SSグループの力を借り、MG主催のパーティーに参加したマテ。
そこで会ったのは、思いもよらない人物でした。
では、どうぞ
+-+-+-+
マテ「初めてお目にかかります。ボトン会社代表、トッコ・マテです」
じっとマテを見つめていたキソクは、マテの向こうに現れた人物に気づき、嬉しそうに声を掛ける。
キソク「あぁ、こっちだ」
マテ「!!!」
マテの隣に立ち止まり、頭を下げたその人は、ダビデだったのだ。
ダビデはマテを一瞥すると、キソクに視線を戻す。
ダビデ「お招きいただきありがとうございます。…おじさん」
キソクは少し戸惑ったようにうつむき、微笑んだ。
ダビデ「父が来られないのでよろしくお伝えするようにと」
ホンラン「?」
キソク「(ホンランに)あぁ、古い友人の息子なんだ」
ダビデはホンランに会釈すると、マテに向き直る。
ダビデ「いらっしゃると分かってたら一緒に来たのに。(キソクに)転職先の社長なんです」
マテ「…。」
キソク「あぁ、そうだったのか。私は他に挨拶があるので」
キソクはマテに一言も声を掛けることなく、彼の前を立ち去った。
ホンランも夫に続く。
マテ「…。」
「ちょっと、あんたどうしたの?」呆然と立ちすくむマテをつつくと、キジはすぐに誰か知り合いを見つけ、あっという間に姿を消した。
その場に残ったのは…ムンスとダビデだ。
ムンスがマテに近づいた。
ムンス「…。」
マテ「?!」
ムンス「MGグループ代表理事、パク・ムンスです」
マテ「はじめまして」
ムンス「話はよく聞いていますよ」
マテ「芸能人でもないのに随分ネタになりまして」
ムンス「…。」
マテ「…。」
二人の間に流れる長い沈黙を、ダビデが注意深く見守った。
マテ「何か…他にお話でも?」
ムンス「そのうち食事でもしましょう。ボトン会社に関心がありますので」
マテ「いつでも歓迎します」
ムンスは会釈すると、最後にもう一度マテと目を合わせ、彼の前を後にした。
+-+-+-+
ダビデと二人、その場に残されると、マテはふっと力を抜き、ポケットに手を入れた。
マテ「チェチーム長を過小評価していたようだ」
ダビデ「…。」
マテ「絶対に来たかったパーティーなんです。チェチーム長が招待されてると知っていたら、一緒に行こうと頼んだのに」
ダビデはマテと同伴したキジをチラリと振り返る。
ダビデ「トッコ社長ならではの方法でちゃんといらっしゃったじゃないですか」
マテ「そんじょそこらの家柄じゃなさそうですね。ビックリ仰天だ」
ダビデ「会長はうちの父がやっていた釣り場の常連だったんです。いらっしゃるたびに魚を奮発していたから、目をかけてくださるんですよ」
マテ「…。」
会場を見渡したマテは、キソクが一人でグラスを手にしているのに気づく。
マテは意を決してキソクに近づいた。
マテ「あの…」
キソク「?」
マテ「母が会長のことをよく話していました。実際にこうしてお会いすると、どう申し上げればいいか…」
キソクは何も言わずに俯いた。
マテ「私の母はキム・ミスクです」
キソク「…。」
マテ「…。」
キソクが何か言おうと口を開けたその瞬間、「トッコ・マテ?」と女性の声がした。
マテ「?」
キソク「?」
そこに立っていたのは、一度会ったことがあるジェッキの友人だ。
ジェッキの友人「やっぱりそうだわ。ヘアスタイルが変わったから気づかなかったわ」
マテ「!」
ジェッキの友人「招待状まで配ったのに、ジェッキとは破談になったんでしょう?」
マテが慌ててキソクの表情を覗った。
