一度目の完売で手応えを得て、二度目の放送に臨んだマテたち。
しかし、期待に反してお掃除靴下への注文はなかなか伸びません。
売上がどういう結果になろうと、目標の4億のうち40%の取り分を払えというのがナ・ホンランの条件。
もしこのまま注文が伸びなければ、マテたちは一瞬にして負債を抱えることになるでしょう。
マテはこの窮地を脱することが出来るのでしょうか。
さて、原作の話は嫌がられるかな?とこれまであまり書かずにいたんですが、前回思いの外好評だったので、これからときどき入れていきますね。
ちなみに、原作ではこの二度目の放送に「4億の40%保証」ではなく「チェ代理のクビ」が掛かっていました^^
+-+-+-+
「どうして注文が入らないのかしら」
この前はどうやって完売まで?」
困ったMCたちが小声で囁き合う。
ディレクターの指示により、もう一度窓ふきの実演が始まった。
MC1「いつもやりづらくて、汚れを落とすのが難しかったのがまさにこの窓枠じゃありませんか?」
MC2「そうなんですよ!窓枠。掃除機でも吸いづらいし、埃もさっと落ちて出て行くわけでもないし。でも、これからはその心配なく…」
マテは心の中で焦りがますます募った。
マテ(心の声)「ちっとも良くならない。放送開始からもう20分も経ってるのに。このままなら…」
プロデューサーの声が聞こえてくる。
P「今、他のテレビ通販番組は何やってる?」
D「特にたいしたものはやってませんよ」
P「そうか?」
ボトンの不安な表情を見て、ダビデが声を掛ける。
ダビデ「もう少しだけ待ってみましょうよ」
「この前は数が少なかったから完売したのか?」ダビデも注文の伸びない理由を推測しつつ、放送の進行を見守った。
ボトン「どうしよう、オッパ。このまま売れなかったら、工場に払うお金もないわ。そしたらオッパ、借金抱えちゃう!」
ボトンは頭を抱えた。
マテはかろうじてボトンの肩に手を置くと、彼女のそばを離れた。
+-+-+-+
放送を見守っていたユラは電話を手にとった。
ユラ(電話)「マテ?」
画面を見つめたまま、ユラは話す。
ユラ「最悪ね。MCたちもあからさまに失望した顔だわ。人脈の女王、いつ使うつもり?」
マテは足早にスタジオの外へ出てきた。
マテ(電話)「あと30分なんです。いくら人脈の女王でもどうしようもないでしょう」
ユラ「ひどいものね。まだ人脈について何も学んでないわ。今こそ人脈の力を確かめるときよ」
マテ「30分も残ってないのに、あと3億以上売らなきゃいけないんです。10分で1億売らなきゃいけないのに、人脈の力でそんなこと可能なんですか?」
ユラ「当然よ。キム・インジュンがどうするのか、その目で見たくない?」
マテ「…。」
+-+-+-+
「これはイ先生の分…」インジュンは作り終えた大量のキムチを分けていた。
そこへ電話の着信音。
彼女は耳につけていた小型の着信機のボタンを手の甲で押した。
インジュン(電話)「はい、キム・インジュンです」
マテ(電話)「僕です、トッコ・マテ」
低く緊張したマテの声が響く。
インジュン「あぁ、マテさん。どうしたの?あ、そうだわ!今日放送なんですよね!」
マテ「…。」
インジュン「どうですか?売れてます?」
マテ「…助けてください」
インジュン「…。」
マテ「うまく売れなくて。時間はあと少ししか残っていません。今こうして話している間にも時間は過ぎていくんです。本当に苦しい状況で」
「マテさん」インジュンは落ち着いた様子で手にはめていたビニール手袋を外した。
インジュン「マテさんの知らない”人脈の第三の原則”を教えてあげるわ」
マテ「?」
インジュン「人脈を利用して商売をするべからず」
