2013年12月16日月曜日

きれいな男8話あらすじ&日本語訳vol.2

綺麗な男8話後半です。


#ミョミと一緒にいるマテ、ナチュラルでいいと思いません?^^
お互い同じ問題を抱えているという状況のせいもあるけど。


+-+-+-+

「まぁ、叔父さん!おめでとう!」キム・インジュンはオフィスで電話を受けていた。

インジュン(電話)「住所教えてください。お花を贈らなきゃ」

「…。」向こうの言葉に、インジュンの顔色が変わる。

インジュン(電話)「あぁ、サイン会ですか。いえいえ、一度調べてみますね。叔母さんがカルビ屋オープンしたときもお祝いしたんだから、叔父さんのところのオープンだってお祝いして当然よ」

電話を切ると、インジュンはすぐに別の人物に電話を掛けた。
電話が繋がるなり、インジュンは明るく話し始める。

インジュン「ご飯食べてるの?何か口に合うもの作ってあげようか?」

ミョミが淡々と応答する。

ミョミ(電話)「ちゃんと食べてます。どんな用件ですか?」
インジュン(電話)「春川の精肉店でサイン会をやってよ」
ミョミ「(ウンザリ)今度は…精肉店ですか」
インジュン「今まで文句も言わずにやってたのに、急にどうしたの?そんな姿を見せたくない人でも出来たわけ?」



ミョミは硬い表情で電話を切る。

+-+-+-+

ボトンを前に、トクセンは妙に嬉しそうだ。

トクセン「俺に聞いて正解だ。マテ兄のこと、俺ほどよく知ってる奴はいないからな」
ボトン「あははっ、ですよねぇ。私、どうすればマテオッパのことガシッと捕まえられます?」
トクセン「お高い女にならなきゃな」
ボトン「?」
トクセン「マテ兄だけじゃなくて、ほとんどの男は容易くない女に魅力を感じるんだ。お前は純情すぎるだろ」
ボトン「容易くない女?それ、どうやるんです?」
トクセン「このオッパが一肌脱いでやる。よく聞けよ、重要なレッスンだからな」
ボトン「うん!」

「さて」とトクセンは始めた。

トクセン「マテ兄がお前のこと呼んでる。どんなふうに呼ぶ?」
ボトン「めちゃくちゃエラそうに呼びますよ。”おい、キム・ボトン、水持って来い”」
トクセン「そうだな。そしたらお前はどうする?」
ボトン「”おい、キム・ボトン”って言い終わる前に、”はい、オッパ~♪”って」
トクセン「それが問題なんだよ!」
ボトン「?」
トクセン「マテ兄がお前のこと呼ぶだろ?2秒だけ数えろ。ワン、ツー。それから見るんだ」
ボトン「?」
トクセン「マテ兄をじっと見るんだ。返事なんかするな!ただじっと見るだけだぞ」
ボトン「それから?」
トクセン「それから、ゆっくり冷蔵庫に行くんだ。よそよそしく、冷ややかな感じでな」
ボトン「「?」

トクセンは立ち上がり、冷蔵庫を開けた。
水のペットボトルを一本取り出すと、ボトンをじっと見ながら、またテーブルへと歩き出す。

トクセン「じっと目を離さずに、マテ兄をまっすぐ見ながら行くんだ」

トクセンがボトンの目の前にドンとペットボトルを置く。

トクセン「水を渡す。さらに2秒!そしてターン!そのまま振り返らずに去れ!そして席について淡々と仕事を再開しろ!!!」
ボトン「…。」
トクセン「それがスタートだ」
ボトン「…。」
トクセン「そうしたらマテ兄がお前を呼ぶ。どんなふうに?不安に駆られた声でだ。”ボトン?”」
ボトン「…。」
トクセン「な?OK?」
ボトン「あぁ~。2秒か」
トクセン「2秒だ。ワン、ツー」