ジェッキの友人「気になってたんです。ジェッキは自分から振ったとか言ってたけど、マテさんが振ったんじゃないんですか?」
マテ「…何をおっしゃってるのか」
そこへタイミング悪く「何してんの?」とやって来たのがキジだ。
キジ「誰?この女の人」
ジェッキの友人「ミョミと付き合ってるって聞いたけど?」
マテ「…。」
ジェッキの友人「今日はまた若いお嬢さんといらっしゃったのね」
マテ「…。」
黙って見ているキソクの前で、マテは対処に困り、ただただ狼狽えるばかりだ。
そこへホンランがやって来てキソクに声を掛けた。
ホンラン「(キソクに)キム理事にご挨拶なさってください」
「ここは会長がいらっしゃるような場所ではないと思いますが」ホンランは苦笑いして、マテを見上げた。
またしてもキソクはマテの前を無言で立ち去る。
#あー 開始5分にして訳すの辛くなってきた。こういうの一番苦手。
だいたいパーティーのシーンで楽しい思いしたこと殆どない。
愕然と立ち尽くすマテを鼻で笑うと、ジェッキの友人もその場を離れた。
+-+-+-+
会場を出たマテはどっと疲れが出たように看板にもたれかかった。
ホンラン「涙なしには見れないわ」
近づいたホンランが声を掛ける。
マテ「…。」
ホンラン「あなたが間違いなく庶子なら、待ち焦がれていた父子の対面のはずなのに、女性たちの間でカサノバになった姿が第一印象になったわね」
マテ「…。」
ホンラン「気づいてももらえなかったようで、随分とショックでしょう」
マテ「励ましのお言葉だと受け取っておきます」
ホンランはふっと笑った。
ホンラン「楽しいMGナイトではあるけれど、犬やら牛やらゴミくずが混じって品が落ちたわ」
マテ「ゴミくず同然だからって…犬や牛だと?」
ホンラン「勘違いしているようだからもう一つ言っておくわ。駄菓子の袋だろうとブランドバッグだろうと、ゴミはゴミ。中身は関係ないわ」
マテ「…。」
ホンラン「楽しいパーティーを」
ホンランはマテの隣をすり抜け、姿を消した。
マテ「…。」
+-+-+-+
目に涙を滲ませ屈辱に堪えるマテの姿を、パーティー会場からじっと見ていたのはダビデだった。
彼の元へキソクが戻ってくる。
キソク「”おじさん”とは何だ。叔父でもいいし、何なら兄でもいいじゃないか」
ダビデ「出生の秘密を明かす場ではないと思ったので。父の釣り場の常連客だってことにしました」
キソク「まぁ、それなら仕方なかろう。私と釣りでもしなきゃな」
キソクはダビデと顔を合わせないまま、独り言のように話した。
ダビデ「なぜお呼びになったんです?」
キソク「会いたかったからだろう。(ダビデをチラリと見る)死んでも来ないと思ったがね」
ダビデ「気になることがあったんです。なぜボトン会社に入ったのか聞かれたときに勘づくべきだったのに…」
キソク「…。」
ダビデはキソクの横顔を窺う。
ダビデ「トッコ社長は僕の腹違いの弟だという噂ですが」
キソク「腹違いの弟よりも、まず腹違いの兄を大事にしたらどうだ?」
キソクの視線の先を振り返ると、そこにはムンスの姿があった。
キソクは少し声の調子を落とす。
キソク「準備はすっかり整った。それを知らせたくて呼んだんだ」
ダビデ「…。」
キソク「そろそろお前の場所で、お前の名で生きてはどうだ?ジュナ」
ダビデ「!」
キソク「…。」
ダビデ「僕はジュナではなくダビデです」
「やっぱり僕はパーティーって柄じゃないですね」ダビデは急に居心地が悪くなったように、「先に失礼します」と足早に会場を後にした。
+-+-+-+
冷え込む街の中を一人歩くマテの足取りは重かった。