マテ「…。」
マテは絶望して目を閉じる。
そこへ、マテの頭にエレキ仙女の言葉が蘇った。
人の心をマテほどうまく操れる人はいないと…。
「それなら、俺の本能を信じるしかない」
マテは口を開く。
マテ「僕が他とは別の人脈になるとしたら?」
インジュン「別の人脈?それ、どういう意味?」
マテ「…。」
インジュン「人脈は人そのものよ。人と人はネットワークで緻密につながっているわ。全てがつながっているから、それを積極的に活用しようと血眼になるの」
マテ「…。」
そこへ、手にお掃除靴下をはめ、自ら実演をするとスタッフに訴えているボトンの姿が目に入った。
断られて、「どうかお願いします!」と必死で食い下がるボトン。
「泣いてる…。バカなキム・ボトンが…俺のせいで泣いてるんだ」
マテもここで引き下がるわけにはいかなかった。
マテ(電話)「いいえ。この世には隠しておきたい…特別な人脈もあります」
インジュン(電話)「隠しておきたい人脈?それ、どういう意味?」
マテ「周りのどんな人脈ともつなげたくはない…特別な人脈。隠しておきたい人脈。…恋人になって差し上げます」
インジュン「!」
マテは注意深くインジュンの反応を待つ。
マテ「その代わり、残りの時間で3億売らなければなりません。可能ですか?」
インジュン「5分だけ頂戴」
マテ「!」
+-+-+-+
スタジオのボトンの元へマテが戻ってくる。
「39,000ウォンの価格で6ヶ月使えます」MCは同じ内容を繰り返していた。
ボトン「オッパ…」
マテ「大丈夫だ。うまく行くから」
焦るボトンの表情に、思わず独断で「顧客紹介で景品付き」の字幕を入れるようディレクターに頼むダビデ。
景品は業者側で持つ物だと驚くディレクターたちを、「僕が責任を取りますから」とダビデは説得する。
MC「お客様、お急ぎください。放送時間はあと10分を切っています」
そのとき、ボトンがモニターを指さし、声を上げた。
ボトン「注文増えてますよ!!!」
マテ「!」
モニターの注文数がものすごい勢いで増えていた。
右に表示されているゲージがみるみるうちに伸びていく。
MC「お客様、現在の状況をご案内します。お問い合わせ通話をお待ちになっているお客様が一杯の状況です。5分から10分程度お待たせするかもしれませんが、大変申し訳ありません。自動注文電話にお掛けいただければと思います」
注文済みの数が6838。
注文通話の待機分が2186。
用意した数は10000。放送時間残り9分弱にして、完売は間近だった。
P「待機が2186?!こんな数字初めて見たぞ!」
プロデューサーが驚きの声を上げる。
マテ(心の声)「どうしてこんなこと出来るんだ?」
マテの心の中と同じことをボトンも口にする。
ボトン「オッパ、こんなこと…あり得るんですか?」
ダビデ「ボトンさん、このスピードなら放送終了後の注文も入れれば全部売れそうですよ」
ボトン「はっ!」
喜ぶボトンの顔に、ダビデの顔もほころぶ。
マテは打ち砕かれたように溜息をついた。
マテ「人脈。まさにこれが人脈の力…」
+-+-+-+
静かな撮影スタジオ。
赤×ゴールドの靴に、シルバーの星が入ったタイツ。
真っ白なファーに身を包み、ショートヘアを赤く染めた女が、ソファーでスマートフォンの画面を覗いていた。
マネージャーが近づいてきて、声を荒らげた。
マネージャー「何よこれ!お掃除靴下だなんて!」
女「…。」
彼女が見ている携帯画面には、SNSの画面が表示されている。
自分自身の写真の下にはメッセージが添えてあった。
『お掃除靴下っていうのを使ってみたら便利で面白いね~^^
今テレビ通販でまた買いました~』