「ワン、ツー」ボトンは手応えを感じ、頷いた。

+-+-+-+

ボトン会社では、スタッフ全員が席について作業に集中していた。
そこへ、社長室から声が響く。

マテ「キム・ボトーン」
ボトン「!」

ボトンがドキッとして背筋を伸ばすと、向かいにいるトクセンが目で合図した。

マテ「?」

「ワン、ツー」ボトンは目を閉じて2秒数えると、澄ました表情でヒラリと振り返った。

マテ「冷たい水、持って来てくれるか?」

ぷいっと顎を上げると、ボトンは何も言わずに立ち上がった。
冷蔵庫に向かうボトンを、トクセンがニヤニヤしながら見守る。

開けた冷蔵庫を閉めると、ボトンはそこでもう一度2秒数えた。
華麗に振り返ると、マテの席までゆっくり歩き、マテの席に音を立ててそれを置いた。

マテ「?」
ボトン「…。(ワン、ツー)」

不思議そうに見上げるマテを、冷たく見下ろし、2秒数える。
そこで「ターン!」
ボトンは身を翻すと、背を向けて歩き出した。

マテ「…ボトン?」

よし来た!
不安に駆られたソフトなオッパの声!!!
ボトンは2秒待ち、振り返ると、まばたきを二つ。

マテ「…。」
ボトン「…。」
マテ「水持って来いって言ったんだ」
ボトン「…。」
マテ「水」
ボトン「?」

マテは机の上に視線を移した。

マテ「…。」
ボトン「?」

彼の目の前には、真っ赤なケチャップ一つ。

ボトン「!」
マテ「…。」

ボトンは黙ってケチャップを拾い上げると、逃げるように社長室を出た。
…撃沈。

ダビデ「何なんだ?」



+-+-+-+

マテは助手席にミョミを乗せ、車を走らせていた。
聞いたこともないような地名に、マテは首を傾げる。

マテ「そんな場所があるんです?」
ミョミ「…そうなんでしょ」
マテ「けど、何でそんなところに?マネージャーさんは一緒に行かないんですか?」
ミョミ「具合が悪いんだって。自分で運転して行こうかと思ったけど、道も分からないし」
マテ「寝ててください。着いたら起こしますから」
ミョミ「…。」

沈んだ様子のミョミが気になり、マテはチラリと助手席の彼女を見る。
ミョミは窓の外に視線を移し、深い溜息をついた。

+-+-+-+

『第一精肉店オープン ワールドスター ミョミ 特別サイン会』

横断幕が掛けられているのは、精肉店の店先だ。
店の前にポツンと用意された長机に座り、ミョミは行列を迎えた。

ミョミにとっては気の乗らないサイン会であっても、並んでいる人々の顔はとても明るい。
彼女を前に、誰もが感激してサインを貰っていく。
「本当に美人だねぇ」「顔が小さいなぁ。うちの子犬ほどだ」

「でも子犬よりは大きいでしょう?」ミョミが微笑むと、みなが楽しそうに笑った。



そんな田舎町での小さなサイン会の様子を、マテは離れたところで見守っていた。
彼女の様子をしばし見つめると、彼はそっとその場を離れる。

+-+-+-+

マテはインジュンの元を訪ねた。

インジュン「どうしてここまで?」
マテ「告白するためです」
インジュン「…告白?」

マテは顔を上げ、まっすぐインジュンを見た。

マテ「あなたの人脈を利用して靴下を売ったのは恥ずべき行為だったと、それを告白しに来ました。…申し訳ありません」
インジュン「…。」
マテ「僕が利用したんです。あなたの寂しさを自分が救ってやる…そうしてあなたを利用したんです」
インジュン「…。」
マテ「でも、それ以降、恥ずかしいと思わない日は一日だってありませんでした。自分で勝ち取った成功じゃないから」
インジュン「それで?」

マテはもう一度インジュンを見つめる。



マテ「おやめになってください」
インジュン「どういう意味?」
マテ「ミョミ、田舎の精肉店でサイン会を開くような人じゃないでしょう」
インジュン「(苛立つ)」
マテ「二人にどんな因縁があるのか知らないけど、彼女の人生にむやみに傷をつけないでください。後々、所長がもっと辛くなります」
インジュン「…。」
マテ「正しいことじゃなかったと分かるだろうから」

黙っていたインジュンが口を開いた。

インジュン「笑えるわね、こういうの。ミョミのこと好きになった?わかってるはずよ、ミョミはレズビアンだって」
マテ「世の中は男女の関係だけで説明がつくわけじゃない」
インジュン「理解できないわ。トッコ・マテ、あなたがどうしてこんなことするのか」
マテ「所長ご本人の寂しさを、他人を苦しめることで発散するのはやめてください」
インジュン「!」
マテ「お願いです」