マテ(心の声)「母さん、見たかい?俺、バカみたいだったろ?母さん、俺、ホントにこんな風にしかなれないのかな…。ホントに俺、ゴミくずなのかな…」
携帯が鳴り始めた。
ポケットから取り出した携帯の画面には「キム・ボトン」。
彼は拒否ボタンをプッシュし、力なく冬空を仰いだ。
+-+-+-+
マンションに戻ってきたマテの後に、待っていたボトンが続く。
ボトン「オッパ、どうして電話取らないんですか?私、心配でとにかく家の前で待ってたんです」
マテ「…。」
ボトン「オッパ?」
マテはソファまでたどり着くと、何も言わずに倒れこんだ。
ボトン「オッパ、具合悪いの?」
マテ「…。」
ボトンは目を閉じたマテの額に手を触れた。
ボトン「きゃっ!熱だ!オッパ、大丈夫?」
+-+-+-+
マテは依然として何も言わず、ソファで毛布にくるまっていた。
マテ「…。」
ボトン「薬は飲んだから早く寝てください。明日の朝また来ますね」
マテの顔を覗きこんでそう言うと、ボトンは体を起こした。
マテ「行くな…」
ボトン「?」
マテ「眠るまで行くな。待っててくれ」
「オッパ…」ボトンの声に心配の色が濃くなった。
ボトン「オッパ、今日何かあったんですか?どうしてそんなに元気ないの?」
マテは返事を拒否するように目を閉じる。
ボトン「…。ねぇ、オッパ。私、打ち明けることが一つあるの」
マテが目を開いた。
ボトン「何日か前、会社にホン・ユラが来た時なんだけど…、その時、私もそこにいたの」
マテ「…。」
ボトン「盗み聞きするつもりじゃなくてね、財布が落ちたのを拾おうとしたら、オッパとホン・ユラが入ってきたから…どさくさ紛れに聞いちゃったんです」
マテ「全部?」
ボトン「…。(頷く)うん。全部」
※このシーンの静かなマテ、たまらんよね。
マテはボトンの告白にも驚くことなく、じっとまっすぐ彼女を見つめた。
ボトン「オッパがMGグループ会長の息子だって。それで今日のパーティーに何が何でも行きたがってたこと」
マテは彼女を見つめていた目を静かに伏せた。
マテ「驚いたろ…」
ボトン「そりゃ驚いたよ。それに…すごく落ち込んだ」
マテ「何で?」
ボトン「何でって?!行けば行くほど険しい道だもん」
マテ「…。」
ボトン「ただでさえこんなに素敵なオッパなのに、大企業の息子だなんて。ゲームオーバーだよ」
ボトンはがっくりと頭を垂れる。
マテ「良かった。これで静かになるな…」
「チッ」ボトンが恨めしそうにマテを睨む。
マテ「だからって何だ…。ゴミくずなのに」
ボトン「何言ってんの?オッパが何でゴミくずなのよ?」
マテ「会ったんだ。父さんに…」
ボトン「!」
マテ「けど、気づいても貰えなかった」
ボトン「…。」
マテ「父親の前ではただのゴミくずだった」
ボトン「言えばいいじゃない!”僕が会長の息子トッコ・マテです!”」
マテ「父さんは母さんと約束したんだ。俺が父さんに会いに行くとき、暗号を持って行くって」
ボトン「暗号?」
マテ「…。」
ボトン「だからあのとき、おばさんが私に暗号のこと話さなかったか聞いたんですか?」
マテ「…。」
ボトン「オッパはどうして知らないの?」
マテ「ホン・ユラが持ってる。暗号を」
ボトン「えぇっ?じゃあ教えてもらえばいいのに!」
マテ「…。」
ボトン「私がぶん取ってくる!」
マテ「いきり立つなよ。簡単に渡す女じゃない」
ボトン「はぁ…。私はオッパがお父さんと幸せになってほしいだけなんだけど…。オッパは財閥の息子になって、私は…」
