キム・インジュンの蜘蛛の巣からミョミと共に逃れ、マテは次の段階へ上がれるのでしょうか?
楽しみ楽しみ♪
#ミョミの落ち着いた低音ボイスが好き♥
+-+-+-+
「トッコ・マテさん、あなたを愛しています」
信号待ちで停まった車から、ちょうど目の前のスクリーンを見上げたマテは、ふいに目に飛び込んできたミョミの言葉に衝撃を受けた。
手元のカーステレオからは、ラジオ番組に応募したボトンも声が流れている。
ボトン(ラジオ)「マテオッパ…」
+-+-+-+
「私、オッパのこと、とっても…」
ラジオ放送に繋がった電話に向かって、気持ちを告げようとしたその瞬間、その電話を奪い取ったのはダビデっだった。
ボトン「!」
ダビデ「…。」
ボトン「チーム長?!」
ダビデ「こんなこと…しないでください」
「もしもし?キム・ボトンさん?」DJの声が聴こえる。
ダビデ「僕、ムシャクシャしてたまらないんです」
ボトン「やっとのことでラジオの生放送に出られたのに!」
ダビデは彼女の携帯電話をそっとデスクの上に置いた。
ダビデ「もうじきポータルサイトが大騒ぎになるはずです」
ボトン「?」
ダビデはそのまま会社を出て行った。
ボトン「???」
ボトンは携帯を手に取り、すぐにリアルタイムホットワードをチェックする。
『1位ミョミ告白』
ボトンは気になる一行に見入った。
+-+-+-+
コーヒーカップを持つインジュンの手が小刻みに震えていた。
キム記者「こういうことだったのか。何でミョミが所長さんの言うことを聞くのか不思議だったんだ」
インジュン「…。」
キム記者「所長さんはミョミの致命的な弱点をすでに知っていたのか。なるほどね」
インジュン「…。」
キム記者「田舎の精肉店のオープン記念にミョミがサイン会をした件、所長さんの親戚の店らしいけど、ホントなんです?」
インジュン「えっ?!いえ…何のことだか」
気が動転し、インジュンは言葉を濁すので精一杯だ。
+-+-+-+
一人になった会社でボトンはPC画面を眺めていた。
ボトン「だからチーム長は私にやめろって言ったんだ…」
画面の中には、ミョミが記念すべき受賞の場で、大きな告白をした記事が出ている。
ボトン「私がピエロになるって分かりきってるから。はぁ、そんなことも知らないで…。どうしよう、悪いことしちゃった」
そこへ、ドアが開く音にボトンはハッとして顔を上げた。
入ってきたのはマテだ。
マテは険しい表情で彼女の前に立った。
ボトン「オッパがここに…どうして?」
マテ「お前、何つまらん告白なんかしてんだよ!」
ボトン「…聴いたんですか?」
マテ「あのな、俺にはミョミみたいな女が告白したんだ。お前が俺とどうにかなれるとでも思ってんのか?あの女がどんなにすごい人間なのか、お前だって分かってんだろ」
ボトン「そんなの…私の自由じゃないですか」
マテ「何で告白なんかしてイライラさせんだよ!」
ボトン「どうしてイライラするんですか?」
マテ「…何だって?」
ボトン「私がオッパに言い寄るのはいつものことでしょう?」
マテ「…。」
ボトン「ミョミに告白されたんならミョミのところに行けばいいのに…どうしてここに?」
ボトンはすねたように目をそらした。
マテ「…。重要書類を取りに来た」
ボトン「オッパが書類なんて。毎日車のキーだけブラブラさせて出掛けるくせに」
マテ「お前…お前はよく知らないようだけどな」
ボトン「…。」
マテ「…事業をしてる経営者の立場なら重要書類だってあるもんだ」
キョロキョロすると、マテは目の前にとりあえず見つかった書類をバンと叩いた。
マテ「見ろよ、これだ。ここにあったな、重要書類」
ボトン「…。それ、いらない紙を溜めてあったんだけど」
マテ「…。」
「あー、首が凝った」マテは誤魔化すように首をおさえながら、会社を出て行った。
ボトン「はぁ…」
+-+-+-+
会社を出たマテもまた、イライラして溜め息をつく。
マテ「何でここに来たんだ?何やってんだよ?!…それにしても、ミョミ、大丈夫なのか?」