マテは小さく頭を下げる。

インジュン「マテ、あなたが言うことじゃないでしょう?私の寂しさを利用したのはあなた自身よ」
マテ「すみません。心から謝ります」
インジュン「!」
マテ「ミョミを揺さぶらないでください。最後の頼みです」

「では」立ち上がると、マテは頭を下げ、部屋を出た。
一人残されたインジュンの目が冷たく光る。

インジュン「自分の策に自ら嵌ったのよ。私はやっと秘密の人脈トッコ・マテと安心して付き合えるんだから。有難くて涙が出るわね」

インジュンの目に涙が滲んだ。

+-+-+-+

インジュンと話した会議室から出てくると、マテの携帯にメールが入った。
ミョミからだ。

「彼氏なら、撮影スタッフに飲み物でもサービスするべきじゃない?」


#それ、普通に恋人からのメールを読んだ顔だから^^↑


マテはニッコリ微笑むと、歩き出す。

+-+-+-+

「いただきます」飲み物を抱えた女性スタッフの挨拶に「えぇ」と会釈すると、マテは隣に座るミョミに話しかけた。

マテ「こんなのナシですよ。分かってます?」
ミョミ「?」
マテ「こんなことしてるうちに、ホントに付き合うことになるんです。そうなれば後には戻れませんからね」

ミョミは俯いて笑った。

そこへ、コツコツとヒールの音がゆっくり響く。
「?」マテが見上げると、そこへやって来たのはミョミのマネージャーだ。
彼女はマテを睨みつけておいて、ミョミの隣に腰掛けると、ミ資料を出した。

マネ「(優しく)そろそろ返事をちょうだい。単発だからやっておきましょ?」
ミョミ「(資料を押し戻す)イヤだってば」
マネ「どうして~?みんなやりたがって大変なんだから」
ミョミ「それなら誰かにやらせればいいでしょ」
マネ「理由を言ってご覧なさいよ。どうしてやりたくないの?」

黙って話を聞いていたマテも、気になってミョミを見る。

ミョミ「私、もうこういうのはやりたくないの。…。ラブリーなのがいいわ。ずっとスポーツウェアや、そうじゃなきゃ携帯電話。男性的なものばかりだから、イメージが固まっちゃうのよ」
マネ「…。(なだめるように)もう一晩だけ考えてみましょうね」
ミョミ「…。」

マネージャーの視線がマテに戻った。
彼女はもう一度睨みつけると、咳払いをし、去っていく。

ミョミ「…。」
マテ「やればいいのに。いい感じだと思うけど」
ミョミ「もう一度言わせたいの?」
マテ「登山服を着るのは登山をするときだけかな?洗練されたコンセプトをちゃんと選んで着れば、あなたによく似合うと思うけど?最近はアウドドアウェアを普段着にすることも多いでしょ?」
ミョミ「…。」



マテのアドバイスには答えず、ミョミは飲み物を口に運ぶ。

+-+-+-+

今日のミョミと花社長の様子は、またすぐにネットを駆け巡った。

『ミョミの男、撮影所で飲み物セレモニー』

いまや、検索ワードランキングの4位までをミョミとマテの関連ワードが独占していた。
「ミョミ 花社長 トッコ・マテ」「花美男 靴下工場 社長」「ミョミ 初スキャンダル」「トッコ・マテ スムージー」


「すみません」車の中でマテが口を開いた。

ミョミ「?」
マテ「俺のせいで煩わしい思いを…」
ミョミ「…。」
マテ「どうにかしてキム・インジュンという蜘蛛の巣から逃れたかったんです」
ミョミ「私も気になってることがあるの」
マテ「?」
ミョミ「どうしてあの人の蜘蛛の巣にかかったの?」
マテ「…。今やってる事業が危機に陥ったんですよ。その危機を楽に乗り越えようと…無茶な手を使ったんです」
ミョミ「事業を成功させようとして、キム・インジュンに引っ掛かったのね」
マテ「…。
ミョミ「野望が大きければ、墓穴を掘ることもあるわ。どうしてそこまで無理をしてでも成功したいの?」
マテ「成功して、亡くなった母に恩返しをしたかったんです」
ミョミ「…。」
マテ「俺、片親で育ちました」
ミョミ「!」