途方に暮れて視線を逸らしたボトンを、マテはそれでもまっすぐに見つめた。
マテ「辛いか?」
ボトン「超辛いよ!私。、オッパの足の爪の垢ほどにもなれそうにないもん」
マテ「…。汚い例え方すんなよ。足の小指にしてやる」
ボトン「ホント?!」
マテ「左足だけな」
「Thank you!」ボトンは嬉しそうに笑った。
ボトン「もう寝てください。寝ないと熱が下がらないから」
マテは静かに目を閉じる。
生気を失った彼の顔を、ボトンは心配そうに見つめた。
+-+-+-+
窓から差し込んだ日差しに、マテは目を覚ました。
起き上がると、ふと異変に気づく。
左足の小指の爪に赤いマニキュア。
マテ「…。」
「足の小指にしてやる」「ホント?!」昨日の会話を思い出し、マテは溜め息をついた。
マテ「何だよ…。キム・ボトン、頭の痛いやつだ」
そう言ってマテはふっと笑う。
そこへ携帯電話が鳴った。
「そのまま帰ってどーすんのよ!!!」
電話の向こうから怒鳴り声が飛んでくる。
キジだ。
マテ(電話)「黙って帰ってすみません。昨日はお時間をくださってありがとうございます」
「では」淡々と話すとマテは電話を切ろうとした。
キジ(電話)「パーティ1回のために1億蹴ったくせに、入るなり何で逃げ出したわけ?」
マテ(電話)「もうお辞めになってください。僕は食事をご一緒して差し上げたし、キジさんはパーティーに同席してくださったから、僕たち精算は済んでるんです」
キジ「また食事しましょうよ!1億、綺麗な箱に詰めて送り直すから」
マテ「…。ご存じないんですか?僕が誰と付き合っているのか。もう終わりにしましょう。幼いお姫様」
「キャハハ!」キジは甲高い笑い声を上げた。
キジ「笑っちゃう。誰?ミョミのこと?連絡つかないはずだけど?」
マテ「?」
キジ「しっかりなさいよ、王子様。ミョミはね、あんたを売っぱらってフランスに行っちゃったわ。恋人のくせにミョミがどこにいるかも知らないの?」
マテ「僕を…売ったって?どういう意味です?」
キジ「フランスに映画撮りに行ったわ。その映画、コンセプトはいいんだけど、収益が見込めないからってスポンサーがつかなかったのよ。3年待ってボツになりかけたその時に、うちのお父さんが投資したの。ミョミをヒロインにする条件でね」
「ミョミがこう言ったって」唖然とするマテをよそに、キジの話は続いた。
キジ(電話)「”この作品でカンヌの女王になりたい”ってね」
マテ「…。」
キジ「あんた捨てられたの。自分の未来の為に、あんたを私に売り渡したってわけ」
マテ「…。」
キジ「あんたともう付き合わない条件で、SSグループが投資してやったのよ」
マテ「…。」
キジ「もしもし?ちょっと、マテ!」
マテは放心状態で電話を持つ手をダラリと下ろした。
「マテ!ちょっと!!!」キジの金切り声が漏れ聞こえてくる。
マテはすぐにミョミに電話を掛けた。
「お客様は現在電話を受けません」無味乾燥なメッセージにマテは絶望した。
マテ「本当に最高のタイミングだな…。生かす時も殺す時も。キム・インジュンはあなたを利用し、あなたは僕を利用してフランスへ渡った。まさにこのタイミングで…」
+-+-+-+
ミョミは自分の道を進む車の中でマテを思っていた。
ミョミ(心の声)「マテ、私はあなたを有名にはしてあげられたけど、力になってはあげられないわ。今あなたに必要なのは、力を貸してくれるキジのバックよ」
+-+-+-+
ハラハラしながら見守る秘書の前で、母親がキジの手にスプーンを握らせる。
キジ母「何食抜くつもり?早く食べなさい!」