彼はポケットの電話を探った。
+-+-+-+
ダビデは力なく家の門を開けた。
灯りのついていないボトンの部屋を見上げると、思わず深い溜息が出る。
彼は庭のテントに近づくと、入口のファスナーを開けた。
と、中に小さくなって座り込んでいたのは…ボトン。
ダビデ「わっ、ビックリした!」
ボトン「^^」
ダビデ「ボトンさん!」
ボトン「外で待ってんだけど、あんまり寒くて中に入ったんです」
ダビデ「…。」
ボトン「いない間に許可もなしに入って(正座してペコリ)すみません」
ダビデ「ボトンさんの部屋で待ってればいいのに!寒いでしょう?」
ダビデはボトンの座っている床を触り、温度を確かめた。
そうやってボトンの心配をするダビデの顔を、ボトンはじっと見上げる。
ダビデ「ほら、鼻が赤くなってるじゃないですか」
ボトン「ありがとう」
思いがけない言葉に、ダビデは驚いて口をつぐんだ。
ダビデ「…。」
ボトン「それに、ごめんなさい」
うつむくダビデに、ボトンが続けた。
ボトン「私のためを思ってのことだったのに、私、文句言ったりしちゃって」
ダビデ「…。いや、僕はただ…」
ボトン「私がピエロになるんじゃないかって、すごくムシャクシャしたんですか?」
ダビデ「…。」
まっすぐに自分を見つめるボトンの大きな瞳に、ダビデの目は穏やかさを取り戻していった。
「はぁ」と息をついた彼の目には、キラリとかすかに涙が光る。
ダビデ「えぇ、ムシャクシャしましたよ」
ボトン「…。」
ちょっと困ったような彼女の顔にダビデが笑うと、ボトンもつられて笑った。
+-+-+-+
インジュンはミョミの前でひざまずいた。
インジュン「許して」
「立ってください」ミョミはインジュンから視線をそらした。
インジュン「あなたを利用してきたことが知られたら、私、この業界ではおしまいよ。助けてちょうだい、ミョミ!」
ミョミ「…。」
インジュン「そうしたら私…もうミョミとマテには手を出さないわ。本当よ」
ミョミ「…。」
ひざまずいたまま俯くインジュンを、ミョミはじっと見つめた。
+-+-+-+
ミョミは撮影現場に訪ねてきたキム記者の取材に応じていた。
彼が差し出した録音機に向かい、ミョミは話し始める。
ミョミ「高校を卒業してすぐ、愛する人ができたんです。その頃はまぁ…その愛が全てだと思って。そのとき、息子を産んだんです。そして、子どもの父親は消えてしまいました。両親に子どもを預けて、江南のブティックで働きました。そのときキム・インジュン所長に会ったんですけど、いい感じだから演技をしてみたらどうかって、マネージメント事務所を紹介してくれたんです」
キム記者「そのとき、キム・インジュン所長もミョミさんに息子がいると知ってたんですか?」
ミョミはほんの少し沈黙すると、静かに微笑んだ。
ミョミ「いいえ」
キム記者「?」
ミョミ「私は隠していたんですが、気づいていながらこれまで黙っていてくれたのがキム・インジュン所長なんです」
キム記者「…。」
+-+-+-+
ボトンとダビデは庭に大きなクリスマスツリーを飾り終え、満足気に笑った。
ボトン「ツリーを飾ったら、ホントにクリスマス気分ですね」
ダビデ「ボトンさんは毎年ツリーを飾ってるんですか?」
ボトン「いえ、マテオッパの家でやってたんです」
ダビデ「(頷く)」
ボトン「うちのお母さんはこういうの興味なくて」
「ロマンがないんですよ~」とボトンはテーブルへ向かった。
彼女が椅子にどっかりと腰を下ろすと、ダビデは少し躊躇ってから声を掛けた。
ダビデ「あの、ボトンさん」
ボトン「はい?」
彼はテーブルに置いてあったポインセチアの花を手に取る。
ダビデ「トッコ社長の…どこがそんなに好きなんですか?」
「うーん」考える彼女を横目で見ながら、彼は何気なく花をいじった。
ボトン「ロマンがなくても私はお母さんが好き。ふふっ。子どもみたいに毎日騒いでばかりでも、私は弟のテシクが好きだし。それって必ずしも理由がいるわけじゃないでしょう?」
ダビデ「…。」
ボトン「マテオッパもそんな気がする」