下に、それを見た人たちからのコメントが続いている。
『お掃除靴下~ それ何?私も買わなきゃ』
『お~!画期的~。それ何?』
『私も私も~ お掃除靴下』
『テレビ通販で観ました。私はもう注文したよ~』
『あなたが買ったなら自分も~!』
マネージャー「ちょっと書いただけでSNSじゃ大騒ぎになるのよ!こんな靴下がミョミにふさわしいアイテムだと思ってるの?」
ミョミと呼ばれたその女は、スマートフォンの画面を見つめたまま口を開く。
ミョミ「久しぶりにジャージャー麺食べてもいい?」
マネージャー「今回は誤魔化したって無理よ!見なさいよ!リアルタイム検索1位よ、1位!」
マネージャーがつきつけたスマートフォンの画面には、『1位 ミョミ お掃除靴下』とあった。
マネージャー「”ミョミ お掃除靴下” こんなワード問題外よ!私に相談もなしにこんなことするなんて!」
ミョミ「キム室長こそ私に相談なしにこんなことしていいの?」
マネ「私が何よ」
彼女はマネージャーのお尻をポンと叩いた。
ミョミ「勝手にこんな短いスカート履いて」
マネ「…。」
呆れ顔のマネージャーに微笑み、ミョミは携帯画面に戻った。
+-+-+-+
オフィスに到着すると、インジュンはメールを打ち始めた。
相手はミョミだ。
『お疲れ様』
素っ気ない一文を送信すると、彼女は携帯を置いた。
「綺麗な人には綺麗な名刺入れがお似合いですから」自分に笑いかけるマテの顔が思い出され、インジュンはひそかに微笑んだ。
マテからもらった名刺入れを箱から取り出し、見つめる。
彼女は使い古したオレンジ色の名刺入れから名刺を全て取り出すと、マテから贈られたものに移し替えた。
+-+-+-+
「今日も全て売り切れとなりました」
MCが完売を伝えると、ホンランはテレビの電源をOFFにした。
秘書を呼び入れると、「一番大きな花カゴを準備して」と、住所を書いて渡す。
ホンラン「このカフェに送ってくださいな。私の名前で」
秘書「ご用意いたします」
+-+-+-+
ユラは届いた花を横目に、メッセージカードを開いていた。
携帯画面を眺めると、満足気に微笑む。
ユラ「ミョミを動かすとは…。人脈の女王キム・インジュンも、うちのマテに揺らいだようね。トッコ・マテ…。ふふっ、たいしたものだわ」
携帯画面に表示されているニュースサイトをスライドさせると、そこに現れた見出しにユラは驚いた。
『MGグループパク・キソク会長が手術のためにアメリカへ出国』
ユラ「!…絶対に無事お戻りになってください、会長。今はまだその座を守っていらっしゃらなければ」
+-+-+-+
「あらま♪」ボトンはミョミの投稿を見て声を上げた。
ボトン「これだわ!」
#ただの偽ステマかと思ったら、ちゃんとお掃除靴下で鏡を拭いてる。
ダビデ邸の庭。
彼女の隣で、ダビデも一緒に携帯画面を覗く。
ボトン「見る目があるね、ミョミ!」
ダビデ「トッコ社長はミョミと知り合いなのかな?」
後ろで覗き込んだトクセンが「そんなぁ」と割り込んだ。
トクセン「マテ兄がいくらやり手だからって、ワールドスターと知り合いにはなれないだろ」
そこへ門扉が開き、マテが入ってきた。
トクセン「あぁ、兄貴!」
皆が笑顔でマテを迎え入れる。
トクセン「酒飲んでるより楽しいな、兄貴、完売したんだって?」
マテ「^^」
ダビデ「また完売ですね。おめでとうございます」
マテ「お陰さまで」
ダビデ「…。」
トクセン「飯でも食おうよ。めでたいことは豪華に祝わなきゃな」
ボトン「トクセンオッパは何もしてないと思うけど?」
トクセン「…。」
マテ「そうだな。一度ちゃんと飯を食おう」
ボトン「!」
トクセン「お~、兄貴!今度は牛肉だぞ」