キジはスプーンを乱暴にテーブルの上に放り出した。
キジ「だから連れて来てってば!」
キジ母「嫌だって言うんだから!あの男が嫌だって言うのに、無理やりさらって来る?」
キジ「知らない知らない!何とかして連れて来てよ!連れて来るまでご飯食べない。飢え死にしちゃうんだから!」
キジ母「もう!」
キジは呆れて溜め息をついた。
キジ母「私ったら、何であんたみたいな娘を産んだのかしら」
キジ「…。」
+-+-+-+
「社長」
トヒが呼ぶ声に顔を上げると、そこに立っていたSSグループの秘書が、ピザボックスを抱えて意味深に微笑んだ。
うんざりした表情で、マテは再びPCに視線を戻す。
その次はスタッフたちとミーティングをしている最中だ。
二人に増えた彼らは、今度はピザボックス三段重ねを抱えて現れる。
マテは手に持っていた書類を放り出すと、社長室へと消えた。
トヒ「箱3つ?!さすがカン・キジ。スケールが違うわ」
「ミョミとは終わったみたいですね」トヒがボトンをつつく。
ボトン「ご自分のことをしっかりなさってくださいよ、チェ・トヒさん!」
+-+-+-+
社長室の仕切りがノックされる。
マテ「?」
ガラスの向こうでSSグループの秘書が五段重ねのピザボックスを指さしていた。
マテは立ち上がると、皆が緊張して見守る中、社長室の扉にちかづき…
…ブラインドを閉めた。
+-+-+-+
朝。
厳しい表情で身支度を整えると、マテはある場所に向かった。
SSグループ、カン会長の元だ。
カン会長「綺麗な顔をして…。生涯食べていくのに苦労しないだろう」
マテ「…。」
カン会長「ほぅ、私が呼んでいないのに来たのかね。こんな不躾者は生まれて初めてだ」
マテ「…。」
カン会長「それで、用件は?」
マテ「お嬢さんと今後も付き合うようにとメッセージが届きました」
カン会長「それなら付き合えばいいじゃないか」
マテ「もっとください、それなら」
カン会長「!」
マテ「…。」
カン会長「一体あといくらくれと言うんだ?」
マテ「SSホームショッピングをください」
カン会長「?!」
感情も熱意もこもらない態度で用件だけを話し、マテはふたたび口を閉ざした。
「何をくれと?!」カン会長は立ち上がると、マテから視線を離さずに秘書を呼んだ。
カン会長「キジには人形が消えたと言って、人形はどこかに埋めてしまえ」
「もう一度言ってみろ。何をくれと?」カン会長がマテに問いかけると、マテは顔を上げてまっすぐに会長を見た。
マテ「…。」
カン会長「慎重に答えることだ。全てぶち壊しにしたくなければな」
マテは立ち上がった。
マテ「SSホームショッピングをください」
カン会長「…。ホン秘書、連れて行け」
秘書たちが腕に手を掛けると、マテはそれを振り払う。
そして、最後まで会長の目を見据えると、自分の足でその場を後にした。
カン会長「卑しい奴め。ホームショッピングは街のスーパーか?」
カン会長の謗言を背に、マテはそれでもひるまずに歩いた。
マテ(心の声)「ナ・ホンランを相手にするためには、SSホームショッピングが必要なんです。会長」
+-+-+-+
「そろそろ始めてください」
ホンランは"キム常務”なる人物に電話をすると、短くそう告げた。
ホンラン(電話)「期待していますわ」
電話が切れる。
ホンラン「蝿がこれ以上増える前に、まずはゴミから片付けようかしら」
+-+-+-+
ムンスの電話が鳴った。
発信者を見て、ムンスは少々驚いて電話を取る。
ムンス(電話)「キム常務、どうなさっていました?