ダビデ「…。」
ボトンはふっと笑い、目を細めた。
ボトン「カルビが大好きなベジタリアンのオッパが、うちの近所に引っ越してきたあの日から…」
ダビデ「…。」
ボトン「私はただ…お母さんや弟みたいに、マテオッパのこと、ただそんなふうに好きなんです」
独り言のように話すと、ボトンはダビデを見上げて笑う。
ダビデ「トッコ社長がずっと他の方ばかり見てても、ただそんなふうに…好きなんですか?」
ボトン「うーん。ムシャクシャしますよ^^」
ダビデ「…。」
ボトン「けど仕方ない。マテオッパなんだもん」
「あぁ!」とボトンは思い出したように声を上げた。
ボトン「チーム長はどうしてあのとき、私のことで困ってたんですか?私、何か変なことしちゃったかな」
ダビデはボトンの目線に合わせて不意にしゃがみこむと、肩に手を置いた。
ダビデ「ボトンさん」
ボトン「?」
ダビデ「クリスマスの日、予定あります?」
ボトン「さぁ、特にありませんけど」
ダビデ「その日、公演があるんです。この前話した先輩たちと一緒に」
ボトン「^^」
ダビデ「見に来てください。見に来てくれたら、話しますから。どうして困ってたのか」
ボトン「もぉ~。今話してほしいな。私、気になることがあったら眠れないのに」
#爆睡するくせに
ダビデ「絶対来ますよね?」
「えぇ!」ボトンは立ち上がった。
ボトン「たいしてやることもないし。行きますよ」
ボトンがツリーに戻ると、ダビデも立ち上がり、彼女に続いた。
ダビデ「お母さんのお店にもツリー飾らなきゃね」
+-+-+-+
マテはマンションの窓辺に飾ったツリーをソファーから眺めていた。
「よし!つけますよ!」飾り付けていたボトンが声を掛けると、ライトを灯す。
星のオーナメントが一斉に青い光を放った。
「きゃー、綺麗!」彼女は彼のそばまで下がり、ツリーを眺める。
マテ「…ダサいな」
ボトン「どうして?おばさんはすごく綺麗だって言ってたのに」
マテ「母さんとツリーも飾ったのか?」
ボトン「もちろんですよぉ。おばさんとツリー飾ったの、思い出しちゃうな」
マテ「…。」
#こんなカワエエ顔をオッパに見せずにツリーに向けるとは…
「あ!」とボトンが振り返る。
ボトン「オッパ、おばさんの写真ないんですか?オッパの写真とおばさんの写真、ツリーに飾ろうよ。まぁ、お望みなら私の写真も♥」
マテ「もっとダサくなるぞ」
ボトン「綺麗だと思うけどな」
箱を開けると、マテはその中から母の写真を取り出した。
ボトン「おばさん、ホントに美人だなぁ」
マテ「俺の顔見りゃ分かんだろ。美人だから美男を産んだんだ」
ボトン「あははっ。そうだった」
ボトンは箱の中を覗くと、古い懐中時計が入っているのに気づき、思わず手にとった。
ボトン「オッパ、これ何ですか?うわっ、すごく綺麗~!」
マテ「かなり昔のやつだ。古いのに何が綺麗なんだよ」
ボトン「どうして?すごく綺麗じゃないですか」
ボトンは懐中時計を胸元に握りしめる。
ボトン「オッパ、これもらっちゃダメですか?私もおばさんの遺品、一つ持っていたいんだけど」
マテ「それ、壊れてて動かないぞ」
ボトン「それならくださいよ。ねっ?」
#今日も可愛すぎて泣けるレベル。
マテ「はぁ、ホント変わった趣味だな。どこがいいんだか。大事にしろよ。俺が小さいころ遊んでたらしい。覚えてないけどな」
マテの素っ気ない言葉に、ボトンは顔を輝かせた。
ボトン「えぇ!ありがとう、オッパ」
マテ「そこらに仕舞いこむんじゃないぞ。抜き打ちチェックするからな」
ボトン「はーい♪」
+-+-+-+
ナ・ホンランは静かな自室で本を広げていた。
テーブルの上には…古い懐中時計。
+-+-+-+
ボトン会社を訪ねてきたミョミは、不思議そうに会社内をキョロキョロと見渡した。
ミョミ「社員の姿が見えないわね」
マテ「外回りに出てるんです。新入社員も募集してるし」
ミョミ「(頷く)」
「それはそうと」とマテはミョミに笑いかけた。
マテ「また一つ新しいトレンドを誕生させたんだな」
