2013年12月30日月曜日

きれいな男12話あらすじ&日本語訳vol.1

チャン・グンソク、IU、イ・ジャンウ、ハン・チェヨン出演「綺麗な男」12話です。



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さっそくどうぞ。


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「あれほど欲しがっていたお母さんの遺言よ」

ユラはマテの母が遺した”暗号”を録音した携帯電話をテーブルの上に置いた。

ユラ「席を外すわ。一人で聞きたいだろうから」
マテ「いや。待ってください」

ユラは携帯電話には手を伸ばさず、ユラを見る。

マテ「あれがどういう意味か教えてください。暗号のため、いや、愛のために人生を差し出した人、ひょっとしてチェチーム長ですか?」
ユラ「(微笑)そうよ。チェチーム長」
マテ「暗号の主人公があれだけ頼んでも、ミッションばかり投げてよこしたあなたが…。チェチーム長はどんなカードを切ったんです?そんなに素直に暗号を出すなんて、一体何をどうしたんですか?」
ユラ「それはチェチーム長が切ったカードで、ごく内密なプライバシーよ」
マテ「…。」
ユラ「お互いのプライバシーは尊重しなきゃね。それに、もうすぐ明らかになるだろうから、少し待ってみたらどうかしら?」
マテ「そうですか。誰に感謝すればいいのやら。ボトン?それとも、ボトンを愛するチェチーム長か?」
ユラ「それはご自由に。私も混乱してるわ、その問題については…」

マテは携帯電話を手に取った。

表示されたファイル名をタップするとサブメニューが開く。
再生、削除、ファイル名の変更、着信音に設定、カテゴリー移動、詳細情報…。

マテはしばらくそれらの文字をじっと見つめ、考える。
緊張しているマテの様子を、ユラは少し愉しげに見守った。

携帯の画面上を、指が躊躇うように行き来する。
そして、彼の指は「削除」をタップし、間髪入れずに「OK」で実行した。

『録音されたファイルがありません』画面の中央に短い一文が表示される。
マテは無表情で携帯電話をテーブルに戻した。

ユラ「!!!」
マテ「…。」
ユラ「一体何をしたの?この暗号のために走ってきた時間を考えてみなさい」
マテ「…。」
ユラ「お母さんの遺言なのよ!重要な暗号なの!」
マテ「母さんの大切な遺言、重要な暗号を自分以外の人を犠牲にして手に入れたくない」
ユラ「…。」
マテ「前半戦終了ってことにしますよ。これまで暗号を手に入れるために走ってきた時間、後半は僕が自分自身でそれを見いだすために走ります」
ユラ「…。」
マテ「母さんの息子だから、辿り着けるはずだと…そう信じます」
ユラ「…。」



「それから」マテはソファから立ち上がる。

マテ「今後は二度とボトンがあなたの前で跪いたりすることのないよう、気を引き締めて生きるつもりです」
ユラ「…。」

「先に行きます」マテはユラを残し、会社を出た。

+-+-+-+

マテが向かったのはダビデとボトンが暮らす家だった。



門の前までやって来た彼は、庭にいる二人の姿を見ると、そのままそっと引き返した。

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「チェ・ダビデ…。あんたの正体は何だ?本当にボトンのために…」

マンションに戻るとマテの携帯が鳴った。
発信者の名前をしばらく見つめると、マテは何の感情も見せずに電話を取る。

ユラの声が聞こえてきた。

ユラ(電話)「今からでも言うわ。真摯な気持ちよ。暗号、教えてあげる」
マテ(電話)「もうあなたに暗号を訊くことはありません。では」

マテは電話を切ると、背後のツリーを振り返った。
正面に父と母の写真が見える。



マテ(心の声)「母さん、俺のこと信じるよな?俺が探しだすよ。母さんが最期に遺した暗号、息子が絶対に見つける」

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ユラはマテの行く末を案じ、不安で顔を曇らせた。

ユラ「暗号を見つけたら…天地が崩れるほど衝撃を受けるはずだわ」

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「ボトンさん、あんなに泣くなんて…」

ボトンの部屋のソファで、ダビデが静寂を破った。

ボトン「チーム長、マテオッパの暗号、どうやって手に入れたんですか?」
ダビデ「…。」
ボトン「ホン・ユラがそう言ったんです。チーム長が暗号のために人生を投げ打ったって」