キム(電話)「代表、世間というのは万事、実に厳しいものですな」
ムンス「飲んでいらっしゃるんですか?」
キム「えぇ。飲んでますよ」
「代表の過失じゃありません」キムは妙なことを言い出す。
キム「代表には最後にこれだけは言っておきたかったんです。ご自分を責めないでください」
ムンス「何をおっしゃってるんです?最後って?今どこです?!」
+-+-+-+
ムンスがキム常務のいるホテルの部屋に駆けつけた。
扉が開くと、当のキム常務が頭を下げた。
ムンス「常務、大丈夫ですか?そんな気弱なことをおっしゃったら…」
常務の肩越しに、部屋の奥にいる人々の姿が目に入ってくる。
彼らは山のような札束を前に、ムンスを見てニヤリと笑った。
ムンス「!!!…常務?」
キム「…。」
ムンス「これは一体…」
そこへ廊下の向こうから刑事たちが現れた。
一人がまず入り口にいるムンスの腕を掴むと、残りの面々が部屋へと入っていく。
刑事「不法賭博により緊急逮捕します」
+-+-+-+
ムンス逮捕のキジは速報としてすぐさまネットに広がった。
【MGグループパク・ムンス代表 不法賭博容疑で緊急逮捕】
記事を見たユラは大きな衝撃を受けるとともに、起きている事態を察した。
彼女がその場で電話を掛けたのはホンランだ。
何度コールの音が響いても、ホンランが電話にでることはなかった。
ユラ「ダメ、ダメよ…!」
+-+-+-+
マテを除き、ボトンたちスタッフはいつもどおり、会社で顔を突き合わせていた。
一人、デスクに座っていたトヒが呟く。
トヒ「ミョミとこんなことになっちゃったなら、全国的にとんだ恥さらしですよね」
ボトン「…。」
トヒ「何てことなの、社長!こんなのハリウッドでも見たことにないもの。私、社長のこと過大評価し過ぎたわ」
「トヒさん」ボトンが声を掛ける。
ボトン「傷害で警察に捕まったことあります?私、あるんだけど」
ボトンは何でもないような口調でそう言うと、トヒに近づく。
ダビデが慌てて立ち上がると同時に、ボトンがトヒに向かって腕を振り上げた。
ボトン「私と一緒に行く?!」
ダビデ「ボトンさん、ダメだよ!ダメだって!」
ボトン「ちょっと離して!調子に乗っちゃって…!」
「何だ?」そこへ入ってきたマテの声に、皆がハッとして振り返った。
マテ「どうしたんだ?」
ボトン「あぁ、社長、いらっしゃったんですね。気にしないでください。新入社員がしっかりしないから…」
「トヒさん」ボトンはマテの前で続ける。
ボトン「本人はどれだけ辛いと思う?失恋男だって全国民的に赤っ恥状態なのに!」
マテ「!」
トヒ「あ、そうだ!社長も今日、キジのパーティーに行かれるんですか?」
マテ「…。」
ボトン「パーティー?」
トヒ「カン・キジがパーティーするって自分のSNSに上げてるんですよ。それが記事になってるの見たんだけど、社長の名前もありましたよ、セラーリストに」
マテ「…。」
「社長」トヒは言い聞かせるように呼びかける。
トヒ「ドレスコードに合う衣装は準備されました?私は個人的にセクシーなスパイダーマンの衣装をオススメしますぅ♪」
マテ「チェ・トヒさん」
トヒ「?」
マテ「会社の業務よりも社長の私生活に関心があるようだな」
トヒ「…。」
ボトン「そのとおり!」
「皆、仕事を続けて」マテがオフィスを見渡した。
トヒ「(ニヤリ)ひょっとして、招待されてないんですか?」
マテ「…。」
マテは何も言わず社長室に向かった。
+-+-+-+
辛抱強く待っていたマテは、それでも時計をチラリと見た。
マテ「要求しすぎたかな?」
そこへボトンが入ってくる。
ボトン「オッパ社長~♪ 夕食は?」
マテ「そっちで食べてくれ。俺はいい」
ボトン「失恋の痛みは食欲で癒やしましょうよ」
マテ「おい、俺が手放してやったんだって何度言えば分かる?!」
ボトン「分かりましたよ^^」
マテ「あの…キム・ボトン」
ボトン「はい♪」
マテ「前に言ったよな。俺が韓国トップの大企業よりも大事だって。それ、根拠はあるのか?」
ボトン「根拠は…」
マテ「…。」
ボトン「…ありませんよ~。でも、確信はありますよ。私だけの♪」
そこへマテの電話が鳴る。
キジからだ。
キジ(電話)「パーティーの記事、見たはずだけど」
マテ(電話)「何のパーティーです?」