マテ「^^」
そこへマテの携帯からメールの着信音が響いた。
キム・インジュンからだ。
『ロイヤルホテル ワインバーで7時』
天を仰ぎ、小さく溜め息をつくと、マテは言いづらそうに切り出した。
マテ「あのさ、ちょっと出かけてくるから、先に食べてろ」
マテは店のショップカードをボトンに渡した。
ボトン「オッパも来ますよね?!」
マテ「…。」
ボトン「ん?」
マテは何も答えず目をそらすと、足早にダビデ邸を後にした。
+-+-+-+
マテは難しい顔でインジュンの前に座っていた。
インジュンがマテにグラスを勧める。
インジュン「一杯やりましょう」
マテは彼女とグラスを合わせると、目も合わせずに再び椅子に体を沈めた。
インジュン「”水入らず”でワインを飲むのは本当に久しぶりだわ」
マテ「あぁ!ご主人と…」
インジュン「!」
マテ「…こうやって”水入らず”な時間をよく持っていらっしゃったんですね^^;」
インジュン「海外支社に移って3年になるんです」
マテ「…。」
インジュン「お陰で休日やクリスマスには、もう3年ほどひとりぼっち」
マテ「…。」
インジュンは静かにグラスを置き、グラスの縁を指でなぞった
インジュン「今年のクリスマスは期待できるわね。マテさんのお陰で」
マテ「…。」
マテは怯えたかのように息を震わせた。
+-+-+-+
ボトンはオッパが現れない寂しさに、繰り返し酒をあおった。
彼女を見守るダビデには掛ける言葉がない。
「見ろよ、この霜降り」 無邪気に肉を食べるトクセンを、ボトンは睨みつけた。
ボトン「プリプリの霜降りが何だってのさ…」
トクセン「?」
ボトン「オッパは来ないし、酒は苦い…」
ボトンが再び手にとった酒瓶を、ダビデが押さえた。
ダビデ「飲み過ぎですよ。肉を食べながらにしましょう」
ボトンはその手を静かに払いのける。
ボトン「私ね、サムギョプサルの方がずーっと好きなんです。あのときオッパと食べたサムギョプサル。はぁ…」
ダビデ「…。」
ボトン「カクテキはトクセンオッパがた~くさん召し上がれ」
トクセン「あ、そうだ!カクテキね。一緒に食べたら美味しいんだ」
ボトンは空になった自分のグラスに酒を注ぎ足す。
ダビデ「帰りましょうか?疲れたでしょう?」
ボトン「(飲み干す)オッパの奴…。ただじゃおかない」
ボトンはダビデを残し、店を出て行った。
+-+-+-+
「私たち、あとはもっとリラックスして飲みましょうよ」
インジュンがマテの手の甲を指先でなぞった。
マテ「!」
彼女が部屋のカードキーを差し出すと、マテは目を丸く見開く。
インジュ「部屋で」
マテ「!!!」
インジュンの積極的な誘惑に硬直するマテ。
そこへボトンからの着信が入り、マテはグッドタイミング!とばかりに電話を取った。
マテ(電話)「あぁ、俺だ!」
ボトンはふらふらと店から出ながら声を荒らげた。
ボトン(電話)「オッパ、あたしゃオッパのせいでたまんないよ!オッパは自分がイケメンだからって許されるわけ?牛肉が破裂して死んじゃうよ!!!」
マテ「(わざとらしく)何だって!おい、破裂しちゃ大変だろ!どんなに危険か分かってんのか?」
インジュン「…。」
マテ「分かった。今すぐ行くから」
目の前で話すマテを見つめるインジュンの目が素に変わる。
電話を切ると、マテはすくっと立ち上がった。
マテ「すみません。うちの職員、盲腸が破裂したようです」
インジュン「…。」
マテ「事情があってうちの倉庫に寝泊まりしてたんですが…。本当にすみません。残りは次回飲むことにしましょう」
インジュン「…。」
ペコリと頭を下げると、マテは彼女の前を逃げ出した。
+-+-+-+