ダビデは答えに困ったように下を向いた。

ボトン「気になるんです」
ダビデ「ボトンさん、話してあげられないことがあるんですよ」
ボトン「…。」
ダビデ「MGグループとちょっと関係があって、ホン・ユラに力を貸したんです」
ボトン「…。」
ダビデ「たくさんの人が絡んでるから、今は言ってあげられない」

「でも、それを私のために…」ボトンの目が再び潤んだ。
ダビデは何も言わずボトンをまっすぐ見つめる。
ボトンはもどかしくて溜息をついた。

ボトン「いきなり三角関係なんて、私の運勢どうなってるのかな」
ダビデ「ボトンさんはトッコ社長を想い続ければいいんです。僕はこれからもボトンさんを想い続けるから。まぁいつかは届くでしょう。”コール”」
ボトン「だけど…」
ダビデ「じゃ、すっかり心の整理して、ダビデオッパとラブラブで付き合いますか?」
ボトン「えっ?」
ダビデ「もぅ…、何でそう引くんです?力抜けちゃうでしょ」

そう言ってダビデは明るく笑った。

ダビデ「ゆっくり寝るんですよ。何も考えずに。明日も同じ朝が来ますから^^」
ボトン「…。」

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ホンランは秘書の報告を受けていた。

ホンラン「パク・ムンス代表解任臨時株主総会の準備、ミスがあってはなりません。こちら側の株主たちに変動がないのは確かなんですね?」
秘書「全て整理済みです。パク・キソク会長がパク・ムンス代表側についたとしても、我々側の株主たちの票で可決できます」
ホンラン「…。」
秘書「心配なさらなくても大丈夫かと」
ホンラン「最後まで気を抜かないでください。あぁ、それからキム・ドンヒョン常務に密かにお礼を弾んでくださいな。今回のことで一番功績の大きい方ですから」
秘書「はい。満足なさるようご用意いたします」

+-+-+-+

ボトンはやはり眠れずにベッドから起き上がった。

「A君は私が愛してる人で、B君は私のことを愛してる人なんです。A君を愛する気持ちを捨てることは出来ません。でも、B君も本当にカッコよくていい人なんです」

ボトンは投稿した文章についたコメントを辿った。

「役得だね~www」
「あなたファム・ファタル?」
「二人共付き合っちゃえば~^^」
「Bくんは私に!」
「ボトンさんのルックスが気になる~ww」

ボトン「?」

ボトンはあるコメントに目を留めた。

「二人とのキスを想像してみて。どっちがいいかで答えは出るでしょ」

ボトン「マテオッパとはまぁ散々想像して来たし、チェチーム長は…?」

ボトンは目をつぶり、意識を集中した。

ボトン「!」



ボトンの想像の中でダビデが顔を近づけてくる。
彼女は不器用に唇を突き出した。
ダビデの優しい顔がゆっくりと…。ゆっくりと…。

「ボトンさん!」ダビデが呼ぶ声に、ボトンは驚いて目を開ける。
階段を上がってきたダビデが「何してるんです?」と微笑むと、ボトンは慌てた。

#何ですか、ダビデさん。そのハーフパンツ+タイツ+靴下ルックは。

ボトン「いやいや、してませんよ!してないから」
ダビデ「???」
ボトン「(唇を指し)触れてませんから。絶対に触れてませんって」
ダビデ「何が?」
ボトン「…。」
ダビデ「(苦笑)お母さんがいらっしゃいましたよ」

ダビデが笑いながら振り返ると、ボトンの母親が上がってきた。

ボトン「お母さん^^;」
ダビデ「お母さんがね、おかずを山盛り持って来てくれて、冷蔵庫一杯ですよ」
ボトン「テシクは?」
母「店を見てるよ」
ダビデ「ここにいらしてください。僕、果物持ってきます」
母「いえいえ、すぐ帰りますから」
ダビデ「召し上がって行ってください。帰りも僕がお送りします」
母「あらまぁ^^;」

