#Googleマップにちゃっかり映っててほしい(笑
+-+-+-+
「あなたは私が捨てた息子よ」
ホンランの衝撃の告白に、マテは呆れて鼻で笑った。
マテ「挙句の果てに出生の秘密まででっち上げるんですか?冗談が過ぎるでしょう!」
ホンラン「冗談であってほしいと…夜通しどれほど願ったか。一睡もできなかったわ」
マテ「…。」
ホンラン「茫然自失で苦しいのは私も同じよ。それでもこうやって気持ちを奮い立たせて出てきたのは、ひょっとして期待するんじゃないかと気に掛かったから」
マテ「…。」
ホンラン「実の息子であるというどんでん返しで、私が喜んで迎え入れるんじゃないかと思っているなら、大きな誤算よ。私はそんなつもりはないわ」
じっと黙っていたマテが、静かに口を開いた。
マテ「今、一人の人間の人生が大きく揺らいでいる瞬間なんです。僕に言ったこと…全て事実なんですか?」
ホンラン「失った息子なら”良かった”と言うし、どうしようもない事情で手放した息子なら”悪かった”という言葉が似合うわね。けれど、私はどちらでもない」
マテ「…。」
ホンラン「後悔もなく、未練もない。ただ心苦しいだけよ」
マテ「!」
ホンラン「ホン・ユラがあなたをネタに取引を持ちかけてきたわ。私がMGトップの座を降りれば、あなたの出生の秘密を伏せてやると」
マテ「ホン・ユラも…この事実を知っていたって?」
ホンラン「警告したはずよ。どうせあなたは捨てられる運命だと」
マテ「…。」
ホンラン「ネット小説で攻撃してきたけれど、ホン・ユラがどんな手を使っても到底及ばないわ。二人共、忘れないことね。私がすなわちMGそのものだと」
マテ「…。」
#衝撃の事実を聞いたにもかかわらず無口なマテと、逆にペラペラとよく喋るホンラン。マテのショックの深さと、ホンランの不安が伝わってきます。
+-+-+-+
ボトンは引っ越しの準備をすっかり終え、鞄を掴んだ。
ダビデが部屋を見渡す。
ダビデ「これで…全部かな」
その声は寂しさで消え入りそうだ。
ボトン「服しかなかったから」
ダビデ「(頷く)車に載せましょう。僕が送りますから」
ボトン「いえ、トラック呼ぶつもりなんです」
ダビデ「鞄二つに何でトラックなんか…」
「あれ…」ボトンは苦笑いして向こうの壁を指した。
ダビデ「?」
そこには巨大マテ像がどっしり鎮座していた。
ダビデ「…。何とかして載せましょう」
ボトン「いえ、自分で持っていきます」
ダビデ「載せてみて、ダメならそのとき呼べばいいんです」
ボトン「…。」
#巨大マテ像をボトンのために運んでやると言い張るダビデ。ここにも人間関係の縮図が…。
+-+-+-+
「説明してください」
マテはため息をつくように声を絞り出した。
マテ「そうやって怖気づくくらいなら何故産んだのか。…何故捨てたのか」
ホンラン「まるであなたみたいな人だったわ。あなたにそっくりな人」
マテ「…。」
ホンラン「魅力的な顔。天使のような笑顔…。そうやって私の人生に入り込んできて、ずたずたに引き裂いたわ」
マテ「…。」
ホンラン「私が財閥の娘だと知りながら近づいて、私をこっぱみじんにして…消えた」
マテ「…。」
ホンラン「あなたを歓迎し得ない理由、説明がついたわね?」
マテ「僕という存在は…そんなふうに説明がつくものなんですね…」
愕然と沈むマテを見つめるホンランの目にも涙が滲んでいた。
ホンラン「選択肢を二つあげるわ」
マテ「?」
ホンラン「一つ。この国から去る」
マテ「!」
ホンラン「暮らしたい国を選ぶのよ。不自由なく暮らせるようにしてあげるわ」
マテ「…。」
ホンラン「あなたはここでは生きられない。地獄になるはずよ」
「私がどこまでも苦しめるから」ホンランは息子を見据えてそう言った。
ホンラン「何もかも上手くいかない人生を送ることになるわ。だから最初の条件を受け入れなさい」
「それを受け入れられないなら、二つ目」ホンランが続ける。
ホンラン「地獄で悶え苦しみながら生きるくらいなら、永遠に消えてしまうのはどうかしら」
マテ「…。」