キジ「いいわ、知らなかったってことにしてあげる。早く来て。招待してあげる」
マテ「大事な会議があるんです。時間も遅すぎる」
キジ「パーティーのことは知らないくせに、開始時間は知ってるわけ?」
「…。」マテは目を閉じて己の失言を呪った。
キジ「リムジンを迎えにやるから、それで来て」
マテ「楽しいパーティーをどうぞ。僕は興味を失くしたので」
キジ「何ですって?!」
マテ「会長にお訊きください。なぜ興味を失くしたか」
キジ「お父さんにSSホームショッピングをくれって言ったこと?」
マテ「…。」
キジ「今そんなこと言って叶うと思ってんの?」
マテ「…。」
キジ「パーティーに来て。そしたらSSホームショッピングのこと、私がお父さんによく言ってあげる」
マテ「話しなら僕が十分にしました」
キジ「SSホームショッピング一つなくたって、うちのお父さんはビクともしないわ。でも、カン・キジがいなかったら死ぬって言うはずよ」
「どういう意味か分かる?」キジが言った。
+-+-+-+
マテが社長室を出てくる。
トクセン「社長、お帰りですか?」
マテ「あぁ、もうこんな時間か。パーティーがあるんだ。リムジンが迎えに来るから」
ボトン「…。」
トクセン「リムジン?!マテ兄、俺も乗せてくれよ。一度も乗ったことないんだ」
マテが出て行くと、ボトンは溜め息をつき、がっくりと頭を垂れた。
+-+-+-+
「ボトン、お前も行きたくて落ち込んでんのか?」
ボトンうさぎにダビデが話しかけると、ボトンがムッとして顔を上げた。
ボトン「そんなんじゃないですって!パーティがどんなに楽しいだろうなぁ~って、羨ましくて落ち込んでるように見えます?」
ダビデがボトンの表情を横目でうかがう。
ボトン「ただ…ほんのちょっと気になるだけ」
ダビデ「(ボトンうさぎに)ふーん、気になってるのかぁ」
ボトン「…。」
ダビデ「(ボトンうさぎに)それなら、かっこいいダビデオッパが連れてってやろうか?キジのパーティーに」
ボトン「?」
ダビデ「(ボトンうさぎに)何で返事がないんだ?失語症か?じゃ、オッパは帰ろうっと♪」
立ち上がろうとしたダビデを慌ててボトンが止めた。
ボトン「行きます。連れてってください^^;」
ダビデ「ホントに行きます?」
ボトン「うん^^」
ダビデ「あはははははっ^^ 行こう!」
+-+-+-+
真っ白のリムジンがやってくると、停泊している船の前に停まった。
降り立ったマテは辺りを見渡すと、襟を正し、気合を入れて足を踏み出した。
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
長かったー
でも、マテが益々美しくて、大変な目の保養でございましたわ♥
キジに関してはこれまでだいたい原作通りです。
ただ、原作のボトン会社は通販から運輸業界にも進出しているので、SSグループに要求したのはSS通運でした。
ちなみにキジの仮装パーティーにはレディー・ガガも駆けつけたとか^^;
そして、この間もチラッと書いたとおり、原作ミョミがマテの前に現れたのは「タイミングを知る女」ではなく、「先を行く女(先見の目を持つ女)」としてでした。
インジュンの蜘蛛の巣から二人揃って逃れた経緯については原作もドラマも同じです。
身に付けるもの、使うもの全てがブームになるミョミに、マテは次は何がヒットするのか情報を得ようとしたり、大衆が求めているものがよくわからないと相談します。
ミョミは「歩く人が多ければそこに道ができる。私がしていることはその人々をよく見て、一歩だけその先を歩くこと。常に振り返り彼らをよく見る。すると、驚くことに彼らは私を見ているのでなく、はるかに先を見ている」とアドバイスします。一番平凡な人々が一番多く望んでいる方向。そこに道ができると。
さてさて、後半をみる前にここで一度大事なことを振り返っておこうかな?
・マテは父親がパク・キソクだと聞かされている。ホンランには最初から庶子だと名乗って会った。
・ダビデも父親がパク・キソクであり、父子同士それを知っているが、周囲には内緒だ。
・マテが父親に会いに行くには、父と母の間で交わした暗号が必要だ。
・キソクは実はマテのことをとても気に掛けている。
・ホンランと結婚する前からキソクに子どもがいるのは周知の事実のはず。(古いテレビ映像で解説員3人が話していましたよね?)