ダビデが下へ降りて行くと、ボトンが深い溜息をついた。

母「ちょっと、あんた顔色が悪いね。仕事が大変なのかい?」
ボトン「人生が大変なのよ…」
母「おやまぁ~!あんたがそんなこと言う日が来るとはね。ホッとしたよ」

「よっこいしょ」母はベッドのふちに腰を下ろした。

ボトン「私だっていろいろ悩みはあるんだから」

「お母さん」ボトンは小さく身を乗り出す。

ボトン「私の好きなA君がいるとするよね」
母「マテ?!」
ボトン「違うって!ただの例えだよ、A君」
母「…分かったよ」
ボトン「それから、私を好きになってくれた人、B君」
母「!!!」

母が目を輝かせて振り返った。

母「ちょっと!チェチーム長が…好きだって?!」
ボトン「はぁ…もうやめた」
母「分かった分かった。続けなさいよ。ABC、ほらほら!」
ボトン「Cまではいないよ~。私、男関係がシンプルな女だからね」
母「それで結論は何よ?焦れったい!」
ボトン「誰と付き合うべき?」
母「ちょっと!当然チェチーム長と付き合わなきゃ!」
ボトン「もう!B君だってば!B君!B!」

母は呆れたように娘を睨んだ。

母「女はね、自分を愛してくれる人と付き合ってこそ、朝から綺麗でいられるんだよ、あんた」
ボトン「…。」
母「はぁ、全く…。あのときあんたの父ちゃんのこと好きだ好きだって追っかけたもんだから、こんなザマだよ…朝は化粧どころか顔を洗う余裕もなくなっちまって…」
ボトン「…。」
母「あのときさ、あたしなしじゃダメだってしつこく言い寄ってきた米屋のヨンテさん家に嫁に行ってたら…はぁ、あたしの運命も変わっただろうにね」
ボトン「…。」
母「少なくとも長生きしてるじゃないか!あたし一人残して逝っちまったりしないでね」
ボトン「(ニヤリ)米屋のヨンテ?それって、お父さんも知ってるラブラインなの?」

母は娘をバンと叩いた。

母「男に好きだって言われたら撥ねつけるなってことだよ!ちゃっちゃと行っちゃいなさい!」
ボトン「(呆れて)イ・マルジャ女史、イージーすぎるよ。たやすい女だね」
母「あんたに人生の何が分かるんだい!」

+-+-+-+

マテとダビデは今日も変わらずに仕事をこなしていた。

ダビデ「他の百貨店の方も進めていますが、来年の入店調整はすでに終わっている状態です。中途でキャンセルが出るのを待つにしても、うちの店舗は一つや二つではありませんし、百貨店出店は難しそうです」
マテ「お掃除靴下のテレビ通販の件はどうすればいいでしょうね」
ダビデ「テレビ通販の方は…業界に知り合いもいますし、よく話してみます。頑張ってあたってみないと」

マテはガラスの向こうのオフィスを眺めた。
そこには、携帯をいじって暇をつぶしているキジの姿。

マテ「SSホームショッピングとか?」
ダビデ「(頷く)まぁ、どこでも」

マテは話を切り替える。

マテ「今晩どうしてます?一杯やりましょう」
ダビデ「…そうしましょう」

マテがまっすぐ見つめると、ダビデは少し戸惑ったように俯いた。

+-+-+-+

ダビデが社長室を出てくると、友人を引き連れたキジはミーティング用のテーブルを占領していた。
そのうちの一人、ダビデがNY時代に隣に住んでいたという女の子に、ダビデの素っ気ない声が飛ぶ。

ダビデ「帰らないのか?」
キジ友人「キジの人形が忙しいからこんなとこまで来てるんでしょ」
ダビデ「…。」

マテが出てくる。

マテ「売り場の視察、今日だろ?」

キジが顔を輝かせた。

マテ「行ってくる」

マテの後にキジが続こうとすると、「ちょっと!」とボトンが呼び止めた。

キジ「?」
ボトン「(ニッコリ)あんたは何でついて行くの?」
キジ「人形が遊んでくれないんだもん。忙しいから仕方ないよ。私が我慢してあげなきゃ」

キジがマテの腕を取る。
うんざりしながらも、マテはそのまま歩き出した。

ボトン「…。」

+-+-+-+

FERRINOの売り場へやってくると、店員が「あら!支社長!」と声を掛ける。
にこやかに頭を下げるマテの後ろでキジは退屈そうに辺りを見廻した。

店員「実物は遥かにハンサムでいらっしぃますねぇ~」
マテ「^^」
店員「記事で拝見しました。売り場の視察にいらしたんですか?」
マテ「視察だなんて。現場のスタッフの皆さんに挨拶して回ってるんです。マーケティングやいろいろ兼ねて」
店員「お茶でも…」
マテ「いいんです」