ホンラン「この国で持ち堪えるのはそのくらい辛くなる…その極端な例えよ.」
「条件は理解できたわね?」ホンランは淡々と話し終えると、衝撃に震えるマテをじっと見つめた。
+-+-+-+
車の上に巨大マテ像を積み、ダビデはボトンを乗せて車を走らせていた。
ゆっくり走るダビデの車に、後ろからクラクションが鳴る。
ボトン「もう少しスピード出しちゃダメですか?」
ダビデ「(上を指し)そうしたらこれ、飛んじゃいますよ」
ボトン「あぁ…、だからトラック呼ぶって言ったのに」
ダビデ「気に入らないんですか?」
ボトン「いえいえ^^;ゆっくり行きましょ」
+-+-+-+
ホンランと別れて外に出てくると、マテはやっとのことで車に辿り着き、そこでがっくりとうなだれた。
後ろから出てきた女性が彼の後ろ姿を見守る。
ヨミムだ。
彼は身を引きずるように運転席に潜り込む。
ヨミム「あれで運転したら事故起こすわ」
ぼんやりとエンジンスイッチを入れると、手元が狂いワイパーが動き出した。
マテ「…。」
背を向けようとしたヨミムはやはり気になって立ち止まった。
放っておけず、彼女は運転席のドアを開ける。
マテ「?」
霞んだ視界の中に見知らぬ女性の姿が見える。
ヨミム「降りて」
+-+-+-+
ヨミムに運転を任せ、マテは助手席でぼんやりと外を眺めていた。
車窓からの風景はいつもと少しも変わらず、目の前をあっという間に流れていく。
ヨミム「どうせ同じ方向だったから、お礼はいりません。悪いと思ったら代理運転料だけくださればいいんです」
マテ「…。」
ヨミム「どこに停めればいいですか?」
マテ「…。」
自分の話が聞こえているのかいないのか、何も答えないマテの様子をチラリと窺うと、ヨミムはそのまま運転に戻った。
+-+-+-+
「わぁ♪」母が用意してくれた部屋に入ると、ボトンは感激の声を上げた。
ボトン「お母さん!」
母「あたしに礼を言うこたぁないよ。テシクが姉ちゃんの部屋を綺麗にしてやろうって。自分は床で寝てるんだ」
テシク「(澄まし顔)」
母「テシクはベッドもないんだよ」
ボトン「ちょっとー、キム・デシク!あんたどうしちゃったのよぉ、お姉ちゃんを感動させちゃって!」
テシク「さっさと嫁に行け!そしたら俺がこの部屋引き取るからさ♪」
ボトン「^^」
母「あはは、そりゃぁいいね!」
そこへ…
「よっこいしょ」とダビデが巨大マテを運んでくる。
ボトン「(ドキッ!)」
母「ありゃ!こんなもの持ってくるなんて!!!」
ボトン「チーム長の部屋に置いとくわけにいかないでしょ」
カッとなって娘を叩く母を止める弟。その後ろでオロオロしているダビデ^^;
母「チーム長さん、すみません!何でもかんでもさせちゃって」
ダビデ「重くないですから^^;」
テシクが感心して巨大マテを眺めた。
テシク「どうやって運んだのか気になるな」
ダビデ「ダビデ兄に任せてよ」
テシク「♪」
+-+-+-+
引っ越しを手伝ったダビデに、ボトンの母は飲み物やフルーツを振舞っていた。
母「チーム長さん、寂しくなるだろうねぇ」
ダビデ「あぁ^^;」
母「最初から居なきゃ平気でも、いなくなれば寂しくなるものだからさ」
ダビデ「もともと一人で暮らしてましたから」
母「近くなんだから、たびたび遊びに来てください。ご飯も食べにね」
ダビデ「えぇ、お母さん」
母「それとも、テシクの部屋に来て暮らしたっていいんだ」
テシクがうんうんと強く頷いた。
ダビデ「…。」
母「うちのボトンのことだって引き受けてくれたのに、私だって息子が一人増えたくらいに考えるさ」
ダビデ「引き受けたなんて…。家賃だってちゃんと貰ってましたよ」
テシク「5万ウォン?」
母の平手が息子の頭に飛んだ。
母「正直ねぇ、知らんぷりしてたけど、あんなの家賃だなんて言えないよ。ボトンの事情も理解して、うちの体面を立ててくれたんだ」
テシクが黙って頷いた。
母「チーム長さんは…本当にいい人ですよ」
ダビデ「何をおっしゃるんですか。じゃホントに毎日来ますからね!ご飯たっぷり食べさせてくださいよ」