マテ「俺を産んでから、母は生涯苦労ばかりで亡くなりました。孤独に堪えるのも大変だったはずなのに、父親を知らずに育った俺が傷つきはしないか戦々恐々としてたみたいだ。俺は何とも思ってなかったのに…」
ミョミ「…。」
マテ「母さんさえそばにいてくれれば幸せだったのに、母さんには分からなかったのか、俺の心配ばかりして。父親がいないからどうだってんだ?母さんと俺さえ幸せならそれでいいのに」
ミョミ「…。」
マテ「母は少し前に癌でなくなりました。捨てられて、一人寂しく」
ミョミ「…。」
マテ「成功して、母に恩返ししたいんです。その野望が大きすぎるという言うなら…そうなんでしょうね」
ミョミ「…。」

+-+-+-+

「店の主人に会って契約書を書かなきゃ」
ボトンの母にダビデが説明しながら門を入ってくる。

母「あそこはスンデクク屋にピッタリだよ!」

どうやらスンデクク屋開店の話が現実化しているようだ。
その後に、ボトンと弟が続いた。

ボトン「? オッパ!」

目の前のアウトドアチェアに、マテが一人座っていた。
彼女が駆け寄ると、マテはニッコリ笑って立ち上がる。

ダビデ「ここにどうして?」
母「私が呼んだんですよ!」

ボトンの母が笑いながらマテの元へやってくる。

ボトン「どうやって入ったんですか?」
マテ「トクセンがパスワード教えてくれた。(母にニッコリ)おばさん、お久しぶりです♪」
母「そうだよー!けど、あんた肌が荒れてるんじゃないのかい?ご飯はちゃんと食べてるの?」
マテ「えぇ。ところでおばさん!また美人になって~♪」
母「もぉ~、(マテをバシッ)前からだよ♥」

ボトンの母は嬉しそうに笑った。

母「何日か前に、あんたのお母さんの納骨堂に行って来たんだ。あんたに温かいご飯の一杯も食べさせてないってね、怒られちゃったよ、あんたの母さんに。それで呼んだんだ。ご飯食べようってね」
マテ「^^」

母は後ろにいるダビデを振り返る。

母「人様の家なのに自分のお客さん呼んじゃったねぇ。大目に見てくださいよ」
ダビデ「えぇ。何をおっしゃいますか」

「そろそろ食べちゃダメ?」弟が両手にぶら下げた包みを上に掲げてみせた。

弟「腹減って痩せちまったじゃないかー!」
マテ「おぉー、テシク、デカくなったな。(空手の型を見せ)兄貴と対決しなきゃな」
弟「兄貴、心の準備しろよ。超ビックリするぞ!」

楽しそうな笑い声が響いた。

+-+-+-+

「乾杯!」

皆でテーブルを囲むと、さっそく食事が始まった。
マテがビールをぐいっと飲み、満足気に息をつく。

弟「マテ兄、代理運転呼ばなきゃな」
マテ「いや、呼ぶな」
ボトン「ダメよ、オッパ!ビール飲んだでしょ。事故ったら大変」
マテ「泊まってくから」
ダビデ「!!!」

驚いて目を丸くしたダビデをチラリと一瞥すると、マテは言葉を続けた。

マテ「ボトン会社の研修合宿、やってみようぜ」
ボトン「あはっ♥いいアイディア」
ダビデ「!!!」
ボトン「私の部屋に泊まります?」
ダビデ「!!!」

前のめりな娘を母が思い切り引き戻した。

ボトン「…。」
マテ「トクセンの部屋はどこだ?」
ダビデ「あぁ、トクセンさん、今日帰らないって言ってたけど」
マテ「…。」
ダビデ「トクセンさん、出掛けるときはいつも部屋の鍵を締めて行くから、入れないんだよな…」
マテ「ふーん、じゃあ貴賓室は?」

