダビデ「ちょうど出掛けるところなんだけど、乗って行きますか?」
ボトン「いいえ、一人で帰れますから。お世話になってばっかりだし」
ダビデ「こんなのお世話に入りませんよ。元々朝鮮民族っていうのはね、お互い助けあうものなんです」
ボトン「…。」
ダビデ「行きましょう^^」
ボトン「ホント大丈夫なのに…」
二人は歩き出す。
+-+-+-+
マテの車が信号待ちで停まった。
マテ「キム・ボトンに言われるままここまでついてきた俺の過ちだ。(舌打ち)あいつ、そう見たって万年代理だな」
ぼやいていると、一台のポンコツ車が隣にやって来て停まる。
乗っているのはダビデとボトンだ。
マテ「はっ、車まで体たらくだな。自分そっくりじゃないか。(イライラ)キム・ボトンのやつ、どこが良くてあんな車に乗ってんだよっ!あぁ、ムカムカする!」
+-+-+-+
カフェの前に停めた車から降りてくると、パク・ムンスは店を見上げた。
テラス席にユラが待っているのが見せる。
ムンス「どうしてたんだい?」
ユラ「スルリ…どうしてますか?」
ムンス「幼稚園に通って、あれこれ習い事もしているよ。君は?」
ユラ「どうにか元気にしています。どうなさったんです?お義母様に知れたら小言を言われるでしょうに、私を呼び出すなんて」
ムンス「あぁ…。このカフェ、どうだい?」
ユラ「どういう意味ですか?」
ムンス「友人がやってたカフェなんだ。急に渡米が決まって仕方なく手放すことになり、僕が引き受けた」
ユラ「…。」
ムンス「君が経営したらどうだい?」
ユラ「お義母様は私を海外へ追い出したくてヤキモキなさってるのに、あなたがこんなカフェまで用立てたことを知ったら、黙ってはいないはずだわ」
ムンス「MGグループの資金じゃないよ。仲の良い友人だったから、いい条件で引き受けたんだ」
ユラ「遠慮しておきます」
ムンス「…。」
ユラ「どう説明したって、お義母様の目には見苦しい未練に見えるだろうから」
ムンス「父がそうしろとおっしゃったんだ」
ユラ「…。」
ムンス「敢えて君に言うなとおっしゃったんだけど、知っていてほしい」
ユラ「…。」
ムンス「スルリの母親が安定した生活を送れるようにしてくださったことだから、黙って受け入れてくれないか」
ユラ「…。」
ムンス「今更言っても仕方のないことだけど、父は君を可愛がっていらっしゃった。こんな形で別れてしまったこと…とても残念がってる。父の気持ちを楽にしてあげるためだと思って、受け入れてくれ」
ユラ「…いまさらどうして」
ムンス「どうして… 堪えられなかったんだ?」
ユラ「…。」
ムンス「…。」
ユラ「堪えられる人は… きっといなかったはずです」
ムンスは何も言えず、目を伏せた。
彼を見つめるユラの目に涙が滲む。
#こういうしっとりした大人のシーン、すごく好き。
+-+-+-+
助手席で終始しょんぼりしているボトンに、ダビデは気が気でなかった。
ダビデ「元気だしてくださいよ。地球滅亡みたいな顔しないで」
ボトン「チェ代理、大ヒットするって言ったくせに…」
ダビデ「…。」
ボトン「オッパの心配事が増えるだけになっちゃった」
ダビデ「前もって確認しなきゃいけなかったんだけど、それくらいはちゃんと出来てるだろうと思って…」
ボトン「もういいです。オッパの顔に皺が増えたらチェ代理が責任取ってください」
ダビデ「ボトンさんのことを責任取れって言うならともかく、何で悪い男の責任取らなきゃいけないんですか?僕が!」
ボトン「悪い人じゃないって何回言えば分かるんですか!」
ダビデ「わかりましたってば…。(溜め息)」
ボトン「…。」
ダビデ「(悩む)反則なんだけどな…。提携会社として登録してある会社の名前に乗っかって、一度売ってみましょう」
ボトン「そうしてもいいんですか?」
ダビデ「^^;」
ボトン「どうして今まで言わなかったんですか!」
ダビデ「今思いついたんだ」
ボトン「(復活)行きましょ!」
ダビデ「え?」
ボトン「提携会社ですよ!向かってください」
ダビデ「そうしましょう」
+-+-+-+
ボトンとダビデは協力してくれそうな業者を回っていた。
ボトン「あと残り1箇所ですね」
ダビデ「みんな見る目がないんだよ!(リストを指さし)だけど、ここは受け入れてくれるはずですよ。僕がここの商品をヒットさせたんですから」
ボトン「おぉ~♪」
ダビデ「行きましょう」
「チェ代理、これはちょっと…」最後に残った業者の担当者は表情を曇らせた。
担当者「私どもも協力したいんですが、お掃除靴下と言われてもピンと来ませんし」
ダビデ「スポンジ雑巾だって最初はそうでしたよ。僕がヒットさせたじゃないですか。今回もそう信じてやってみましょうよ」
担当者「こんなことまで申し上げるのは何ですが、チェ代理が会社をクビになるとかならないとか…。それで不安もあるんですよ」