母「あらまぁ!一人分余計に作るくらい何でもないよ!」
ダビデはボトンの母と笑いあった。
テシクがボトンの部屋の様子を窺う。
テシク「キム・ボトン、何で来ないんだ?」
+-+-+-+
待てど待てど呼び出し音が鳴るばかり。
ボトンは溜息をついた。
ボトン「変ね。うちの社長オッパ、一日中連絡とれないなんて。心配だな…」
「何してんだ?チーム長さんがお帰りだって」テシクが呼びに来ると、ボトンも部屋を出た。
+-+-+-+
マテはユラの店に来ていた。
マテ「今日、ナ・ホンラン副会長に会ったんです」
ユラ「…。」
「変なこと言ってた…」マテはうわ言のように呟く。
マテ「俺が…あの人の息子だって」
ユラの視線がわずかに揺れた。
マテ「そのくだらない話、事実らしいけど…あんたも知ってたのか?」
ユラ「…。」
マテ「…。」
沈黙の中、二人の視線が静かに絡み合う。
ユラ「偶然分かったの」
マテ「いつから?俺に初めて会ったあのときから?」
ユラ「違うわ。少し前、ボトンさんのデスクの上にあった時計を見て分かったのよ」
マテ「それなのになぜ言わなかった?」
ユラ「…。」
マテ「なぜ俺に言わず、あの人のところへ行って取引を持ちかけた?」
ユラ「マテ!」
マテ「チェチーム長、ナ・ホンラン副会長よりも、俺が役に立たなくなったから?」
ユラ「知らせたくなかったのよ。傷つくはずだから」
マテ「俺が…パク・キソク会長の息子じゃなかったからか?」
ユラ「…。」
低く静かなマテの声は、どこまでも深い絶望と怒りに満ちていた。
ユラ「言い訳じゃないわ。あのときはマテがもう一人の庶子だと思ってた」
マテ「それならこれからどうなるんだ?あんたの刃は…俺に向かうのか?」
ユラ「私はただ走るだけよ。目的に向かって。あなたの事情に気を遣う余裕はないの」
マテの心が怒りで燃え上がる。
マテ「一体何をしてるんだ…。俺の人生はあんたの遊び道具か?!」
ユラ「質問の相手が違うんじゃない?」
マテ「!」
ユラ「あなたの母親、いいえ、あなたを育ててくれたキム・ミスクという人にするべきじゃないかしら?あなたが誰なのか知っていたはずなのに…。トッコ・マテが誰なのか知って育てたはずなのに」
マテ「…。」
ユラ「なぜ暗号なんか用意して、パク・キソク会長の息子だと思わせたのか…お母さんに訊くべきよ」
マテ「…。」
#ホンランの話といい、ユラの話といい、いくらなんでも正月の2日から見るような内容じゃないね…。残酷すぎる。
+-+-+-+
ダビデはボトンのいなくなった部屋の真ん中に立っていた。
悶々としながら行ったり来たりするうちに、彼はベッドに座り込んで溜息をつく。
ダビデ「寝たかな、ボトンさん。ボトンさんがいないからホントに静かだ…」
そこへメッセージ受信の音。
ダビデ「ボトンさん!」
ボトン(メッセージ)「ひょっとしてテント探してるんじゃないでしょうね?点検に行きますよ~!」
「なっははははーっ!」ダビデの喜びメーターがいきなり振り切った。
ダビデ「どうしよう~、ボトンさんに点検されちゃうよぉ」
ダビデはいそいそとベッドに潜り込むと、寝ているふりをした自分に向けてシャッターを切った。
+-+-+-+
ダビデ(メッセージ)「寝てましたよ」
ボトンの元にマヌケなダビデの寝顔が送られてくる。
ボトン「あはっ♪ もぅ~ウソっぽいなぁ。服も着替えてないもん」
ひとしきり笑うと、ボトンは思い出したように溜息をついた。
後ろを振り返ると、そこには巨大マテ。
ボトン「オッパ、どこで何してんのかなぁ」
+-+-+-+
マテはマンションに戻っていた。
若き日のミスクとキソク、二人の写真をじっと見つめる。
父と母だと信じて疑わなかった二人は、どちらも自分の親ではなかったのだ。
マテは倒れこむようにソファに身を沈めると、写真を胸に抱き、そっと目を閉じた。
自分の信じた両親のいる夢の中へ逃げ込むことが出来れば、どんなに良かっただろう…。
+-+-+-+
ヨミムはPCの画面を睨み、考え込んでいた。