ダビデは何も言わず、後ろのテントを指した。

マテ「(振り返り)…。またぁ~、冗談を」
ダビデ「(あそこだってば)」
マテ「…。」

マテはもう一度、ゆっくりと後ろを振り返る。

+-+-+-+

ピョンピョンと寝袋に入ると、マテとダビデはそのまま寝転がった。

マテ「思ったよりは快適だな」
ダビデ「寒ければ言ってください。火を焚きますから」

二人は並んでテントの天井を見上げる。

ダビデ「もともとこういうのは逞しい男がするもんだ。ヤワそうに見えるけど大丈夫なのかどうか…」
マテ「マインドはキリマンジャロのパンサーですよ」

ダビデはニヤリと笑うと目を閉じた。
マテはダビデの様子を窺うと、口を開く。

マテ「家に幽霊でもいるのか?何で庭で暮らすんです?」
ダビデ「…。」
マテ「不便じゃないのか?」
ダビデ「トッコ社長」
マテ「?」
ダビデ「少し前にお母さんが亡くなったと聞きました」
マテ「…。」
ダビデ「お母さんのいない家に帰るって…どんな気分ですか?」
マテ「…思い出してばかりですよ」
ダビデ「(頷く)だからです。思い出してばかりで」
マテ「…お母さん、亡くなったんですか?」
ダビデ「亡くならないと思い出さないわけじゃないでしょう。まぁ、そういうことです」
マテ「…。」



マテはじっとダビデの横顔を見つめると、少し頭を起こした。

マテ「あの…チーム長」
ダビデ「はい?」
マテ「…加湿器ないかな?」
ダビデ「(ガクッ)」
マテ「乾燥しすぎだよ。鼻炎なのに(グスン)」

「あ゛ー」ダビデは唸りながらマテに背を向ける。

ダビデ「全く…。キャラが一貫してるな」

マテもムッとして背を向ける。
背中越しに、二人は穏やかに笑った。

+-+-+-+

翌日、ティッシュ片手にデスクに向かうマテの携帯が鳴る。
インジュンから音声ファイルが送られてきたのだ。
そこからは、聞き覚えのある言葉が聞こえてくる。

「この世には隠しておきたい人脈もあります。周りのどんな人物とも繋げなくない、特別な人脈。隠したい人脈」

マテ「!」

「恋人になってさしあげます。その代わり残りの時間で3億売ってください」音声が途切れると、マテは愕然とうなだれた。

そこへダビデが慌てた様子で入ってくる。

ダビデ「大変です」
マテ「どうしました?」
ダビデ「この間来たヒューストンのバイヤーから連絡が入ったんですが、今回の契約はキャンセルすると」
マテ「!」
ダビデ「そのときは上手く行っていたのに、突然何が起きたのか…」
マテ「…。」
ダビデ「もう一度契約書を確認してみたんですが、先方に不利になるような項目はないんです」
マテ「…。」

マテの電話が鳴る。
キム・インジュンだ。

インジュン(電話)「ヒューストンのバイヤーの件で大変なはずだけど、どうするつもり?」
マテ「…。」
インジュン「そうだわ、録音ファイルは無事届いたわよね?」

「本当にいい声だわ、あなた…」

インジュンの囁き声が、マテの耳元で響いた。

インジュン「あぁ、もう一つ。中国の工場、もう稼働しているのよね。予想してみる?その中国の工場、私に止められるか、止められないか」
マテ「約束が違うじゃないですか」
インジュン「あら、約束が違うのはあなたでしょう?」
マテ「…。」
インジュン「頭を悩ませることはないわ。最初に戻ればいいのよ」

「さぁ」インジュンの声が鋭くなる。

インジュン「二人だけの密かな人脈、築いてみる?」
マテ「…。」

愕然と電話を持つ手を下ろすと、「大丈夫ですか?」とダビデが思わず声を掛けた。

マテ「…チェチーム長」
ダビデ「はい」
マテ「もし、もし全てストップしたら…どうなるでしょう」
ダビデ「…。」
マテ「(思い直し)何でもありません。後でまた相談しましょう。仕事を続けてください」

只ならぬマテの様子に、ダビデは頷くのが精一杯だ。
彼は気になりながらも、社長室を後にした。

+-+-+-+

「それで?キム・インジュンの掌中にまた戻るつもり?」

電話の向こうでミョミが静かに話す。

マテ(電話)「この状況ではどうしようもないんです」
ミョミ(電話)「駄目よ。待ってて」
マテ「…。」
ミョミ「今はそのタイミングじゃない。私を信じて待つのよ、マテ」
マテ「自分の声が晒されるのは…本当に怖いんです。俺のせいであなたまで笑い者になるのも心配だ」