ミョミ「何?」
マテ「”真摯になることこそ新しいトレンド” すっかり告白ブームになってるでしょう?」
ミョミは穏やかに微笑んだ。
ミョミ「トッコ・マテは何か告白することないの?」
マテ「…。」
「俺、実は…」彼が口にすると、ミョミが微かに姿勢を正した。
マテ「カンタピア星から来たんです。バイオリンに乗って」
ミョミ「(笑)」
※バイオリンに乗って飛ぶ、カンタピア星出身のアニメのキャラクターが韓国では人気のようです。
ミョミが吹き出すと、マテも楽しそうに笑った。
ミョミ「私も告白することがあるわ。実は、あのアウトドアウェアのモデル、やりたくなったの」
マテ「!」
ミョミ「今度はマテが私を助けてくれる番よ。モデルが出来るように」
マテ「俺が?」
ミョミ「OKのサインをしに行ってほしいの。アウトドアウェア会社の社長、マテが受け持って」
マテ「いや、そんな大事なことを何で俺に?」
ミョミ「謙遜モード?マテらしくもない」
マテ「…。」
ミョミ「お掃除靴下も大ヒットさせた社長には、アウトドアウェアなんて朝飯前でしょ?」
ミョミの意図が分からず、マテは呆れたように笑う。
マテ「あなたに会ってから、エレベーターで急速に上がっていく感じがしますよ」
微笑むと、ミョミは一呼吸置いた。
ミョミ「ビジネスの話はそれくらいにして。スターに告白された感想は?」
マテ「…。うーん」
ミョミ「…。」
マテ「主演女優賞を貰うだけのことはある」
ミョミ「…。」
マテ「あのとき、本当に告白されたのかと思ったんですから。それにね、心臓もドキドキしたんですから」
ミョミ「本当の告白だったらどうする?」
マテ「どうするって~!(ニッコリ)付き合ってあげなきゃね♥」
ミョミ「(笑)何?付き合ってあげる?」
「あんまり言ったらデート申し込むよ」マテはミョミを指さして笑う。
そこへ扉が開き、外回り社員2名が愉しげに笑いながら帰ってきた。
「あ、ミョミだっ」思わず口に出してしまったボトンは、慌てて口を押さえる。
ミョミはボトンの顔を覗きこんだ。
ミョミ「どこかで会いませんでした?」
ボトン「…。さぁ、分かりませんけど」
ダビデが「あそこで…」と言いかけると、ボトンは彼を制した。
マテはボトンの腰にぶらさがっている物体に目を留める。
マテ「いやぁ、それはまた何だ?今度はバーナーケースか?」
ミョミの視線もボトンの創作バッグに移った。
マテ「バッグの一つくらい買ってやろうか」
ボトン「このバッグがどうだった言うんですか?」
「エキセントリックだわ」ミョミの言葉に空気が変わる。
ミョミ「アイディアが素敵ね」
マテ「お世辞言ってやることないですよ。本気にしますから」
ボトン「…。」
ふいに気まずくなった空気に、ダビデが紙袋から唐突に何かを取り出した。
ダビデ「蒸し餅、召し上がります?^^;」
ボトン「そんな、カロリー高いのに召し上がりませんってば」
ミョミが優雅に微笑む。
ミョミ「昼食を食べ損なったんだけど、ちょうど良かったわ」
ボトン「…。」
マテ「急に餅なんてどうしたんだ?」
ダビデ「今日、ボトンさんのお母さんのスンデクク屋がオープンしたんですよ」
#えええっ?!あの賑やかな親子までソウルに?^^;;;;
マテ「本当か?今日?」(←声が裏返る
ボトン「…。」
マテ「お前、何で言わないんだよ」
ボトン「オッパは恋愛に…!」
言いかけて口をつぐむと、その場に再び沈黙が流れた。
ボトン「…忙しいから。二人だけで行って来たんです」
マテ「へぇ~。”二人きり”で行ってらしたのか」
ボトン「…。」
マテ「(ぶつぶつ)おばさんが開業なさるのに…」
ボトン&ダビデ「…。」
マテは気を取り直し、ミョミに声を掛けた。
マテ「僕たちも出掛けましょう。ショッピングでもして、どこかで食事も」
ミョミも立ち上がり、ボトンの前を通り過ぎると、二人は並んで歩き出した。
ボトン「あのー!」
マテ&ミョミ「?」
ダビデ「!」
振り返った二人を前に、黙りこむボトン。
慌てふためくダビデ。