「売り場の方はいかがです?」マテが尋ねたそのとき、近くで甲高い怒鳴り声が響いた

女性「謝り方もしらないの?!」

驚いて振り返ると、声の主である女性がキジを睨みつけている。

キジ「どこのブランドですか?」
女性「何ですって?」
キジ「どこでお買い求めになったのか聞いてるんですよ。新しいのをお送りすればいいでしょ?」
女性「あなたね、人の足を踏んだら謝るのが先でしょう?」

キジはポケットに手を突っ込む。

キジ「おばさん、どうして足をそこに置いてたんですか?悪いのはお互い様じゃない?」

キジは女性の足をチラリと見下ろす。

キジ「どこのやつ?ブランドの名前を言ってよ、サイズとね。一揃え送ればいいでしょ?」

マテが呆れて溜息をついた。

女性「それならチェコまで行って来なさいよ!同じデザイン、サイズは230!」
キジ「チェコのブランドね。チェコのどこ?」
女性「あんたの親は誰なの?!」(←禁句だってば!
キジ「おばさんがそれ聞いてどーするの?ブランドだけ言えばいいじゃない!」
女性「3年前、結婚記念にチェコに行った時、市場で買ったのよ!売主のジプシーが手作りしたものだから、まずはその人を探さなきゃね」
キジ「…。」
女性「絶対に弁償してちょうだい」

女性は手を出した。

女性「ご両親の連絡先をちょうだいな。あなたの何を信用してタダで返せるの?」

キジは困って周りを見渡した。
他の客たちが自分を見て眉をひそめている。
たまりかねてマテが二人に近づき、キジの肩に手を置いた

マテ「(女性客に)すみません、こいつ末っ子で躾がなってなくて。申し訳ありません」

「ちょっと、何言ってんのよ」素直になれないキジの腕を掴むと、マテは女性にもう一度微笑みかけ、その場を後にした。

+-+-+-+

キジを助手席に乗せると、マテが声を掛けた。

マテ「空港に向かいますか?チェコまで行かなきゃならないんでしょう?」

目を丸くしたキジに、マテは愉しげに笑った。

マテ「家までお送りしますよ」
キジ「…。」
マテ「その前に面白い話を一つしてあげましょうか?」
キジ「?」
マテ「少し前、とても大切な出会いがあったんです。僕が生きてきた理由と言えるほど、本当に重要な出会いだった」
キジ「…。」
マテ「すごく会いたかった人に会える日だから、僕の立派な姿をお見せしたかったんです。それなのに、突然…」

マテはキソクの前で声を掛けてきたジェッキの友人を思い出した。
結婚話まで出たのに別れたジェッキの友人の前に、続いて現れたのはキジだ。

マテ「僕が生きてきた人生の破片が次々に現れて、僕をつまらない男にしたんです。最低な男に」



「腹が立って気が狂いそうだった」最悪の場面を振り返り、マテは静かに笑った。

マテ「でも、何日か経ってみたら、それもまた僕が生きてきた時間の一部だったんです」
キジ「…。」

マテはキジを振り返る。

マテ「財閥の娘として生まれたのはキジさんの意志じゃない」
キジ「…。」
マテ「僕にもよく分からないけど、もしかしたら人生は裏紙みたいなものかもしれません。表側は自分が持って生まれなきゃいけなかった部分だとしたら、裏側は自分で埋めていかなきゃならない部分」
キジ「…。」
マテ「キジさんの裏面を”癖が悪い””分別がない”…そんなふうに残したくないでしょう?」
キジ「…。」