「だけど、もっと重要なのは…」マテはブラインド越しに社内を見つめる。

マテ「この会社に青春を捧げる人たちがいるんです。立派な大企業を辞めてまでここへ来た人もいる。今俺がやらなきゃならないのは、彼らを守ることです」
ミョミ「だからこそ、あなたに待っていてほしいの」
マテ「…。」

+-+-+-+

「さっき、工場が全停止したらどうなるかって、そうお聞きになりましたよね」

洗面所で一緒になったダビデが、鏡越しに言った。

マテ「…。」
ダビデ「トッコ社長に初めて会ったとき、事業者登録証も持ってなかったんですよ」
マテ「…。」
ダビデ「最初からまたやり直せばいいでしょ?」

ダビデは何でもないように歯を磨き始めた。
…と、マテは鏡の中の自分をじっと見つめ、ジャケットの裾をバサッと翻し、襟を正す。
二度目のHiromi Go♪!

マテ「えぇ。俺はトッコ・マテですから」
ダビデ「!」
マテ「…。」

マテがカッコつけて出て行くと、その後姿にダビデが笑った。

+-+-+-+

社内にはどんよりした空気が広がっていた。


#可愛すぎる マジで ほんまに

トクセン「チェク社長がさ、別れのプレゼントだって、兄貴に家やら車やら…。最近は離婚の慰謝料だってそんなものくれないぞ」
ボトン「…。」
トクセン「プロポーズのこと、聞いたか?ビルにハートマーク灯したってさ。それってどういう意味だと思う?そのビルはあなたものだってことだろ。マテ兄相手ならそのくらいのスケールにならなきゃな」
ボトン「…。」
トクセン「まぁ、ビルを買うのが難しけりゃ、遊覧船でも浮かべろよ」
ボトン「ふっ(嘲笑)そんなお金どこにあんのよ」
トクセン「お前はな、愛情じゃなくて財力を伸ばすべきだ」
ボトン「(シュン)」

…とそのとき、ハッと目を見開いたボトンは、突然立ち上がった。

トクセン「?」
ボトン「浮かぶのは遊覧船だけ?電波飛ばせばいいのよ!」

+-+-+-+

ミョミは衣装部屋でドレスに着替えていた。

スタッフ「今回の優秀女優賞の候補たちは粒ぞろいで、誰に決まるか予想できないんですって?」
ミョミ「…。」
スタッフ「ひょっとして連絡なかった?前もって連絡くれるって言うじゃない」

ミョミは無言のまま、緊張を募らせていた。

+-+-+-+

インジュンが再びキム記者に連絡を入れる。

インジュン(電話)「この間の独占スクープ、なかなかだったでしょう?今回はもっと大きなネタなんだけど、上手く出してくださいね」

「とりあえず会いましょう」そう言ってインジュンは電話を切る。

インジュン「どうする?ミョミ。トッコ・マテの色男ごっこのお陰で、あなたのシンデレラごっこも終わることになっちゃったわ。恨まないでね。全部自業自得よ」

+-+-+-+

ボトンはノートを一枚切り取り、一生懸命メッセージをしたためていた。

「オッパ、震える心で… 」

ふと顔を上げると、目の前に飾ってあるオッパ人形を手に取る。



ボトン「オッパ、震える心で告白します。私ね…。はぁ、ずっとずっと前から…、つまり…オッパに初めて会ったあの日から、ふぅ…オッパを…」

そこへ「ボトンさーん」とダビデが入ってくる。
手にはコーヒーを二つ。

ダビデ「マキアート飲みましょうよ^^」
ボトン「はっ^^ キャラメルマキアート?OK♪」
ダビデ「^^」
ボトン「ちょっと待って。これ、すぐ終わらせちゃいますから」
ダビデ「何ですか?」

ダビデがボトンの手元を覗きこんだ。

ボトン「今日はすごく歴史的な日ですよ」
ダビデ「?」
ボトン「私、今日告白しようと思って♪」
ダビデ「!」
ボトン「ラジオに応募したんですよ。生放送中に告白するつもりなんです」
ダビデ「…。」
ボトン「はぁ…。めちゃくちゃ緊張するなぁ~」
ダビデ「…。」
ボトン「あっ!この文章、ちょっと見てくれますか?これこれ」