「何だよ」と口で訴えるマテ。
じーっとボトンを見つめて待つミョミ。
えーとえーと…。
ボトン「サインください」
ボトンが蒸し餅の入っていた空袋を差し出すと、「あはははっ!」と誤魔化すように前に出たダビデが袋を奪い取った。
うなだれたボトンの前で、マテはミョミをエスコートして出て行く。
マテを引き止めるどころか、どうにも太刀打ちできない女性の前でまたしてもカッコ悪い姿を見せてしまったボトンは、がっくりと溜め息をついた。
+-+-+-+
ボトンはデスクで悶々としていた。
そこへ、”ボトン人形”が現れると、ダビデが声を掛けた。
ダビデ「(人形に)ボトン、僕たちも遊びに出掛ける?」
ボトン「?」
ダビデ「(人形に)そうだなぁ、うちのボトンとどこ行こうかなぁ」
ボトン「…。」
ダビデ「(人形に)サウナにでも行く?素敵なダビデオッパがゆで卵とシッケを買ってやるよ」
ボトン「(溜め息)サウナにはトラウマがあるって伝えてよ、ボトンうさぎ」
ダビデ「(うぐっ)あぁ~。それなら、遊園地に行く?」
ボトン「(溜め息)」
ダビデ「ドライブに行く?スカッと!」
ボトン「!OK!」
ダビデ「あははーっ!(人形に)ドライブそんなに好きか?ボトン♪そしたら、オッパに”オッパ~、私ドライブに行きたいんですぅ”言ってごらん」
ボトン「…。」
一度顔を上げたボトンが、また頬杖をついた。
ダビデ「(人形に)はぁ~、イヤか?まぁそれならオッパは仕事するさ」
ボトン「行きたいです!」
ダビデ「…。(口の動きで)”オッパ”」
ボトン「…。オッ ッパ」
ダビデ「あははははっ♪OK!」
+-+-+-+
西の山の向こうに日が沈み掛けていた。
「熱っ!」
ダビデは古ぼけた車のボンネットを開け、言うことを聞かなくなったエンジンを調べようとして、思わず熱さに手を引っ込める。
途方に暮れた彼は、水辺にじっと立っているボトンの後ろ姿に近づいた。
ボトンは沈んでいく夕日をぼんやりと見つめていた。
ダビデ「寒いでしょう?」
ボトン「(夕日を見つめたまま)清々しいですよ」
ダビデ「はぁ、こんな予定じゃなかったのに」
ボトン「(笑)夕焼け、めちゃくちゃ綺麗~!」
困った状況を気にも留めず、ボトンは夕日に向かって駆けだした。
+-+-+-+
ダビデの小さな車にも、ちゃんとささやかなキャンプ道具があったようだ。
火をおこし、鍋でラーメンを作ると、ボトンはカップにラーメンを取り、つるつるとすすった。
車から水を取ってきたダビデが声を掛ける。
ダビデ「水も飲みながらね」
ボトン「チーム長は本物のキャンピング・ガイですね。車に積んでるとは思わなかったな」
ダビデ「ホントはもっといいところに行って、ボトンさんに気晴らしさせてあげたかったのに、こんなことになっちゃって」
ボトン「私、今でもすごく楽しいけど♪」
ダビデ「寒くない?」
ボトン「ちっとも^^ふふふっ」
ダビデがホッとして笑うと、そこで彼の携帯電話が鳴った。
ダビデ(電話)「はい。あぁ、そうですか。えぇ、待ってます。はい」
ダビデはすぐに通話を済ませると、電話を切る。
ダビデ「(ボトンに)5分でドライバーの人が着くって。そろそろ片付けましょう」
ボトン「めちゃくちゃ早い!…ちょっと残念だな」
ダビデ「そうでしょ?!」
ボトン「?」
ダビデ「今度ちゃんとキャンプしに来ましょう」
ボトン「今日行きましょうよ、キャンプ!」
ダビデ「え?」
ボトン「ご飯も食べたし、さっき見たら車にテントもあったけど?」
ダビデ「!」
ボトン「寝袋もあるんでしょ?」
ダビデ「えぇ!…。えぇ、えっと、その…寝袋は一つしかないんだけど」
ボトン「…。」
ダビデ「一緒に入ることもできますよ」
ボトン「あははは^^;」
ダビデ「^^;」
ボトン「なかったらいいんです」
ダビデ「あははっ…。冗談ですよ」
ひと通り盛り上がると、ボトンは不意に静かになり、ふっと溜め息をついた。
ダビデ「社長のことで腹が立ってるんですね」
ボトン「…。」
ダビデの言葉には答えず、ボトンは夜空を見上げた。