「つまんない」キジは溜め息をつき、外に視線を移す。



彼女の横顔に微笑み、マテは車のエンジンをかけた。

+-+-+-+

「暗号、受け取りましたよ」マテがダビデのグラスに焼酎を注ぎながら言った。



ダビデ「ありがとうだとか、そういうのはやめましょう。トッコ社長を喜ばせるためじゃありませんから」

ダビデはグラスの酒を一気に流しこむ。

ダビデ「で、暗号は役に立ちそうですか?」

マテがまっすぐ視線を上げた。

マテ「消しました」
ダビデ「え?」
マテ「受け取ってすぐ、ホン・ユラさんの目の前で消したんです。もう暗号が何なのかも分かりません」
ダビデ「…。」
マテ「でも、妙なんです。暗号は永遠に消えてしまったのに、心は羽根のように軽いんですよ」
ダビデ「…。その程度のもののために、どうしてボトンさんを悩ませたんですか?」
マテ「誰がそんなことを?その程度のものだとは言ってません」
ダビデ「…。」

マテは酒を一息に飲み干すと、音を立ててグラスを置いた。

マテ「正直僕は何が何でも暗号がほしいです。腕を出せと言われれば、その場で切り落として差し出せる…それほど切実です」
ダビデ「…。」
マテ「でも、これは違う。僕のことを好きなボトン、そんなボトンが好きなチェチーム長。その気持ちを利用して手に入れるのは絶対に違うと思うんです」

ダビデは言葉もなく俯いた。

マテ「暗号を消さなければ、この競争の最後で恥じることになりそうで」
ダビデ「…。」
マテ「それで消したんです」

ダビデは納得したように頷いた。

ダビデ「それで消したんですか」
マテ「…。」
ダビデ「トッコ社長、僕が思っていたより魅力的です。真摯な男だな」

そう言って微笑むと、ダビデはマテのグラスを酒で満たした。
「ところで」とダビデは続ける。

ダビデ「その言葉、社長のためにこれ以上ボトンさんを泣かせることはないと、そう受け取っていいんですね?」
マテ「…。」

マテはじっとダビデを見つめた。
ダビデも目をそらさず、まっすぐにマテを見つめる。
二人の視線が静かにぶつかり合った。

マテ「ものすごく気になるんです。チェチーム長が一体誰なのか。キジの友人とも知り合いで、僕が無我夢中で走って手が届かなかった暗号を、なぜすぐ手に入れられたのか」
ダビデ「全ての中心に立っているのはトッコ社長じゃないですか」
マテ「…。」
ダビデ「僕が何をしたのか、ホン・ユラがなぜ受け入れたのか、そのうち全て聞こえてくるはずですよ」