ボトンが無邪気にメッセージを差し出した。

ダビデ「…。これ、ただのマキアートなんです。他のがいいんですよね。キャラメルマキアートに交換してきますから」

うつろな表情で、ダビデはボトンと目も合わせずにまた外へ出て行く。

ボトン「?」

あっという間に気を取り直すと、ボトンは気合を入れて電話を手にとった。

ボトン(電話)「社長オッパ、どこです?あぁ~、帰るところなんですね。えっと…、帰り道が混んでたら…ラジオでも聴くといいですよ。超イケてる曲をリクエストしておいたんです。89.1!89.1!絶対聴いてくださいね、オッパ!絶対ですよ!」

+-+-+-+

「突然ラジオ?」

呆れ顔で車を走らせながら、マテはカーステレオのスイッチを入れた。

+-+-+-+

第21回大韓民国文化芸能大賞が進行していた。
一角に陣取った報道陣たちがカメラを構え、受賞者の発表を待っている。

司会者「さぁ、第21回大韓民国文化芸能大賞、大賞の発表です」

司会者が手元のカードに視線を落とした。

司会者「おめでとうございます。ミョミ!」

テーブル席に座っていたミョミに、会場中の視線が集中した。
拍手とともに、ステージのスクリーンにミョミの姿が映し出される。
ミョミはゆっくりと立ち上がり、ステージへと歩き出した。

司会者「ミョミさんは今年の映画”太陽の島”で、その美貌とイキイキとしたキャラクターで、自分だけの独特な魅力を発揮し、全世界の観客から愛されました」

ミョミがトロフィーと花束を受け取ると、一層大きな拍手が湧いた。
彼女がカメラの前に立つ。

ミョミ「…。」

+-+-+-+

マテの車の中では、ボトンに言われたとおり、89.1局のラジオ放送が流れていた。

DJ(ラジオ)「この後、今日応募してくださった方と電話をつなぎますが、この方はとても長い間片想いをされているようです。今日ついに告白するそうですが…いやぁ、僕のほうが震えますね」

信号待ちでふと上を見上げたマテは、目の前のスクリーンに映る授賞式の模様に気がついた。

マテ「!」

DJ(ラジオ)「どうかこの放送でハッピーエンドを迎えますように。DJとして一番嬉しい事ですから」

マテはハンドルを切り、スクリーンがよく見える場所に車を停めた。

DJ(ラジオ)「もちろん上手くいけばってことです。上手くいかなきゃいけないんだけど…」

+-+-+-+

カフェに入ってきたインジュンが奥まったスペースを覗くと、キム記者はすでに到着して彼女を待っていた。
彼女が席に着くなり、キム記者は怪訝な顔で口を開く。

キム記者「あれは事実ですか?」
インジュン「?」
キム記者「ただの噂なら記事にはできない」
インジュン「…。」
キム記者「本当に事実なんですか?」
インジュン「今回はもっと大きなネタだと言ったでしょう?」
キム記者「…。」
インジュン「私がデマを流すような人間じゃないってご存知のくせに」
キム記者「はぁ、こりゃ参ったな」

キム記者が呆れたように笑った。

キム記者「ミョミさんは全く…」

+-+-+-+

ボトンはガチガチに緊張して電話を握りしめていた。



ボトン(電話)「今日私は…勇気を出して…10年間育ててきた私の…愛を伝えます」

+-+-+-+

ミョミの受賞コメントが始まった。


「トッコ、マテさん」

思わぬ名前がマイクを通じて響く。

ミョミ「…あなたを愛しています」

二人の司会者が驚いて顔を見合わせた。
その言葉は、即座に字幕となり、マテが見ているスクリーンに映し出された。

マテ「!!!」



ミョミ「あなたのお陰で勇気を出し、今日私は告白します」

会場がざわめく。

ミョミ「皆さん。私には10年前に産んだ息子がいます」

その瞬間、会場に衝撃が走った。

+-+-+-+

「何だって?」キム記者に電話で連絡が入る。

キム記者「(インジュンに)今、ミョミが自分の口で告白したそうですよ。息子がいるとね」
インジュン「!!!」

+-+-+-+

マテもまた、車の中で愕然としていた。

マテ「キム・インジュンに握られていた弱点はこれだったのか。それで…レズビアンとして生きてきたんだな。…あなたのいう”タイミング”ってやつ、それがこんな強力な武器になるとは」