「こいつ、また自分の言いたいことだけ言って切っちゃったよ!!!」
切れた電話に呆れて笑い、怒鳴るボトン。
ダビデ「言葉の通じないオッパは明日会うことにして、家に帰りましょう、ボトンさん」
ボトン「悪いやつ…」
+-+-+-+
酔いつぶれて寝てしまったボトンの寝顔を、マテが見つめていた。
無防備な彼女の寝姿に、思わず笑いが漏れる。
マテ「こんなに飲んで…キム・ボトン。お前のお陰で助かった」
部屋を見渡した彼の目に、壁に飾られた巨大マテ像が飛び込んでくる。
マテ「小さかったかな?」
そのとき、「うるさい!」と叫んだボトンの声にマテは縮み上がった。
ボトン「(寝言)おい、マテ。しっかりしろよ。”綺麗な者は久しからず”ってね。顔が綺麗だって?ふふっ、今のうちだっつーの」
マテ「…。”驕れる者は久しからず”だろ」
+-+-+-+
外へ出てくると、マテは庭にいるダビデに近づいた。
マテ「あんなに酔ってるのに、自分で歩いて帰って来たんですか?」
ダビデ「おぶってきました」
マテ「(カッとして)タクシーを呼べばよかったでしょう。なぜおぶったりなんか!」
ダビデ「トクセンさんがおぶって来たんですが」
マテ「…。」
ダビデ「…。」
マテ「あんなに酔うまでなぜ放っておいたんです?」
ダビデ「(溜め息)なぜあんなに酔わせるんでしょう」
マテ「…。」
背を向けようとしたマテをダビデが呼び止めた。
ダビデ「そうだ。ミョミと知り合いのようですね」
マテ「!」
ダビデ「お掃除靴下、ミョミがいなければダメになるところでした。まぁ、売れてホッとしたけど…。すごく気になるな。綺麗なオッパの人脈」
マテはニヤリと笑って振り返る。
マテ「チェ代理は実に謙虚だな」
ダビデ「…。」
マテ「取るに足らない俺の人脈ではなく、チェ代理とボトンの人並外れた発想で作った製品だから完売したんじゃ?」
「では」とマテはダビデ邸を後にした。
+-+-+-+
赤信号で車を止めると、マテは向こうのビルに設置されているスクリーン広告に目を留めた。
ミョミだ。
マテ「…。」
+-+-+-+
「あぁ、ボト…!」
庭に出てきたボトンを振り返ったダビデは驚いて目を見開いた。
「美味しそう~」彼女はテーブルに用意された朝食を見つけると、早速食べ始める。
顔に素敵な落書きがされているのにも気づかずに。
ダビデ「……………。」
ボトン「はぁ、生き返った。チェ代理も早く食べて」
ダビデはとりあえず彼女の向かいに腰を下ろす。
ダビデ「あの、ところで…」
ボトン「?」
ダビデ「えっとその…先に顔を洗わなきゃ」
ボトン「どうして?私、ヨダレ垂らしてる?」
ダビデ「いえいえ、そうじゃなくて、その…。ちょっと待って」
ダビデは笑いをこらえて携帯を構えると、写真におさめ、画面を彼女に向けた。
#即永久保存フォルダ行きに違いない。
ダビデ「これ」
ボトン「きゃっ!!!」
ダビデ「あははははっ」
ボトン「!!!」
ダビデ「オッパのイタズラも酷いなぁ。可愛いボトンさんの顔が何て事だ!あははははっ」
ボトンも嬉しそうに頬づえをつく。
ボトン「マテオッパが来たんですか?」
ダビデ「僕がキツく言ってといてやりますよ。ボトンさんの部屋からなかなか出てこなくて変だと思ったんだ!」
ボトン「何で叱るんですかぁ~。これ描くのに、私の顔をどれだけ見つめたのかなぁ~♥ふふふっ」
ダビデ「…。」
ボトン「私、顔洗わない。今日は洗わないから!」
ダビデ「…。」
ボトン「(ダビデの食事を見て)それどんな味かな?一口だけ貰っちゃダメですか?」
ボトンが手を伸ばすと、ダビデは皿を引っ込めて声を上げた。
ダビデ「もう!顔洗わないならあげません!」
ボトンが身を乗り出す。