「最後の質問を」マテが続けた。

マテ「今回の自己犠牲で、ボトンとチェチーム長は特別な関係に?」
ダビデ「…。」

鋭いマテの視線の前で、ダビデは一瞬戸惑って俯いた。

ダビデ「そう期待しています」
マテ「…。」

ダビデはそう短く答え、口角を上げた。



#楽しすぎる!男同士のこういう緊張した駆け引きほど、聞き取っていて燃えるシーンはありません。

+-+-+-+

誰もいなくなった暗いオフィスで、ボトンはマテから半ば強引に貰った懐中時計を見つめていた。



ボトン「おばさん、オッパが会長の息子だってこと、どうして言ってくださらなかったんですか?ヒントでも貰っていたら私、バカみたいに言い寄ったりしなかったのに」

ボトンの指が優しく懐中時計をなぞる。

ボトン「おばさん、私ね、オッパが暗号を手に入れて、会長と会って幸せになるまで、今みたいに一生懸命助けますね。おばさんの頼み、絶対に守ります」

+-+-+-+

おぼつかない足取りでマテが部屋に戻ってくると、ソファで待っていたボトンが立ち上がった。

ボトン「オッパ?」

ボトンの顔を見ると、マテはホッとしたように息をつき、両手で自分の体を抱えた。

マテ「あぁ、寒い」

マテが倒れこむようにソファに座ると、ボトンも腰を下ろした。

ボトン「急な会議があるって言ってたのに」
マテ「…。」

マテの視線が弧を描き、ボトンの顔の上で止まる。

ボトン「お酒飲んだんですか?」
マテ「会議だ。キム・ボトンとトッコ・マテの三角関係。その件で緊急会議だ」
ボトン「?」

「ダダーン!」マテは体を起こすと、手に持った紙袋を掲げてみせた。

マテ「キム・ボトンにおみやげだ」

+-+-+-+

酒に酔った手で、それでもマテは買ってきた焼き栗を一生懸命剥いていた。

マテ「お、出来た」

マテは皮を剥いた栗をつまみ上げると、ボトンの前に差し出す。

マテ「あーん」

ボトンが素直に口を開けると、マテはその小さな口に乱暴に栗を突っ込んだ。

マテ「旨いか?」
ボトン「まだ噛んでないよ」

ボトンはモグモグと口を動かし「ウ~ン♪」と唸る。

ボトン「美味しいね^^」

ボトンの顔を見つめ、マテは嬉しそうに笑うと、彼女の頬をぎゅっとつまんだ。



ボトン「?」

彼女の頬を指で捕らえたまま、マテはゆっくりと…ゆっくりと顔を近づける。

ボトン(心の声)「おっ?ま、まさか…ダメだよ、ニンニク漬け食べたのに」

ボトンはぎゅっと目をつぶった。
「ボトン…」マテが呼ぶ柔らかい声が間近で響く。

ボトン「?」
マテ「お前が好きだ」

「オッパ…」ボトンの心の中にそよ風が吹いた。

マテ「いや…愛してる」
ボトン「!!!」


#このね、目の下の縁が赤くなってるのがたまらんのよ

「ついに!」ボトンが緊張してパチパチと目を瞬かせる。

「嘘だって」マテは突き放すように彼女の頬から指を離した。

ボトン「…。」

「キム・ボトン、オッパはな…」マテはポツリポツリと話し始める。

マテ「母さん以外、誰も愛してことがない」
ボトン「嘘ばっか。私が知ってるだけでも何人もいるのに」
マテ「お前の知ってるたくさんの女たちの中で、心から愛した人はいないんだ」
ボトン「…。」
マテ「だからよくわからない。愛する気持ちがどういうものなのか」
ボトン「…。」
マテ「けど、そんなことよく知りもしないで、”愛してる”なんて言うのは嘘だろ?」
ボトン「…。」
マテ「どういう気持ちが愛するってことなのか…それが分かるようになるまで、どこにも行くな」
ボトン「…。」

マテがじっと顔をのぞき込むと、ボトンの胸が再び高鳴る。

マテ「ところで…ニンニク食べたか?」

そう言ってマテは鼻をひくつかせる。
ボトンは何も言えず、口を固く結んだ。

ボトン「………。」

+-+-+-+

キソクがベッドで新聞を広げていると、ホンランがやって来た。

ホンラン「明日、株主総会に出ていただかないと」

キソクが顔を上げる。

ホンラン「午前11時までに来てくださればいいそうです」
キソク「私がいくら訳ありの人生を歩んできたと言っても、我が子を切り捨てるための席にどうやって顔を出せるんです?」
ホンラン「…。私もとても辛いですわ」
キソク「本心であることを願いますよ、その気持ちが」

ホンランは動揺を隠せず、辛うじて微笑んだ。


#この上品なおじ様が、あちこちで妾に子どもを産ませるような人には到底見えない。

+-+-+-+

ユラは自宅で落ち着かない時間を過ごしていた。
意味もなく歩きまわっては時計を覗く。
株主総会の開かれる時間が迫っていた。



+-+-+-+

MGグループ臨時株主総会の会場は、すでに集まった株主たちで埋まっていた。
扉が開き、ホンランが姿を見せると、株主たちが一斉に立ち上がり、頭を下げる。

席についたホンランの合図を待ち、進行役が総会の成立を宣言した。

進行役「これからパク・ムンス代表解任について、臨時株主総会を開催します」

一人が机を思い切り叩いた。

A「このような株主総会自体、理解できません!検察でも無罪が発表され、代表もすでに職務に復帰しているではないですか!」
B「企業の代表がそんな場に居合わせたこと自体が問題なんです!」
C「何度言えばいいんですか!キム常務が解雇されたことに逆恨みしてやったことでしょう!」
B「今回のことだけを言っているんじゃありません!女優とのスキャンダルを忘れちゃいけませんよ!」