大きな溜め息がもうひとつ…。
そして、急に空を指さし、ダビデを見る。
ボトン「星がすごく綺麗だから」
そう言って、ボトンはまた笑った。
+-+-+-+
マテが会社に戻ってくると、そこには誰の姿も見えない。
マテ「?」
彼は電話を取り出した。
マテ(電話)「どこだ?」
ちょうどダビデ邸へ戻ってきたトクセンが答える。
トクセン(電話)「家に入るとこだけど?」
マテ「あのー、あのだな、その…一緒に帰ったのか?」
トクセン「誰?ボトン?」
マテ「おい(照れ笑い)何だよ、その質問。まるで俺がキム・ボトンはどこにいるのか気にしてるみたいじゃないか」
トクセン「違うよな」
マテ「違うな」
トクセン「キム・ボトンがダビデ兄と消えちまったのか、そいつを訊いてるんだろ?」
トクセンの言葉に、マテはとりあえず笑った。
マテ「(真顔)まだイカれてないぞ」
トクセン「さっき一緒に出たらしいけど、まだ帰ってないぞ」
「二人で”いいとこ”にでも行ったかな?」トクセンはニヤリと笑う。
マテ「遊び呆けやがって。社長は会社を育てようと頑張ってるってのに、職員はサボりか」
トクセン「マテ兄はデートじゃなかったのか?」
マテはつまらなそうに電話を切る。
マテ「こいつ…。質問ばかりかよ」
もう一度、誰もいないボトンとダビデの席を振り返ると、マテはまた電話を手にした。
発信先はキム・ボトン。
呼び出し音が鳴り始めると、彼は思い直して即座に電話を切る。
マテ「いやいや…ダメだ」
しばらく葛藤していた彼は、デスクの上に蒸し餅が置いたままになっているのに気がついた。
+-+-+-+
開店したばかりのスンデクク屋で、マテは温かいスープをすすっていた。
ボトンの母がいそいそと料理を運んでくる。
ボトン母「味は大丈夫かい?」
マテ「もぅ~おばさんの腕前は国宝級でしょう!」
ボトン母「^^」
マテ「商売はどうです?」
ボトン母「場所がいいのか、物珍しいのか、お客さんは多いよ」
マテ「(頷く)良かった^^」
マテは懐から封筒を出し、ボトンの母に差し出した。
ボトン母「こ、これは何?」
マテ「ソウルに店を出すには保証金だってバカにならないのに、借金なさったんじゃないですか?」
ボトン母「…まぁ、ちょっと借金もしたし、(咳払い)足りない分は、その、えっと…チェチーム長がちょっと…足してくれたんだ」
マテ「チェチーム長が?!」
ボトン母「(頷く)鳥山に訪ねてきたんだよ。ダメだって断ったんだけどね、ゆっくり返してくれればいいって言うからさ。まぁ、早く稼いで返さなきゃね」
マテ「(封筒を指す)これで返してください」
ボトン母「…ありがとう。でもね、(封筒を返す)これは持って帰りなさい」
マテはボトンの母が返した封筒を、指先で素っ気なく突き返す。
マテ「じゃ、ボトンにやってください」
マテがまたスンデククを食べ始めると、ボトンの母は彼をじっと見つめた。
ボトン母「はぁ…。あんたのお母さんがね、前に言ってたよ。あんたはホントに思いやりのある子だって」
マテ「?」
ボトン母「そのときは我が子だから褒めてるんだろうと思ってたけど…そうだね、あんたはホントに思いやりがあるよ」
マテは無邪気に微笑んだ。
マテ「ところで、チェチーム長が保証金を出してくれたこと、ボトンも知ってますか?」
ボトン母「(ドキッ)ん?知らないよ!」
マテ「!」
ボトン母「チェチーム長が絶対に絶対に!言うなって再三頼むからさ」
マテ「あぁ…。じゃ、俺がこの金を持って来たことは…」
ボトン母「分かったよ!ボトンには…」
マテ「絶~っ対に言ってください。必ずね」
ボトン母「へっ?」
驚いて目を丸くするボトンの母に、マテはニヤリと笑った。
マテ「ボトンとはよく電話してます?」
ボトン母「忙しいからね」
マテ「寝てるかな?ご飯は食べてるのかな?」
ボトン母「?」
マテ「心配なら電話してみるといいですよ」
ボトン母「そうしようか?^^」
ボトンの母が電話を取り出すのを、マテは緊張して見つめた。
ようやく電話させるのに成功したのだ!