・ホンランはマテが持っている懐中時計とそっくりなものを持っている。新しい時計(未来)より、まだ古い時計(過去)に固執しているようだ。
・ホンランはNY時代に息子を一人産んでいる。父親は不明。現在、ユラはその息子を探している。ホンランの兄からどうやらその息子について情報を得た模様。
こんなところかな~。
まだ後半やらなきゃいけないのに喋りすぎた^^;
ありがとうございました。
返信削除パーティーの場面ではひどいことを言われてるんだろうなっていうのは想像してましたがここまでとは(T-T)
淡々と話すマテがステキでした。
お忙しいとは思いますが次もよろしくお願いします。
ありがとうございます(*´∇`*)
返信削除いろいろ 整理しながら見てないと、緊迫したシーンが ??なんで?ってなってしまいます。。。
ボトンとの静かなシーン
ボトンに心を許してるマテが なんとも愛しいです~
ボトンちゃん♡仕返しのチャンスも
小指にマニュキアで♡
可愛いですね♪
いつも読ませていただいています。ありがとうございます。
返信削除ほかのサイトでざっくりした訳は読んだのですが、yujinaさんの小説のような文章を読んでいると感情がぐっと入ってきます。
これからも楽しみにさせていただきます。
いつもありがとうございます。yujinaさんの翻訳が待ちどうしくて毎朝チェックしてしまうほどです。
返信削除会話だけでなくその場面の状況もこと細かく書かれていて、まるで台本をよんでいるようです。
先に見た映像を思いだしながら読むことができてとっても有難いです。
私もグンソクさんのファンになり少しでも彼の言うことを理解したいと韓国語の勉強を始めて1年半になりますが、
ドラマを見ていても何を言っているのか挨拶程度しかわからず、
分からなすぎてイライラするほどです。
yujinaさんは恐ろしく勉強されたんだろうなと思います。
私もめげずにこれからもグンソクさんを応援していく中で韓国語の勉強も頑張っていこうと思います。いつかドラマを見て大体のことが分かるように。
これからもお忙しいと思いますがお体に気をつけて頑張ってくださいね。
楽しみにしています。
こんばんは☆彡
返信削除会長(キソク)は、マテのお母さんと話してるときは、マテのことを気づかっていたのに、パーティーでマテが挨拶したときに冷たく突き放したのは、何故なんですか?
傷ついたマテのことをなぐさめるボトンが、かわいすぎる(*⌒▽⌒*)
「行くな!眠るまで待っててくれ!」なんて、私も言われたいよ(#^_^#)
後半も楽しみに待ってますo(^-^)oワクワク
ありがとうございます
返信削除「最後のまとめ」が、素晴らしい!
こんがらがってたのが、なんとなくわかった感じです
漠然とみてるのとでは大違いです
言葉って大事ですね
ありがとうございます!私の知りたかったことも全部入っていて
返信削除とても嬉しいです。 最初入り込めなかったマテの世界に
今はどっぷりはまっています。
これからもよろしくお願いします。
Yujinaさん いつも 有難うございます!
返信削除Love Rainから お世話になっています。
まず自力で 字幕無しをなんとか 殆ど聞き取れないまま理解しようとしてますが、
やはり、 Yujinaさんのあらすじを読ませて頂くと あ~そうだったのか!と
自分の勘違いな解釈に気付いて まだまだだと奮起しています^^
本当に すてきな あらすじで、 原作のお話も入れてくださり、興味倍増しています。
これからも 宜しくお願いします<(_ _)>
いつも素敵な翻訳ありがとうございます!
返信削除原作のご紹介もしてくださって、ますますおもしろくなってきました♬
原作に忠実な演出もみてみたかったですが、16話ではやはり難しいんですね…
ラブラインや出生の秘密ももちろんおもしろいのですが、マテが力をつけて立ち向かって行く姿がもっとみたいです(*^^*)
原作とってもおもしろそうですね♬