平行線が続き、議論は混乱した。

進行役「それぞれご自身で判断されることです。お渡しした文書にご自身の判断をお書き入れくだされば結構ですので」

「それでは票決にはいります」進行役が宣言すると、参加者たちは一斉にペンを手にとった。

直ちに票が回収され、進行役の元へ届けられる。
進行役は素早く目を通し、向かい側にいるホンランに微笑みかけた。

進行役「パク・ムンス代表解任の件について、議決権の3分の2の賛成を得て、可決されたことを…」

「お待ちください!」そこへ颯爽と現れたのは、キソクの側近だ。

一同「!!!」

解任に賛成している株主が声を上げた。

B「おや!解任を自ら確かめにいらしたようだ」

その言葉に、ホンランも余裕の笑みを浮かべる。

キソク側近「遅れて申し訳ありません。株主の方が今到着なさいましたので」

「お連れいたします」キソクが扉の外を振り返り、頭を下げる。
入ってきたのは、チェ・ダビデその人だった。

ダビデ「遅くなりました。MGグループ株主、チェ・ジュナです」
ホンラン「?」

ダビデが空いていた席に腰を下ろすと、見慣れない顔に一同が怪訝な表情を見せた。
ダビデはホンランに静かな視線を送る。

ホンラン「…。」

進行役がダビデに状況を説明した。

進行役「他の方たちの意見を集めた状況です。チェ…?」
ダビデ「チェ・ジュナです」
進行役「失礼いたしました。初めてお目にかかりましたので。(一同に)チェ・ジュナさんの意見を加え、改めて結果を申し上げることにいたします」

ダビデが直接意見を述べる。

ダビデ「私チェ・ジュナはパク・ムンス代表の解任について…」

ダビデはホンランを一瞥すると、また進行役に向き直った。

ダビデ「反対します」

会場が騒然となった。

ホンラン「…。」

ホンランはパーティーで会った青年のことを思い出していた。
確かに、キソクの古い友人の息子だと言った、あの青年。

進行役「反対意見にチェ・ジュナさんの票を加え、もう一度票決を進めます」

キソクの側近が封筒を進行役に手渡す。
中の書類に目を通し、進行役は大きく息を呑んだ。
唖然として口を開けたまま、涼しい顔で座っているダビデを見る。
そして、困ったようにホンランを見つめた。

進行役「チェ・ジュナさんの持ち株により、つまり…その…議決権総数の3分の2を超えられず、パク・ムンス代表解任の件は…否決されました」

※要するにダビデの持ち株がとんでもなく多かったので、それだけ議決権の票数も多く、彼の票だけで結果をひっくり返してしまったということですね。

会場の半数が湧き、半数から怒号が響く。

ホンラン「…。」



今にも止まりそうな呼吸をそっと整えたホンランの姿を、混乱の中でダビデが静かに見つめる。
席をたつと、ホンランは出口の前で立ち止まった。
自分をじっと見ているダビデを一瞥し、足早に会場を後にする。
ホンランが姿を消すと、ようやくダビデはホッと息をつき、緊張を解いた。

+-+-+-+

ここで一旦区切ります。

はー、訳していてすごく楽しかったです。

ダビデがユラの前夫を解任から救うエピソードは原作通り。
事前にユラに話を持ちかけ、マテのためではなくボトンのために暗号をユラから手に入れる流れも。
ただ、原作ダビデはその暗号をマテに渡す代わりに、ボトンにマテを諦めて自分の元へ来るようにと条件をつけるんです。マテもユラから暗号を渡されるときに、その条件を聞かされます。

でも、ドラマダビデにその手はちょっと似合いませんね^^
後々、別のシチュエーションで出てくるかもしれませんが。

と、ここで終わろうとして、語ろうと思ってたことを思い出した(笑

序盤から大きなキーアイテムであり、そのためにここまで頑張ってきた「暗号」。
それを運良く手にしたのに、使わずに捨ててしまう。
世の中に韓ドラあるあるは山ほどありますが(笑)、私はこういう展開もその一つだと思ってます。