「電源が入っていないため…」電話の向こうからアナウンスが聞こえてくる。
ボトン母「あらま。(電話を切り)電源切ってるって」
マテ「えっ?!電源切れてるって?」
ボトン母「…。」
マテ「わぁ。ソウルがどんな街だか…、こんな時間に女の子が電話に出ないなんて、叱ってやらなきゃダメですよ!」
ボトンの母はマテの攻撃をはぐらかすように、握った携帯電話で首筋を掻いた。
ボトン母「家にいるだろうさ。バッテリーが切れたみたいだね」
+-+-+-+
ダビデは車に積んであったテントを設置し終えると、焚き火のそばで座ったまま眠ってしまったボトンに暖かい上着を掛けた。
隣に腰掛けると、彼女の寝顔を見つめる。
頬にかかった髪を耳にそっと掛けてやると、頬に手を伸ばし、やっぱり思いとどまって手を引っ込める。
ダビデ「…。」
もう一度横顔をじっと見つめると、彼女の小さな唇にゆっくりと顔を近づける。
その瞬間、ボトンがかすかな声を上げ、体を動かすと、ダビデはくすりと笑った。
そのままバランスを崩して向こうに倒れそうになったボトンを咄嗟に抱きとめ、ダビデは腕の中で彼女を眠らせた。
+-+-+-+
朝。
すでにボトン会社で仕事についていたダビデに、マテが声を掛けた。
マテ「求人広告は出したんですか?」
ダビデ「?」
マテ「人手も足りないのに遊び歩いてるチーム長の代わりに、超一生懸命働く職員が要るんじゃないかと思ってね」
ダビデ「面接終わってますよ」
マテ「…。」
ダビデ「恋愛に忙しい社長の代わりに僕がきっちりやっておきました。先週、すでにね」
マテ「…。」
「ふむ」と頷くと、マテは話題を変える。
マテ「ヒューストンの件、再契約したのは確認しました?」
ダビデ「メールチェックなさらないんですね」
マテ「!」
ダビデ「契約書に押印して以降、あらゆる状況を進捗報告していますが。2日前、す・で・に」
マテ「…。新商品について報告してください」
ダビデは溜め息をつき、立ち上がった。
不意に同じ高さにダビデの目線が上がってくる。
ダビデ「折り入って申し上げることがあります、”社長”」
マテ「OK!それなら俺の部屋へ」
ダビデ「…。」
+-+-+-+
マテは社長の席で腕を組み、入ってきたダビデを見上げた。
マテ「折り入って話とは?」
ダビデはマテのデスクに手をつき、身を乗り出す。
ダビデ「お訊きになりたいのは一体何なんです?」
マテ「訊きたいこと? …。 別にないけど?」
ダビデ「ストレートに行きましょうよ。男同士」
マテ「っはーっはっはっ!」
ダビデ「…。」
マテ「何言ってんだか、超ストレートな男相手に。何の話です?」
ダビデ「昨日、僕がボトンさんとどこに消えたのか、何をしてたのか。それが気になってあちこち行ったり来たりしてたじゃないですか。子犬みたいにチョコチョコね」
マテ「こ、子犬?!」
ダビデ「…。」
マテ「…。キム・ボトンとどこに行ったかって?」
ダビデ「(ニヤリ)」
マテ「初耳だな。関心もない情報だ」
ダビデ「あぁ、そうですか?」
マテ「…。」
ダビデ「(体を起こす)まぁそれなら、そう理解しておきます」
マテは何も言えず、そっぽを向く。
ダビデ「本当に関心ないんですよね?」
マテ「俺がそんな暇に見えますか?」
ダビデ「OK!折り入った話は終わり」
「では」と出ていこうとして、ダビデは立ち止まった。
ダビデ「あぁ。メールチェックなさってくださいよ」
ダビデの背中を見つめながら、マテは葛藤した。
マテ(心の声)「ダメだ。訊かないぞ」
ゆーっくり出て行こうとするダビデ。
マテ「…っ聞いておこうか」
ダビデ「!」
「よしきた」とばかりにダビデが再び振り返る。
マテ「昨日、キム・ボトンと二人で何してた?」
ダビデ「…。」
マテ(心の声)「ほざけ、この野郎」
ダビデ(心の声)「気になって眠れなかったか?目が死んでるぞ」
なかなか言い出さないダビデにマテの視線がキツくなる。
しっかり溜めてから、ダビデは大きく口を開けた。
ダビデ「教えてあげませーん!っはっはっはっ!!!」
言い捨てて背を向けた瞬間、ダビデはまた振り返る。
ダビデの背中に拳を振り上げたマテは、慌ててその手で首を掻き、素知らぬ顔を決め込んだ。
ダビデはそんなわざとらしいマテの態度にニヤリと笑うと、ちょうど着信音が鳴った携帯電話を取り出す。