ボトン「そんなぁ~。一口だけくださいよ」
ダビデ「(道路のようにつながって車が走っているボトンの眉毛を指し)車が走ってるじゃないですか!顔洗ってください」
ボトン「一口だけ~」
+-+-+-+
カフェでユラが電話を取った。
男の声が聞こえる。
「ナ・ホンランがひた隠しにしているNYでの三年、突き止めました」
+-+-+-+
ホンランはあるサロンで主婦会のニッティングの集まりに参加していた。
主婦1「年末の慈善行事はどこに行くのかしら?」
主婦2「孤児院をあたってるようだけど」
主婦1「孤児院は前にも行ったでしょう?」
主婦2「ところで、(編んでいるものを指し)この帽子でアフリカの子どもたちを助けられるって本当なんですか?」
主婦1「夜は冷えて子どもたちが凍死することも多いんですって」
主婦は向かいに座っているホンランの手元に目を留める。
主婦1「あら、副会長さんは編み物がお上手ね」
ホンラン「(微笑)」
主婦1「人が見れば、何人も子どもを育てた方だと思うでしょうに」
ホンラン「…。」
主婦2「冗談が過ぎるわ。副会長さんはお子さんを産んだこともないのに、どうしてそんなこと言うmんです?」
ホンランは穏やかに微笑んでみせた。
ホンラン「孫の靴下を編んではみたんですけど、帽子のほうが簡単ですわね」
+-+-+-+
ユラの電話相手の報告が続く。
男(電話)「ナ・ホンラン副会長はNYで子どもを産んだようです」
ユラ「!」
ユラに衝撃が走った。
ユラ「何てことなの!あなたも母親だったの?傭兵を自分自身で育てていたの?スルリの父親を遠ざけようとする意図はこれだったのね。お腹を痛めて産んだ血筋をMGトップの座に座らせるって…?それなら、子どもはどこに隠しているの?」
+-+-+-+
ダビデは会社でぼんやり物思いに耽っていた。
同僚「どうした?昼飯行かないのか?」
ダビデ「はい…」
同僚「具合でも悪いのか?」
ダビデ「いいえ…」
同僚「お前、先が短いんだろ?」
ダビデ「禁断症状ですよ」
同僚「何だよそれ(笑)」
同僚が立ち去ると、ダビデはぼそっと呟いた。
ダビデ「ボトンさんの禁断症状…」
+-+-+-+
顔を洗ってマテのマンションにやって来たボトンは、書類を差し出した。
ボトン「MGから送ってきた売上記録」
マテ「?」
ボトン「おおまかに計算したんですけど、四足歩行社に代金を支払ったら1億9千ウォンほど残りますよ」
マテが資料を受け取ると、ボトンはそばに腰を下ろした。
ボトン「私たち、次はどうします?オッパ」
マテ「会社をやるって言ったろ」
ボトン「そこが心配なんですよ。チェ代理はMGの職員だし、トクセンオッパは私が見たところ人材じゃなくて…ただの変人」
マテ「(資料に目を通す)」
ボトン「オッパは社長なんて名前だけだし」
マテ「おいおい、おい!」
ボトン「ふふん♪それでね、チェ代理をスカウトしたらどうですか?」
マテ「(冷笑)スカウトなんて笑わせるな」
ボトン「?」
マテ「お前、スカウトって何か分かってんのか?より好条件でお招きするってことだ。それにずっとその条件を保証してやらなきゃならない」
ボトン「じゃ、どうするんですか?」
マテ「自らの足で来るように仕向けなきゃな」
ボトン「そんなわけないよ。私でも来ないだろうな」
「帰りますね」ボトンは立ち上がった。
考えを巡らせたマテがボトンを呼び止める。
ボトン「?」
マテ「事務所を探してくれ」
ボトン「事務所?」
マテ「…。」
ボトン「ふふん♪どこを探しましょうか?」
マテがニヤリと口角を上げる。
+-+-+-+
不動産会社の女性が大きな地図を指した。
女性職員「瑞草区、江南区、星坡区。全部ご案内するんですか?」