+-+-+-+

「今日…私の告白を受け入れてください」

ボトンは電話(ラジオ放送)に向かい、慎重に言葉を進めた。

ボトン「マテオッパ、私ね、私が…オッパをすごく…」

そのとき、ドアを開けて入ってきた人物が、急に電話を取り上げる。

ボトン「?!」

どうしようもなく、咄嗟に奪い取った携帯を握りしめ、ダビデがそこに立っていた。
電話からは「もしもし?キム・ボトンさん?」とDJの声が漏れ聞こえる。

ボトン「チーム長?!」

「電波が悪いようなので、ここで一旦曲に…」とDLが繋いだ。

ボトン「…。」
ダビデ「こんなこと…しないでください」
ボトン「チーム長、返してください!私これを…」
ダビデ「やめてください!!!」
ボトン「!」



携帯を取り戻そうとしたボトンの手首を、ダビデが掴んだ。

ダビデ「…。」
ボトン「…。」
ダビデ「僕…ムシャクシャして堪らないんです」
ボトン「…。」
ダビデ「ボトンさん…」



+-+-+-+

ここでエンディングです。

最後、4箇所で話が同時進行しているので、文章じゃ分かりづらいですね。
あはは^^;

原作では最後のこの場面、ダビデはボトンの告白を阻止しにやって来たりはしません。
マテを愛するボトンが傷つくのではないかと、心配で悶々としているのは同じですが。
この辺りも、うまくダビデをここに放り込んでエンディングにつないだなぁと関心しつつ^^

もう一つ、原作では「母子家庭で育ち、母を亡くした」という話を、マテは計略的にミョミに話しています。
レズビアン相手に、色仕掛けは効かない。ならば誰でも持っているであろう母性をダメ元で揺さぶろうとしたんですが、それに心を動かされたミョミがマテに協力することになるんです。
ミョミと母性はイメージがかけ離れていますが、今日のエンディングにも出てきたミョミの告白で、マテは彼女の秘密を知らずしてピッタリな手を使っていたことが分かりますね。

さて、お互い問題を抱えていたマテとミョミ。
ミョミが「待ってくれ」と言っていたのは、この授賞式のタイミングでした。
インジュンに握られていた弱点を自ら告白したミョミは、それでマテの問題をも解決することが出来るのでしょうか。

次回をお楽しみに~♪






6 件のコメント:

  1. ありがとうございます(*´∀`)
    とても とても 気になる展開になってきました!

    途中の4コマ漫画のような ボトンちゃん♪
    可愛い(*´∀`)
    目をぱちぱち ぱちぱち
    ケチャップが 映し出された時は
    吹いちゃいましたww

    漫画の世界から抜け出した
    マテ ボトン ダビデ
    役者によって息を吹き込まれく

    後半 ほんとに楽しみです♪

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  2. まゆみjks2013年12月16日 19:41

    ありがとうございます。こんなに早いペースで日本語訳が読めるなんて
    なんと幸せなこと!!!
    展開の速いドラマで、俳優の個性によって息が吹き込まれてゆく様が
    yujinaさんのおかげでわかります。
    うーん!!視聴率なんて!!!ちっ!!ナンセンス
    これからが楽しみ~

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  3. こんばんは☆彡
    ミョミがたまに電話の相手が誰かわからない時があったけど、あれは息子だったのかな~?予想外の展開でビックリです(@_@)
    次回が楽しみですo(^-^)oワクワク
    大変な作業と思いますが、よろしくお願いします(^.^/)))~~~bye!!

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  4. ありがとうございます。

    ユジナさんの訳を場面を思い出しながら読んでいます。
    表情の意味もわかってとても面白いですね。
    いつもありがとうございます。
    次もよろしくお願いします。

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  5. 早々の訳ありがとうございます。
    とっても面白い展開になってきましたね。
    インジュンをなぜ避けるのか全然わかりませんでしたがユジナさんの解説で納得!
    字幕では理解できなかったろうなぁと思います。
    原作のお話やユジナさんの解説が内容を理解するのにとても助かっています。
    このあとどんな女優さんが出てくるのでしょうか。本当に楽しみです。
    これからもよろしくお願いします。

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  6. yujinaさん、今回も素敵な小説をお届けくださって
    ありがとうごじゃいます(^-^)
    二度目のHiromi Go♪
    … これ、公式DVDの翻訳に入れて欲しいなぁ♡

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記事を読んでくださってありがとうごございます。
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