戸惑うダビデを、隣で聞いているボトンが見つめた。
担当者「申し訳ありません、チェ代理」
ボトン「クビになるんですか?」
ダビデ「えっ?いいえ、クビになんかなりませんよ」
その場に気まずい沈黙が流れた。
+-+-+-+
エレキ仙女の神壇。
なんとなく落ち着かない様子のエレキ仙女に、スタッフが声を掛けた。
スタッフ「仙女様、私たち先に失礼してもよろしいでしょうか?」
エレキ仙女「あぁ、そうなさって。ずいぶん雨が降ってるようだから、気をつけてね」
「ではまた明日」と背中を向けたスタッフを、「あっ!ひょっとして」とエレキ仙女が呼び止める。
スタッフ「はい?」
エレキ仙女「男の人から私に電話がなかったかしら」
スタッフ「ありませんでしたが…」
エレキ仙女「そう…。(苦笑)看板は消さないで帰ってくださいな」
+-+-+-+
すっかり日の落ちた館の前には雨が降っていた。
傘を広げたスタッフは恨めしそうに空を見上げる。
スタッフ1「はぁ、雨ね。仙女様もお可哀想だわ。この歳になって恋愛もできないなんて。どんなに寂しいかな」
スタッフ2「そうですよね。占い師と付き合いたい人なんていないでしょうから」
スタッフ1「行きましょ」
+-+-+-+
鳴らない電話を見つめ、ぼんやりと頬杖をつくエレキ仙女。
諦めると、彼女は門の外へ出て看板を消し、傘を広げた。
「はぁ」溜め息をつくと、そこに誰かが立っている気配を感じる。
エレキ仙女「?」
傘もささず、無防備に雨に濡れるがままになっているその人は、彼女が待ちわびていた人。
トッコ・マテだ。
エレキ仙女「!」
マテは振り返ると、切ない瞳で彼女を見つめた。
#花男名物「雨の別れ」を思い出すねぇ
エレキ仙女「あなた!」
マテはゆっくりと彼女に近づく。
マテ「なぜこんな時間まで出ていらっしゃらなかったんです?」
エレキ仙女「…。」
マテ「教えてください。どうすればいいのか」
エレキ仙女「?」
マテ「人の心を見透かして操るには…どうすればいいんです?」
エレキ仙女「私は巫女。特別な方法など知らないわ」
マテ「…。」
エレキ仙女「ただ神霊様のおっしゃることを伝えるのみ」
「そうなんですね…」マテは力なく頷いた。
エレキ仙女「…。」
マテ「仙女様は本当の巫女で、神霊様の言葉を伝えるだけ。だから、僕が仙女様から学べることは何もない。そういうことなんですね」
エレキ仙女「…。」
マテ「それなら仙女様は…僕がこのまま去ってもいいんですか?」
エレキ仙女「!」
ずぶ濡れになった迷い犬のようにまっすぐな目で自分を見つめるマテに、エレキ仙女は言葉を失った。
エレキ仙女「お互い追い込まれている状況ね。…帰り道、ちゃんと風邪薬を買いなさい」
背を向けるエレキ仙女を、マテは茫然と見送った。
マテ「…。あぁー!雨に降られて2時間も待ってたのに!こんなのってあるかよ!傘くらいくれたっていいだろ。あぁ、寒っ!」
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
エレキ仙女にとっても迷うところですね。
マテを突き放してユラの元へ返したくはないのに、彼の望みに答えれば自分が偽物だと自ら認めることになる。
それはユラの思う壺。
マテにも葛藤はあるんですが、女性側の葛藤がまた面白いです。
マテが鼻の下を伸ばす仕草は原作にあるんでしょうか?それともアドリブなんでしょうか?
返信削除いずれにせよ...かわいいです(*^^*)
ユジナさん、ラブレインに続きお邪魔してます。
返信削除ユジナさんの文章の世界、大好きです(*^^*)マテがますますコミカルで美しい(^q^)これからも楽しみにしています!ムリをし過ぎないよう、頑張って下さい。
ク・ヨンハを思い出した2人目です(´艸`*)
返信削除私も人差し指になりたい!byうなぎ( 〃▽〃)
返信削除くるくるマテ♡
ドラマの展開にあわせて変身
キュートでいいなぁって 私は思ってます
マテをめぐる女性の心の葛藤が楽しみに
なって来ました。
第1話から読ませていただいてます。ありがとうございます。
返信削除毎回冒頭のセレクト写真とコメントが秀逸で、今回も爆笑しました!
ボトンは可愛いですね^^
マテのキャラも好きですが、登場する女性キャラが魅力的ですよね。
私の能力では何となく雰囲気把握だけしかできてなかったのですが、
yujinaさんの翻訳を読んで女性側の葛藤がよくわかりました。
今後どんな女性たちが登場してくるかも楽しみです^^
ラブレインの時からお世話になります。
返信削除ありがとうございます。
訳なしで自分でドラマがわかるようになりたいと始めた韓国語学習ですが、まだまだ5分の1ぐらいしかわかりません。
やはり、間に合いませんでした。
めげずに続けて、いつか韓国語でドラマを楽しめたらと、思っています。
これからもよろしくお願いします。