ボトン「めちゃくちゃ…広いですね」
+-+-+-+
夜。ダビデ邸の庭には、まだ禁断症状の解けないダビデが物思いに耽っていた。
そこへ家から出てきたトクセンは不思議そうにダビデを覗き込み、肩を叩く。
ダビデはゆっくりと振り返った。
ダビデ「何ですか…」
トクセン「凍ってなかったか。氷になったかと思ったよ」
ダビデ「…。」
+-+-+-+
ヘアバンドで髪を上げると、マテはケースに並べたマスクシートの袋を指でたどった。
マテ「そろそろキム・ボトンがクタクタのゾンビみたいな顔で帰る頃だ」
+-+-+-+
その頃、「あぁー」と唸りながらボトンが門を入ってくると、ダビデが顔を輝かせて立ち上がった。
ダビデ「ボトンさん!どうしてこんなに遅かったんですか?」
ボトン「はぁ」
ダビデ「どうしたんです?具合でも悪いんですか?」
ボトン「いえいえ…。(思い直し)事務所探しにあちこち歩きまわって、足が痛くてたまらないんですぅ」
ダビデ「あ、足?足か」
ダビデが湯を溜めた洗面器に足を浸すと、ボトンは気持ちよさそうに溜息をついた。
ダビデ「そんなに疲れるなんて、どこを探しまわってたんです?」
ボトン「えーっと…。瑞草区、江南区、星坡区」
ダビデ「ええっ?!」
ボトン「(ぽかーん)」
ダビデ「ソウルの4分の1を歩きまわってたって言うんですか?!」
ボトン「(足元をチラリ)足に垢がたまってるんじゃないかな…」
ダビデ「今、垢なんて問題じゃないでしょう!!!」
ボトン「!」
思わず大声を上げてしまい、ボトンが驚いて硬直すると、ダビデはハッとして表情を和らげた。
ダビデ「つまり僕が言いたいのはね、ボトンさんが大変すぎるじゃないですか」
ボトン「ふふっ、大丈夫ですよ。人手が足りないんだから、私が走り回らなきゃ」
ダビデ「悪いオッパは何やってるんですか」
+-+-+-+
悪いオッパはお肌の真っ最中。
マテ「夕飯も食べずに帰ればインパクト絶大なんだけどな」
+-+-+-+
「また”悪いオッパ”だなんて!」ボトンが顔をしかめた。
ダビデ「悪いオッパだよ!今度こそ!!!」
ボトン「!」
驚いて黙り込んだボトンのお腹が、最高のタイミングでグルグルと鳴った。
ボトン「あぁ…」
ダビデ「何だよ、ご飯も食べてないんですか?」
ボトン「全然時間がなかったんですよぉ」
ダビデ「(溜め息)」
ボトン「はぁ、お腹すいた」
早速…。
ダビデが用意した食事を黙々と食べるボトンを、ダビデは心配そうに見つめていた。
ダビデ「食べててください。ちょっと電話してきます。会社のことで」
ボトンは食事から顔も上げずに「うん」とかろうじて返事をする。
+-+-+-+
シートパックを綺麗に貼り付けると、マテの携帯がなりだした。
マテ「よし!このタイミングで電話が来なきゃな」
パック液でぬるぬるになった手で何とか電話を手に取ると、マテは応答した。
マテ(電話)「もしもし~」
ダビデ(電話)「もしもし!僕です、チェ代理。ちょっと会いましょう」
マテ「急用じゃなかったら明日にしましょうよ~」
ダビデ「何だって?!何言ってんだか…顔にパックでもしてるんですか?何でそんな声なんです?」
マテ「はぁ、霊能者みたいな奴」
ダビデ「ボトン会社、新入社員の採用はしないんですか?」
マテ「お好きにどうぞ♪」
電話が切れると、マテは愉しげに笑った。
#ちゃんとダビデのボタンを正確に押して、心を操ったわけですね^^
+-+-+-+
引越し業者に指示を出しながら、ボトンとダビデがテキパキと事務所に荷物を運び入れる。
大きな箱をテーブルに運び、疲れて大きく息をつくと、ボトンは入口を振り返った。
『ボトン(普通)会社』