例えば、解けば済む誤解は敢えて解かないまま、じっくり当事者たちを向き合わせることで関係を築いていく描写とか。

ちょっと脱線しますが具体的に…。
「美しき日々」でチェ・ジウ演じるヨンスが事故に遭い、大切な妹との再会の約束を果たせなかったために妹は姉を恨み続けているのに、ヨンスは何も釈明しない。恨まれながらも辛抱強く向き合っているうちに、姉妹の関係が少しずつ変わっていくんです。
そういう感じ。ん?分からんって?^^;

見ているとすごくもどかしいんだけど、そういうところを安易にすっ飛ばさず、じっくり描くところが、私が韓ドラの好きなところです^^

はぁ…。それにしてもマテの成長が著しいですね。
車の中でキジにした話も、ダビデとサシで話したことも、序盤のマテならカッコつけてわざと話したかもしれないけど、今は経験から自然と出てくる言葉。
本当にカッコよくて嬉しいです。






7 件のコメント:

  1. ありがとうございます(*´∇`*)
    徹夜だったのですねぇ…
    ありがとうございます♪(*´ω`*)
    焼きぐりを剥きながら
    マテが語るシーン
    マテの柔らかな表情 柔らかな声(*´ω`*)
    そして ニンニク、、、匂っちゃったんですね♪
    オンマしか愛した事がないと告白して、
    ボトンに 『 どこにも行くな 』
    すごく すごく じーんと来ました。

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  2. 12話、心待ちにしていました!
    お忙しい中、ありがとうございます。

    ポトン母娘の会話、いいですねぇ。
    他の登場人物が特殊な人たちばかりだから、
    普通のやり取りがホッとします(*^^*)

    キジとの車内のシーンも、マテとダビデの食堂のシーンも、
    ボトンとの焼き栗のシーンも、
    マテに落ち着きが出てきて、どんどん魅力的になってきましたよね!

    最終話まで、目が離せません!
    yujinaさん、よろしくお願いします<(_ _)>

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  3. ますます目が離せないドラマになってきましたね。マテは本当の自分の気持ちに気付いてきたのかな?ドラマも後半ですね。マテとダビデのやり取りもドキドキするし、ボトンはとにかく可愛いくて(*^^*)
    いつもありがとうございます。

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  4. 今回も有り難うございます。
    言葉が分からず映像を見ている時は会話部分が結構あったので
    夜中、眠くなってしまいましたが、今内容を読ませて頂いたら、マテ
    が益々素敵に成長していて、嬉しいです。
    グンちゃんの演技がドラマの成長にあわせ、人間的な成長を顔の
    表情、特にまなざしで感じる事が出来、凄いなあ~と!!!
    yujinaさんが最後に書いている通り、本当にカッコ好いですね。❤

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  5. こんばんは☆彡
    マテが「母さん以外愛したことがない」と言ってたけど、私も息子に言われたいな~(#^_^#)暗号が何なのか気になります(-。-;)
    後半ホンランがキソクに怒った口調で話しているシーンがありますよね?何を言っているのか、早く知りたいです(?_?;
    期待して待っていますo(^-^)oワクワク

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  6. うなぎゆうやん2013年12月31日 0:33

    こんばんは、ラブレインの時から拝見しています。
    ユジナーさんは、美しき日々も、翻訳されていたんでしょうか?
    韓ドラを好きになったきっかけが、美しき 日々でした。
    そして、あの、事故の話ですが、ユジナーさんのお話で、やっと理解できました。
    これからも、宜しくお願いします。

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  7. Yujinaさん 翻訳いや あらすじを有難うございます!

    スマホから 何度かお礼のコメントを入れたのですが どうも反映されずで??

    早くも12話 トッコマテは どんどん素敵に 男らしくなってきて 本当にきれいな男になってきましたよね。

    Yujinaさんの あらすじは いつも楽しくて ドラマを2倍3倍楽しませて頂いてます。

    グンちゃんは 視聴率で悩んでいるのかもしれませんが、 すてきなトッコマテを
    魅せてくれて ありがとう!ですよね~^^

    今回の告白?シーンもドキドキしました。 私もほっぺをつねられたい!なんて^^

    今年も年末までお疲れ様です。ありがとうございました。 来年も宜しくお願い申し上げます。

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