ダビデ「あ、ボトンさんから外回りに出るってメールが来ましたよ。”僕に”」
マテ「…。」
ダビデ「っはっはっはっ!!!」
豪快に笑いながら、ダビデは社長室を出て行った。
マテ「…。」
完全なる敗北…。
+-+-+-+
『反省文 わたくしキム・ボトンは…』
ほんの少し書き進めたところで、ボトンはペンを置き、口を尖らせた。
ボトン「書かなきゃダメですか?」
隣で雑誌を広げていたマテが顔をあげる。
マテ「会社には規律が重要なんだ。これから山ほど職員を集めなきゃならないのに、お前は外泊したり、サボったり。職員としてなってないぞ!」
ボトン「堂々とデートに出掛ける社長こそ(ボソッ)」
マテ「…。」
ボトン「オッパも書いてよ!反省文」
マテ「分かってないな。俺は協賛社の接待してんだろ」
ボトン「(嘲笑)ミョミが協賛社?」
マテ「靴下売るのに協力してくれたんだから協賛社だろ」(←この言い方最高
ボトン「軽い男…」
そこへダビデが入ってくると、いろいろなストライプ柄の靴下の入った袋を差し出した。
ダビデ「新商品のサンプルが出来ました。チョイスしてください」
テーブルの上にサンプルを置くと、ダビデはボトンの手元の紙に目を留めた。
ダビデ「反省文?」
『反省文 わたくしキム・ボトンは一日中トッコ・マテ社長の電話を取らずに…』
ダビデは笑い出す。
ダビデ「超笑えるな。”始末書”じゃなくて”反省文”?中学生じゃあるまいし」
「笑っちゃいますよね、ボトンさん」とダビデはまた笑った。
ダビデ「会社では”反省文”じゃなくて”始末書”って言うんです」
黙ったままマテの目が泳いだ。
ボトン「私も知ってますよ~、そのくらいは^^」
電話が鳴り、ダビデが出て行くと、ボトンはマテを睨みつけた。
ボトン「オッ」
マテ「(視線をそらす)」
ボトン「社長、書き直します。”始末書”を」
マテ「(笑)オッパが知らなかったとでも思ってんのか?ん?」
ボトン「…。
マテ「オッパにとってはな、お前はいつだって子どもで、いつだって中学生キム・ボトンだ。それで反省文のアイディアが浮かんだんだって。俺が始末書も知らないと思ったか?」
ボトンは新しい紙に大きくタイトルを書いた。
"심알서"
ボトンは「どうだ」とばかりに音を立てて紙を指した。
マテ「そうだ。ちゃんと書けてる」
※正しくは"시말서"。si-mar-so を sim-ar-so と間違った綴りで書いています。
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
この前半で原作通りなのは、冒頭で会社へ戻ってきて、「何で告白なんか」とボトンに怒るマテ。
そして、ミョミに土下座して助けを請うキム・インジュン(原作ではマテもいました)。
多分その2箇所だけです。
ボトンを好きになるダビデの比重がものすごく大きくなっていて、
マテがナ・ホンランに立ち向かうべく、階段を上がっていくストーリーがメインになっている原作に対し、三角関係をもう一つの柱にしようという制作意図が分かります。
そもそも原作ではボトンはダビデの家に居候してはいないし、ダビデとボトン家族も最初からこんな親しくなってはいません。ボトンに好意を示す描写もそれほど出てこなかった気が…。
ドラマダビデがとてもいいので楽しみではあるんですが、マテが征服すべき女性にどう接するのか、何を学ぶのか、そこはきっちり描いてほしいなぁ。
ありがとうございます(*´∀`)
返信削除諸事情により、、、
シナリオを変えたと発表されたので、、、
覚悟はしてたんですけど、、、(  ̄▽ ̄)
あれ?っていう感じはありました
時計の登場は
好きな展開かもです!(*^^*)
こんにちは(*^^*)
返信削除懐中時計がヒントですねo(^-^)oワクワク
マテオッパーに嫉妬されるボトンがうらやましい(#^_^#)
楽しみにしてます(*^_^*)
ありがとうございますm(_ _)m
こんばんは。
返信削除毎回、とても助かっています。
ありがとうございます!
「OK! Go! My! Room!」のマテオッパ、ツボです(*^^*)
これからよろしくお願いします<(_ _)>
お世話になっております(*^^*)
返信削除水辺の夕焼けシーン、写真が素敵!
ユジナ~さんの描写センスに、毎回感動しつつ、ワクワク読ませて頂いております。ありがとう♪