そのイキイキとした表情に、彼女を見つめるダビデにも笑みが溢れる。
「ボトンさん」隣り合った席につくと、ダビデは懐に隠したものを取り出した。
「ジャーン♪」ぬいぐるみが二つ並んでいる。
ボトン「ぬいぐるみだ^^」
ダビデ「テレビ通販のサンプルだったんだけど、ボトンさんが喜ぶと思って持って来たんだ」
ボトン「あはっ、可愛い~」
ダビデ「あぁ、うさぎのぬいぐるみ、ボトンさんみたいで可愛いなぁ~」
ボトン「そうかな?」
ボトンはもうひとつのぬいぐるみを手にとった。
黒いサングラスに黒い服のぬいぐるみだ。
ボトン「じゃ、この子猫の方は…」
(ダビデオッパみたいだよね?)とダビデはボトンの顔を期待一杯で覗きこむ。
ボトン「マテオッパみたい♪」
ダビデ「(ガクッ)」
ボトン「あはっ、可愛い~」
ボトンはさっそくマテ人形を目の前に座らせた。
ダビデ「(うさぎの方を差し出し)これがボトンさんだって。こっちを置いたほうがいいですよ」
ボトン「いえいえ。そっちはチェ代理が置いてください」
ボトンが目を離すと、ダビデは人形を入れ替える。
+-+-+-+
ここで一旦区切ります。
yujinaさん
返信削除こんなに早く7話にとりかかってくださって、ありがとうございます。
寝不足、大丈夫ですか?
ラブレインでもお世話になりました。
あとから字幕付きの映像を見ても、
一番最初に訳を読んだ、yujinaさんのセリフで見ている自分がいました(*^▽^*)
そのくらい、しっくりくる日本語なんです。
今回も、5話で「미치죠」を「たまらなくね」と訳されていて、
ゾクゾクしちゃいました♥
お体に無理のないよう、最終回までよろしくお願いします。
yujinaさん、すみません!!!!!
返信削除「たまらないほどね」を打ち間違えました!!!
おはようございます(^○^)
返信削除今日は先にこちらにお邪魔しました(*^_^*)
今から字幕なしの7話を見てきますo(^-^)o
チャンベウに私の顔にも落書きしてほしいな~(#^_^#)
yujinaさんいつもありがとうございます!
返信削除昨日ZEPPいってきました。
周りのうなぎたちとマテのドラマの話で大盛り上がり~
そしてみんながyujinaさんに感謝していましたよ~うなぎの救世主!!
ドラマは内容がわかってこそ面白いし続きが気になってくるものです!
そして原作の内容を教えて頂けるのもとても楽しいです。
今回の中でインジュンの誘いを断ってしまいましたがほんとに残念
と 思っているのは私だけでしょうか?
これからもどうぞよろしくお願いします。
体調崩さないよう無理はされませんように
おはようございます♪
返信削除今日も楽しかったです!!
ボトンの素直で一途な愛がたまらなく可愛いです!!
ホンランの子供が気になります~!!
マテは人の心を操る方法を身につけていたんですね!!
ユジナさんの添えられた言葉がまた嬉しいです♪
また続きも楽しみにしています♪
今回はとっても読んでて楽しかったです♪
返信削除盲腸破裂って…(^▽^;)
ボトンの素直な反応も可愛い~
ますます目が離せない展開で、次回も楽しみにしています!
楽しい♪楽しい♪
返信削除7話ですねぇ~(*´∀`)
あれだけの落書きを喜ぶボトンちゃん♪
消したくない♪うふふ♪
幼稚園の頃の息子を思い出しましたw
顔にマジックでグリグリとおっきな丸を書いてて
それなぁにと聞いたら、、、
世界一でっかいホクロ!!
、、、(  ̄▽ ̄)
世界一でっかいねぇ~
息子、、、喜んで、洗っちゃダメだよ!消えちゃうから!って、、、
、、、(  ̄▽ ̄) リアルボトンちゃんww
25年も前の話しですが、、、