そこには、昼間ひそかに会っていたホンランとマテの姿が大きく映しだされている。
『実の親子が対面…自ら明かす…トッコ・マテ 挫折』
写真の下にそう書き記すと、ヨミムは携帯に保存した音声ファイルを再生した。
「あなたは…私の息子よ」花瓶台に取り付けられていたマイクが、この重大な告白をハッキリと拾っていた。
ヨミム「ナ・ホンラン女史が自首しちゃったから、情報を売る相手もいないし。はぁ、面白くない」
彼女はもう一度写真にじっと見入った。
ヨミム「はぁ、何でこう気に掛かるのかな?捨てられた魂がまたひとつ生まれたわね…」
ソファに思い切りもたれかかると、ヨミムは呟いた。
ヨミム「とにかく生きるのよ。生きてれば…薄れていくわ」
+-+-+-+
手のひらの懐中時計を、ホンランは長い間見つめていた。
ゆっくりと手を下ろすと、それは彼女の手から滑り落ち、足元のゴミ箱に消えていく。
ちょうどそこへ入ってきたキソクは、驚いて彼女を見つめた。
キソク「あの子に…会ったのかい?」
ホンラン「えぇ。会いました」
ホンランはキソクと目を合わせず、淡々と答えた。
キソク「君…。全てのことは君と私の”業”だと思っているんだ。今からでも全てあるべき場所に戻そう」
ホンランが顔を上げる。
ホンラン「何をおっしゃっているんです?ようやく始まりなんです」
キソク「?」
ホンラン「全てはあなたとスルリの母親が招いたこと」
キソク「君!」
ホンラン「よくも私にこんなことを…。あの子をキム・ミスクの手で育てさせ、私の前に差し出した意図は何です?!」
キソク「私に言えずに、外国へ養子に出すしかなかった君の気持ちを汲み取ったんだ」
ホンラン「…。」
キソク「いつの日かあの子を想って辛くなったら、そのときは連れて来るつもりだった。だが、その時間がこんなに長くなってしまったんだ」
ホンラン「あなたは…最初から私に言うべきだったんです」
キソク「言ったら、あの子を守っていたかね?」
苦しみで胸が一杯になり、ホンランは夫から目をそらした。
キソク「時計を逆に回し続ける自分の気持ちに素直になるんだ」
ホンラン「…。」
キソク「苦しむのはもうやめて、前を向いて生きよう」
「私は…嫌です」頑なに視線を背けたホンランの目から涙が零れ落ちた。
ホンラン「マテというあの子の存在さえ身震いがするわ。あの子を見ると何もかも思い出すのよ。私を翻弄した兄たち…。私の全てを捧げたのに…結局は私を捨てたあの子の父親。何もかも…」
キソク「過去は過去にすぎないよ」
ホンラン「あなたも同じでしょう。どうせ私たちM&Aみたいなものだったんだから。もう精算するときが来たようだわ」
ホンランはキソクを残し、部屋を出て行った。
ゴミ箱の底から懐中時計を拾い上げ、キソクは溜息をついた。
+-+-+-+
翌日。
会社にやって来たボトンは、主の座っていない社長の席を見つめた。
ボトン「出勤もしないし携帯も切ってるし…。どこ行ったの?オッパ」
続いてダビデが入ってくる。
ボトン「連絡つかないんです。私、オッパの家に行ってみなきゃ」
ダビデ「寒いですよ。僕が送ります」
ボトン「今日は仕事が多いでしょう?すぐ戻ってきますから」
+-+-+-+
「オッパ?いますか?」
マテのマンションに入り、呼びかけてみても、彼の気配はなかった。
ボトン「どこ行っちゃったの…?」
ボトンの心配が募った。
ちょうどそこへダビデから電話が入る。
ダビデ(電話)「ボトンさん、社長は連絡つきました?」
ボトン(電話)「いえ。家にもいないわ」
ダビデ「ボトンさん、食事は?何か食べました?」
ボトン「えぇ、まぁ。食べましたよ。チーム長も食事に…」
話しながら中央のテーブルまで歩いてきたボトンは、そこでハッとして話を止めた。
キソクとミスクの写真と、遺品の懐中時計が並んでいる。
ボトン「!」
ダビデ(電話)「ボトンさん?」
ボトン「後でまた電話しますね」
「オッパがどこにいるかわかった気がするんです」ボトンは電話を切り、急いでマンションを出た。
ダビデ「…。」
トヒが入ってきてダビデに声を掛けた。
トヒ「チーム長、食事なさらないんですか?何かデリバリー頼みましょうか」
ダビデ「いえ、お腹空いてないんです」
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マテは亡くなった母のところにいた。
マテ「何も説明してくれなかったんだな。俺の人生を揺さぶっておいて、何も説明がないなんて…。一つだけ訊かせてくれよ。俺、母さんの息子じゃないのか?それじゃ俺は誰なんだ?母さんは誰なんだよ?なぁ…」
「オッパ…」後ろでボトンの声がした。
ボトン「それ、どういう意味ですか?」
マテがゆっくりと振り返る。
マテ「ボトン。母さんがさ…母さんじゃないらしい」
ボトン「!」
マテ「そんな可笑しな話を聞いたんだ。母さんが母さんじゃないなら…俺は誰なんだ?俺たち何者なんだよ」
マテの目から涙が零れ落ち、マテは彼女から目をそらした。
マテ「こんな馬鹿げたことってあるか?」
ボトン「オッパ、それどういう…?」
マテ「ナ・ホンラン副会長が俺を産んでくれたらしい」
ボトン「!」
マテ「俺の母親が…ナ・ホンランだって」
+-+-+-+
定食屋にやってくると、ボトンはマテの椀に匙をさした。
ボトン「食べましょ、オッパ。食べてから泣こうよ、私たち。ね?」
マテ「…。」
ボトン「こんなときほど気をしっかり持たなきゃ」
マテ「みんなフィクションみたいだ…」
ボトン「…。」
マテ「あるだろ、そういうの。何の映画だったか、仕事もして恋愛もして家族も作って…。主人公はすごく一生懸命生きてたのに、後になって気づいてみたら、全部フィクションだったんだ。みんながそれを観て、泣いて笑って…。あまりに残酷な設定だと思ったけど、今の俺はそんな感じだ」
ボトン「…。」
マテ「俺の人生の中で…本当のことって何だろうな」
ボトン「おばさんの息子、トッコ・マテ。それは本当じゃないですか」
マテ「…。」
ボトン「おばさんが一番オッパのこと愛して、大事にしてくれて…。それは本物よ。私が証人」
マテ「済まなかったって…そういうべきだよな。俺を捨てた人なら、”済まなかった、知らなかった、立派に育った”って…掛けられる言葉はいくらでもあるのに」
マテはホンランの言葉を思い出し、溜息をついた。
マテ「遠くに去れって」
ボトン「!」
マテ「目の前に現れるな、そうしなければ地獄の人生になる…自分がそうさせるって」
マテの絶望に、ボトンの目がみるみるうちに涙でいっぱいになり、零れ落ちた。
ボトン「慰めなきゃいけないのに、何も言えないよ。オッパにどうしてそんなこと…」
自分のために涙を流すボトンを、マテは静かに見つめる。
何も言えなくても、目の前で泣いてくれる彼女の存在自体が彼の心に染み入った。
マテ「俺にとって変わらないものは…お前だけだな」
+-+-+-+
MG本社のムンスの元をユラが訪れていた。
ユラ「良かったわ」
ムンス「随分心配したろう?」
ユラ「ここからがスタートよ、あなた」
ムンス「…。」
ユラ「お義母様はどんな手を使ってもあなたを押しのけようとするわ」
ムンスが頷いた。
ムンス「僕だってどんな手を使っても持ち堪えてみせる」
「心配するな」ムンスは力強い視線でユラを見つめた。
ユラ「あなたを守ってくれたチェ・ジュナ、彼を招き入れて」
ムンス「…。」
ユラ「ボトン会社に置いておくことはないわ。連れて来て、勢力を広げないと」
ムンスの視線が和らぐ。
ムンス「この戦争にあいつまで巻き込みたくないんだ」
ユラはフッと息をついた。
ユラ「お義母様、息子がいるのよ」
ムンス「?!」
ユラ「トッコ・マテ。あの人がお義母様の息子よ」
ムンス「!!!…何だって?」
#あちらこちらで大混乱中^^;;;(もう笑うしかない
ユラ「息子が見つかったんだから、自分側に引き入れるはずよ。そうなればあなたの座はさらに危うくなるわ」
ムンス「…。」
ユラ「言ってる意味、分かる?チェ・ジュナ、必ず先に連れて来なければいけないわ」
ムンス「…。」
+-+-+-+
ダビデは巨大マテを撤去した壁に巨大ボトンを飾り、大満足で眺めた。
ダビデ「はぁ、超カワイイな」
そこへ電話が鳴る。
ダビデ(電話)「もしもし?」
+-+-+-+
落ち着いたバーのカウンターに並ぶと、ムンスはダビデと自分のグラスをウィスキーで満たした。
注ぎ終わると、ムンスは乾杯しようとグラスをあげる。
ダビデ「あの…車で来たので」
ムンス「…あぁ、そうですか」
#ここで「先に言えよ」と言えない微妙な関係と、ムンスの遠慮がちな性格が何とも言えない…。
ムンス「次に会ったら話してもいいかって、そう訊きましたよね」
ダビデ「気楽にどうぞ」
ムンス「事がかなり複雑にこじれていると…全部聞きました。こじれたものは解かなければ。僕といっしょに解こう」
ダビデ「ハッキリ申し上げます。僕はMGはグループに関わるつもりは全くありません」
ムンス「…。」
ダビデ「ひょっとして僕がこの先脅威になると、そんなことを心配なさっているならご安心ください。僕はそんな野望なんてない男です」
ダビデの言葉をひと通り聞き終え、ムンスはまっすぐに顔を上げた。
ムンス「父さんを守ろう」
ダビデ「?」
ムンスはウィスキーを口に運び、一呼吸置く。
ムンス「僕は全くふがいない息子だ。幼い頃からね。ただ早く明日にならないかと…明日が来れば、また明日にならないかって…。そうやって時間をやり過ごすだけの人生だった」
ダビデ「…。」
ムンス「そんな僕を見守りながら、父さんは心底じれったい思いをなさったに違いない」
ダビデ「…。」
ムンス「僕のせいで具合を悪くなさったんじゃないかと…自分を責めるよ」
ダビデ「僕には…父性ってものがよく分かりません。今更知りたくもないし」
ムンス「…。」
ダビデ「僕がお手伝いする理由もないようです。それから、僕の持ち株が必要ならいつでも整理します。MGの株が僕を幸せにしたことは、たったの一度もなかったから」
ムンス「その持ち株で愛する女性を守ったじゃないか」
ダビデ「…。」
ムンス「ボトン会社にいるべきじゃない、ジュナ。今こそMGの相続者として権威を伸ばす時だ」
「その力がお前の愛も守ってくれるはず」ムンスはまっすぐに訴える。
ダビデ「それで?守ったんですか?」
ムンス「…。」
ダビデ「父さんの息子だというその後光で、愛する女性を守れなかったじゃないですか」
ムンス「…。」
ダビデ「それに、僕の愛する女性はそんな権威みたいなものに全く関心がありません」
ムンス「…。」
ダビデ「僕はチェ・ダビデとしてボトン会社でチーム長をしている今が幸せなんです。彼女がいるから…それだけが理由じゃありません」
ムンス「…。」
ダビデ「まだ成長途中だけど、MGよりも遥かに健全な会社です。少なくともMGのように個人的な感情で売り場から一方的に追い出すような、そんな不道徳な会社ではないんです」
「それは…何のことだ?」ムンスは何一つ知らずにいた。
ダビデ「MGはそういう会社です。だから僕はMGが嫌いです」
ムンス「…。」
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
ホンランとマテの会話が残酷すぎる-_-#
返信削除マテが可哀想すぎる(T_T)
いきなり一方的にあんな条件を出すなんて本当に親って疑うよ(-_-#) ピクッ
ボトンがいてくれて良かった(^-^)
傷心のマテを癒やしてくれるでしょう(#^_^#)たぶん2人はハッピーエンドですよねo(^-^)oワクワク
何度も見直しても、マテの涙それを慰めるポドンの涙そして「俺にとって変わらないのは…お前だけたな」グッときて泣けます(>人<;)
返信削除ホンランの出す条件を聞くマテの姿が…。
返信削除今回はマテの無言の演技にただ涙しました。
ユジナさんの文章になると、余計に切ないです(T_T)
あー
返信削除涙が止まらない
こんなにヒドイ話ってありますか?
ドラマで良かった
それにしても、ユジナさん文章力ありますね
まるで、ドラマをもう一度観たような感じです
残り2話ですが、よろしくおねがいします
楽しみにしています